東京都心を走る電車と聞いてどんなイメージを持ちますか? 激混みの通勤・通学ラッシュ? 至るところにアクセスできる路線網? 長く連なる車輌に数分おきの緻密なダイヤ? どれも正解。世界一複雑とも言われる都内の電車事情ですが、ローカル線さながらの路面電車が運行しているのをご存知でしょうか。都電荒川線という早稲田と三ノ輪を半円状に結ぶ路線。駅と駅の距離は短くゆっくりと走っています。車輌を運行させたまま貸切にしてちょっとした演奏会やパーティもできる変わり種プランもあるんだとか。都心を走る電車にしてその喧騒からかけ離れたほのぼのとした印象の電車です。
しかしながらその電車、やっかいなことにスケートボードを持って乗車することができません。いや、可能には可能なのですがバッグや袋の中に入れないと乗車させてくれないのです。普段使う機会のほとんどない路線なのでそんなことは知る由もなく乗車を拒否された都電荒川線。「たまたま不機嫌な車掌さんのスケーター差別に違いない!」と思った自分は数分待って次の便に乗ろうとするも同じ理由でキックアウト、結局その日は乗れずじまい。それから数年後「あのイケてないしきたりはもうないだろう」と乗車しようとするとまたしても同じ理由でキックアウト。て、徹底してやがる…。以前の失敗による学習で、その時は持参した袋に入れ直し大人しく従ったものの、湿気とモヤモヤの残ったある暑い夏の日。
さてスケーターにとって、街中の駅や電車の存在は単なる交通手段にとどまらずスケートスポットになる恰好の餌食。駅前広場や地下鉄へと続く通路上のスポットはもちろん、ホーム上の障害物を攻める者もいれば停車中の電車にIn & Outする特攻隊も(良い子のみんなはマネしないでね)。通行人や乗客にとっての迷惑とスケート的表現の自由が交錯する現場と言ったところでしょうか。そんな中で自分の思うベスト・オブ・ザ・ベストを選ばせて頂きますと、工藤雄三による線路上のBs Feebleかと。線路に交差する車道ともうひとつ隣を走る別の車道、その間数メートルの線路をレールに見立て、ライドオンからのグラインド。フィーブルといえばレールトリックを代表するトリックのひとつだと言えますが、まさかの線路上…いや線路も英語だとレールになるのか、なんて初めて写真で見た時に考えさせてもらったものです。
TRAIN-TRAIN。これはかのThe Blue Heartsの名曲のひとつ。なお余談になりますが、自称カラオケ嫌いの自分は仲間に誘われても極力行きません。ついつい終電を逃してしまった時、渋々朝まで行くような感じ。そんなカラオケ嫌いの僕でもノリノリで歌ってしまう曲のひとつがTRAIN-TRAINだったりします。みなさーん! 栄光に向かって走るあの列車に乗って行きませんかー?
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)