1990年代はスケートボードのトリックが劇的に進化した時代でした。特にストリートスケートはフリースタイルの持ち味だったデッキをさまざまな方向に回すトリックを昇華させていきました。'90年代前半にはビッグパンツ、スモールウィールという実用的ではないほどの極太パンツに径が小さ過ぎてタウンクルーズには不向きな極小ウイールが世界的に流行したこともありました。
この映像は、サンフランシスコのシティホールのスペースを利用して行われたNSA主催のコンテスト"Back to the City III"の模様です。このシリーズは'93年の5回目で惜しまれつつも終了したと記憶しています。
ノーズとテールの形状が微妙に異なるデッキ、シューズはハイカットやミドルカットが主流だったり…。フラットも取り入れつつ、ややトランジション要素が多めな大会セクションがその後に訪れるモダンスケートスタイルの黎明期であると感じさせてくれます。
そして驚きなのが、この映像はアメリカではなく日本人によって撮影、編集されたものだということ。'90年代に日本のスケートボードメディアとして活躍したNation(S.K.T Nation)* により制作されたコンテストビデオ。クオリティは当時のアメリカものに劣らず、良き'80年代の雰囲気を残した仕上がり。今までWeb上に公開されていなかったことが不思議でなりません。リリースから長年の時を経て、制作者である藤原社長の協力により公開することができました。ありがとうございました。
なお、"Back to the City III”の模様は当時のThrasherでもチェックすることができますので、気になる人はそちらもどうぞ。
*Nation(S.K.T Nation)は'90年代前半に刊行された日本のスケートボード誌。故・西岡昌典とCalifornia Streetのオーナーである藤原英彦のふたりによって作られていました。
—Hiroyuki Wakabayashi