SPOT NAME

 実家から歩いて5分のところにSF坂という坂があります。そこはちょっとした観光スポットでも、多くの人がわざわざやって来るような場所でもない、住宅地に少しばかりのお店が並ぶだけの坂。丘の頂にある公園から国道まで一直線に続く、ちょっとしたヒルボムスポットといったところです。もちろんその通りに「SF坂」なんて正式名称があるワケでもなく、それは僕ら地元のスケーター数名で共有しているだけの愛称。SF坂の「SF」はもちろんサンフランシスコを意味し、その坂を下っては行ったこともないサンフランシスコの街を疑似体験していたというわけ。当時中高生の童貞がスケートビデオで観るかの街への憧憬からSF坂の愛称がつけられたのです。校庭を抜け出しスポットでひとしきりスケートを楽しんだ後、サンフランシスコを想定してヒルボムしながら各々の帰路につくっていう、まぁそんな感じさ(今日調子いいな…どーしたオレ?)。
 ところで、たいていスケートスポットというものは通り・地名、または建物・施設名+スポットの形状をセットにして言うことが多いかと思います。都内の名物件だと「錦糸町のレール」、「工学院のダブルセット」てな感じで。しかしごく稀に、スケーターの間でしか通用しないような変わった愛称で呼ばれるスポットもあります。ハロウィンにカオスを巻き起こしたUnko Cup、それが開催されたのは通称「うんこカーブ」だし、渋谷のとある高架下、「DILL」のタギングが施されたキャニオン状に並ぶバンクは「ディルバンク」。もう立ち入ることができなくなってしまったが、●藤さんがコンクリートをボムしたスポットは「エンドランド」だし、「トレインバンク」の立役者ポンタス・アルブが鹿浜バンクの一画に追加工事を施してくれたバンクは「ポンタスバンク」。ともすれば隠語のように、スケーターのコミュニティ内ぐらいでしか共有されていないそれら愛称を伴うスポットは世界各地に点在する。言わずもがな、数々のトリックが更新されてきたサンフランシスコのハバレッジ(ハバハイドアウト)も愛称だし、ニューヨークのキンク付き物件はザ・ブラック・ハバだ。スケーターの間で親しみを持って愛称で呼ばれる名スポット、みなさんの地元にもそんな場所のひとつやふたつはあることでしょう。日頃のスケートの積み重ねでそのスポットでのNBDを狙いに行くも良し、軽く当て込みに行くも良し、ゲリライベントが開催されれば大勢で盛り上がるもまた楽し。なにより、スケーターくらいにしか通じることのないクローズドな世界観がイイですよね!
 アレ? ちなみになんですが、先ほど例に出したハバレッジ。階段に平行して取り付けられたレールよりも太い、カーブボックスぐらい幅のある例のアレの総称となりましたが、幅があるからハバレッジだと思っていた人ってけっこーたくさんいますよね? あれ? 僕だけでしたかね? ち、違いますよね? ね…⁇

─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)

 

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