本物は色褪せない。往年のベストビデオの5本指にランクインする不朽の名作のひとつが『Real Life』。フィリーのスケートショップSub Zeroが制作した作品はいつ観てもスケートへの初期衝動を駆り立ててくれます。1994年制作なので、実に28年前の作品というのだからビックリ・ドンキーコングJr。この作品を若い人にゴリ押しするのもナンセンスかと思いますので、1点だけ老人の小言にお付き合いしてほしいのじゃ。よく海外のメディアなどでベストラインと称してマイク・キャロルの『Modus Operandi』のオープナーのSFライブラリーでのラインが取り沙汰されることがあります。キャロルの真骨頂とも呼べるフリップ系のオンパレードはマンマ・ミーヤ! なんだけど、どのメディアやスケーターと話していてもオレ的ベストラインの話題がない! ってことで自ら勝手にベストラインを。先にあげた『Real Life』のオヨラパート内のラストラインですが、これこそライン中のライン。ストリートのエッセンスが凝縮されまくってたまんねぇ〜。
フィルマーは当時駆け出しの若きダン・ウルフなのですが、おそらくリッキーがラインの流れもなにも伝えないでとりあえずついてこい司令を出したことは想像に難くありません。ラインが始まってしばらくすると先に出過ぎたフィルマーが体を反転させて一瞬リッキーを見失う(最近のビデオではあり得ない)。ストリートギャップをオーリーする前にリッキーが通行人に「Watch Out!! どけどけ〜」とシャウトする(さすがはメイヤー・オブ・フィリー)。でもって後半では、ラインの流れで当然直進していくものだと思った矢先に、車の動きを察して急遽左折。フィルマーが思わず「Wow」と声を漏らしているあたり臨場感がハンパない。予定調和じゃないっていうか、突発的に流れでラインを組んでいたであろう、これぞキング・オブ・ストリートなる所以。リッキー本人もどこかしらのインタビューで、「ダン・ウルフのフィルミングスキルはオレたちが鍛え上げた」と言い切っておりましたが、これを観れば大いに納得。自分的にはこれこそベストラインということで、体調も良くないしそろそろお暇させてもらいます。
最後のファイトシーンの真相ですが、ボコされているヤツがLoveパークに出入りしている少年たちにちょっかいを出していたようで(ドラッグを売りつけようとしたりデッキをパクったりなど)、再三の警告にも従わなかったのでリッキーの正義の鉄槌が下された…というのを教えてくれたのは、リッキーの元チームメイトであったリッチ・アドラーかジャック・サバックだったはずです。アーメン。
─KE