このビデオは'80年代後半のスケートボードブームが落ち着いて来た'90年に、自分のホームタウンである上野ローカルが中心になり作った作品です。動機は単純、父親が新しい物好きで当時珍しかったビデオカメラが自宅にあり「普段一緒に滑っている仲間でビデオを作ろう」ということから。
登場するのは当時上野ムラサキのライダーだった尾澤 彰(T19)、早坂昌記 a.k.a ディックマン(ex Alva)、純上野ローカルの結城偉一郎 a.k.a ザブヤン、Jesse(T19)、Yoppi(T19)、Saluda(T-19)、田中大輔(ex Tokyo Z-Boyz)、カックン(ex Tokyo Z-Boyz)、ヒロ(ex Tokyo Z-Boyz)、増山明彦(ex Tokyo Z-Boyz)、山根、佐藤カネツグ、サカナ、ジェフ・ダン、クリスたちで、当時通っていたスポットで撮影しました。
当時スケートパークは限られた場所にしか存在しなかったので「トランジションだろうがフラットだろうがバンクだろうがそこにあるものを滑る」。みんなそんな姿勢でスケートボードをしていました。ストリートからバートまで滑る映像を観てもらえれば当時のムードが伝わると思います。
登場するスケーターたちのその後の活躍はみなさんご存知の通りですが、'91年に彰とSaludaはT19に加入。'93年に彰はサンフランシスコで開催されたコンテスト“Back to the City”で活躍(当時のアメリカのトッププロコンテストで14位に入賞)、同年にはスケーターのライフスタイルを発信するLovely Magazineを独自に発刊しました。故・西岡昌典とCalifornia Streetの藤原英彦が手掛けた雑誌、Nationが始まったのもこの年からでした。
あるスケートメディアが「'90年代前半の日本にはスケートメディアはFineの1記事しか無かった」と公言していましたが、それは間違った情報。もちろん当時は情報の伝達や物流が現代のように発達していなかったので誤った見解を持つことも理解できます。しかしメディアとして発信するのであれば、事実を曲げるべきでありません。
このビデオは営利目的のためではなく、ただローカルで作ったホームビデオです。映像のクオリティはさておき、30年前の東京下町のスケートシーンがどんな状況だったか、当時みんなが楽しんで滑っていた雰囲気が伝われば嬉しく思います。
ウイルスとの戦いで家で過ごす時間が多くなる中、これはゆっくり古いスケートビデオを観て何かを見つけるいい機会ではないでしょうか? 『怒りと威嚇』は非常事態宣言が解除される5月6日までの限定公開です。
—Hiroyuki Wakabayashi
※期間限定公開は終了しました。