Interview by VHSMAG, Photo courtesy of Marcel Veldman, Special thanks: Element Japan
VHSMAG(以下V): 今年の夏にElementのプロに昇格したばかりだよね。どのような状況でそのニュースを知ったの?
フィル・ズァイスン(以下P): プロ昇格のニュースはチームマネージャーから事前に聞いていたからサプライズではなかったけど、それに合わせてWaterproofのパートを公開しようという話になった。シグネチャーモデルと同時期に公開して効果的なプロモーションになればいいと思ったんだ。
V: 全編雨のパートを制作するというアイデアはどこから来たの?
P: 初めて雨の中で滑ったのは数年前、ノルウェーのスケートパークだった。雨で濡れたパークでパワースライドをしながら遊んでいたときにこのアイデアを思いついたんだ。「全編雨のフルパートを撮りたい」ってね。最初の撮影ツアーが順調に進んだこともあって、それから撮影を重ねていった。ケガをして1年ほどスケートできない期間もあったけどね。
V: 雨の中でのスケートで一番大変だったことは?
P: 雨が降っている場所を見つけること。オレの出身地であるベルギーは雨が1年中降ることで知られるけど、それでも雨を見つけるのが大変だった。ずっと雨が降っている場所なんてないんだよ。24時間、何日もぶっ続けで雨が降る場所なんてこの地球上に存在しない。雨を探すのが一番大変だったね。
V: 屋根の下に水を撒いて滑るシーンもあったけど、それ以外は基本的に本物の雨だったの?
P: イントロでは人工の降雨装置を使った。YouTubeで作り方を調べて、みんなで作ったんだ。結構簡単だったよ。その他には2ヵ所ほど雨に見せかけたシーンがあるけど、ほぼすべてが本物の雨。雨が降ったように水を撒くのはそれなりに大変だからね。すべて雨に見せかけるのは不可能。ちなみにイントロは田舎に住んでいる友だちの自宅で撮った。泳ぐことのできるプールみたいなものを持っているから、それを使って撮影したんだ。本当に大変な撮影だった。
V: 雨の中でスケートをするということでスポットの見方も変わった?
P: 基本的にスケートスポットには行かなかった。ただスライドができそうな場所を探すようにしたんだ。行く先々で、雨で濡れたら滑りそうな場所を探していたね。
V: 路面はどうなの?
P: 実は大理石は滑らないんだ。ウッドデッキが一番滑るね。
V: ソフトウィールを使うとか何か特別なセットアップは?
P: 新品のデッキを使うようにした。新品だと雨水がデッキに滲みにくいからね。撮影ツアーにつきデッキ1本乗るという感じだった。だからあまりデッキを無駄使いしていない。セッションの後はしっかりとデッキを乾かして、ウィールはスピンさせて雨水を飛ばすだけで大丈夫だった。
V: では撮影するトリックはどのように決めたの?
P: まずはスポットありきだった。雨の中で滑りやすそうなスポットを見つけて、思いついたトリックをすべてトライするという感じだった。計画なんてあってないようなものだった。フリップイン、フリップアウトのようなアイデアもいくつかあったけど、できるだけそれは避けるようにした。オレはフリップインのタイプじゃないからね。だから、ただ瞬間瞬間に思いつくことを撮影していった。パワースライドのバリエーションも限られている。バックサイド、フロントサイド、ブラントやスイッチ、そしてフリップインくらいだ。だからスポットが重要になってくる。スポットとスライドをうまくマッチさせることを心がけた。
V: パートの中でメイクできて一番うれしかったトリックは?
P: ロッテルダムで撮影した長いパワースライドのフェイキーアウトだね。あれを撮影したのは深夜3時だった。ウッドデッキもかなり長い。特に難しいトリックじゃないけど、納得がいく形でメイクするのにかなり時間がかかってしまった。
V: また雨の中でスケートしたいと思う?
P: 当分は勘弁してほしい(笑)。楽しかったけど、パートを撮る気はもうない。遊びで滑るならいいけどね。
V: というわけで、めでたくプロに昇格したわけだけど今後の予定は?
P: ただ同じようにスケートを続けるだけ。10段のステアでバックフリップのようなスタントをするのではなく、面白いアイデアを形にしていきたいね。
ベルギー・アントワープ出身。ハイスピードでソリッドなスケートスタイルに定評があり、Elementからシグネチャーモデルをリリースしたばかりのルーキープロ。最近はフィルマーとしても活動している。
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