ポディマハッタヤさん

 ポディマハッタヤさん。自分と同年代の30歳前後の人だと思わず反応する名前かもしれません。というのも、このポディマハッタヤさんは小学4年生の国語の教科書に出てきた実在のスリランカ人。『いっぽんの鉛筆のむこうに』というタイトルの文章に出てくるポディマハッタヤさんは鉱山で鉛を削り出す鉱夫なのですが、ワイルドな上裸姿とインパクト抜群の名前で当時の小学生の人気者。どうやら全国の小学校でバズったらしく、日本の小学生からポディマハッタヤさん宛に多くの手紙も寄せられたのだというから驚きです。『いっぽんの鉛筆のむこうに』では、他にも鉛筆の生産に携わる人々の話が普段の生活の様子と共に紹介されています。
 普段自分たちが消費するスケートボードはどうでしょう。日本ではほとんど見ることができないであろうスケートボードの生産工程。デッキ1本にしても木を切って運ばれ、薄くプライされたベニヤは糊付けされ圧着。その後カットされヤスリがけやプリントの工程、これだけでもひとつひとつの板に思った以上に人の手がかけられています。それらが代理店を通して日本の各ショップへ。かたやライダーたちによるテストが行われ、より良い板を生産するための研究・開発がなされています。これだけ人の手がかけられたデッキが日本だとだいたい1本1万円、自分は2〜3ヵ月で1本消費するのですが、それらを踏まえて考えるとけして悪い値段ではない、というか納得できる金額だと思うんです(もちろんラクラク払える額ではないですが)。
 ここで残念に思うのが、故意にデッキを折るという行為。映像を撮影する時などに見られる、なかなかメイクに至らずイライラが募ってデッキを投げたり折ったりのバイオレンス…。ひとつのトリックを残すのに痛い思いをしたり数時間かかったり、それでもメイクできずに悶々とするのはもちろんよく理解しているつもり。しかしそれで怒り狂っても残念ながらいいことは無いのです。板をぶん投げても次にメイクできる保証もないし、折ってしまえばそこで試合終了。さらに周りの空気まで悪くなってしまうともう最悪。「Skateboarding is not fun!」になってしまいます。メイクできないのは自分のレベルが足りないせい、板が乗りにくいのなら自分が合わせるスキルが足りないせい、悔しいならもっとスケートしまくればいいのだと自分に言い聞かせるのが結局一番クールだと思うってワケ。
 『いっぽんの鉛筆のむこうに』で他に紹介されているのは、アメリカで木を伐採するダン・ランドレスさんにそれをトラックで運ぶトニー・ゴンザレスさん。今こうやって見るとなんだかこう、スケーターにいそうな名前に見えてきてしょうがない(笑)。

─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)

 

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