先日、約15年振りに掘り起こされた『JAG』。この作品はアフリカの子供たちの救済・自立支援プロジェクトAfrican JAGによってリリースされたスケートビデオ。今回はそのAfrican JAGについて少々説明を。
African JAGは2006年に浅野典子というプロデューサーによってスタートしたプロジェクト。まずは彼女の経歴から。40年ほど前、暴走族の最盛期には国内最大規模だったというキラー連合4000人を束ねていた伝説の総長。外苑西通りがキラー通りと呼ばれるようになったのはキラー連合が由来(諸説あり)。暴走族の総長を女性が務めたのは後にも先にも彼女だけとか。その後、無名時代の氷室京介(BOØWYのボーカル)や高城 剛(沢尻エリカの元夫のハイパーメディアクリエイター)などのプロデュースを経て、30年にわたり世界の最前線を走るDJ KRUSHのプロデューサーを務めています。経歴を見てわかるように、この人はかなり骨太。
そんな彼女が主宰するAfrican JAGに自分も通訳・翻訳という形で協力しています。このプロジェクトは主に世界最貧国のひとつであるマラウイという国の村を支援をしており、2010年には自分も現地支援に同行させていただきました(下の写真参照)。
支援する村へは空港から舗装されていない道を数時間車で走り、小さなボートで高い波に揺られながら湖を40分(巨大な岩に囲まれた村なので陸路は無理)。たどり着くだけで相当大変な場所ですが、支援内容は村人たちのHIV/エイズ検査、そして陽性者にクリニックまでの移動チケットを配布するというもの。きれいな飲み水も電気もなし、生活環境も極めて不衛生。マラリアの危険性もあり。そんな感じで現地のナースとボランティアを引き連れ、教会に村人を集めて検査を行いました。結果は村人の3割ほどが陽性。カルチャーショックどころではありません。陽性の子供とも話しましたが、教育もままなっていないし、ろくに食べてもいない。自分に何ができるかわからなくなり思考も停止。そんなこんなで2010年のマラウイ滞在は自分の無力さに心が折れた10日間となりましたが、その後も浅野さんは現地に飛んだりしながらさまざまな支援を続けています。何でも継続することが大切だと再認識。
ちなみに現在はパンデミックによる渡航制限で現地支援がなかなかできない状況ですが、浅野さんがホストを務めるYouTubeラジオ番組Radio JAGが展開中。ゲストもDJ KRUSHやRINOといった日本のHip-Hopのパイオニアから真鍋大度や宇川直宏といったクリエイターまで幅広い面々。自分も2回お招きいただきました。時間があればこちらの番組もチェックしてみてください。
ということでこのスケートビデオ『JAG』は、ストリートレベルからアフリカで起きている問題への関心を高めることが目的のひとつ。音楽も同プロジェクトからリリースされたコンピレーションアルバムに収録されたものが使用されています。そういう背景を念頭に置きながら、改めて本作をどうぞ。
—MK