プルースト現象

 「プルースト現象」という言葉をご存知でしょうか? 普段あまり聞きなれない言葉ですが、ニオイに反応して過去の記憶を思い出す現象だと言えば誰もが経験のあることでしょう。人間の五感のうち嗅覚だけは刺激の脳への伝わり方が違い、記憶と結ばれやすいらしいです。
 さて、今年もあっという間に過ぎ去ったゴールデンウィーク。自分は近所に住むスケート仲間と大阪へ。大阪市内の繁華街、アメ村にある三角公園でプルースト現象が僕の身にも起こりました。なんだろう? 公園の隅の方からなにやら漂うニオイにつられ、ふと思い出したサンフランシスコの街中でのプッシュ。決してきれいとは言えないSFの市街地と、これまたお世辞にもきれいとは言えない三角公園がリンクしたのかもしれません。そんなことはどうでもいいのですが、なんだか安心したのは昔から誌面や映像で見てきた三角公園が現在進行形で保たれていること。ローカル曰く「平日はガラガラだよ〜」とのことですが、さすがはゴールデンウィーク。連日連夜集まってはスケートしに小さな公園にはさまざまな人たちが集結、ごった煮とも言えるカオスな空間が広がっていました。
 いくら名のあるスポットとはいえ、そこはあくまで普通の公園。本来ならばスケートは禁止の場所です。スケートパークとは違いスケートが推奨されることのない場所に長年スケーターが集まりシーンが築き上げられるというのは凄いことで、そのような場所って実はそんなに多くはないはず。自分がスケートを始めた地元の公園や当時2、30人はいたかと思うローカルスポットも、当時真っ黒に育て上げられた縁石は今や白くなり閑古鳥が鳴いている…。東京だって高井戸の高架下や新宿ジャブ池、秋葉原の駅前広場など一時代を築いてきた有名スポットがありましたが、僕が上京する前に終わりを遂げています。スケートが全面禁止になったり、スポット自体の取り壊し、またはパークが増えたためにストリートで滑る必要もなくなってきたなどが原因でしょうが「あのスポットにはいつも誰かがいて、ローカルの長がいて、ちょっとビクビクしながら滑りに行く」なんてことが昨今は薄れているのを感じています。ボックスやレールが置いてある広場や、ストリートながら根強いローカルがいてわりと自由に滑れる場所は多い方がいいですし、ローカルスポットごとに生まれるスケート文化にも興味深いものがあります。そんなスケーターの居場所の存続や拡大のためにも周りへの気配りはしておきたいところですね。
 あっ、ここまで書いたところでよーやく思い出したわ。三角公園の隅から漂ってきたんは、アレは小便のニオイやったわ! ほんでプルースト現象やろ? ほんまヒドイ話やわ〜(エセ関失礼)。

─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)

 

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