世の中にはマニアックな人がいるものです。というのも、The Bones Brigade Audio Show(@thebonesbrigadeaudioshow)という、'80年代のPowell Peraltaのスケートビデオをテーマにしたトークショーを発見。この番組は隔週ペースで放送されており、当時のトリック、トレンド、音楽、歴史やトリビアなどを紹介するもの。
そのなかでIntelligence Reportというレアなゲストを招いたインタビューコーナーがあるのですが、初回にフィーチャーされたのがダニエル・ゲスマー。「…って誰やねん!?」という人がほとんどだと思います。自分も誰かまったくわかりませんでした。実はこの人、1988年の名作『Public Domain』に登場したアーティスティックフリースタイラー。同ビデオにほんの1分ほどしか登場しませんが、フィギュアスケートとスケートボードを組み合わせた滑りで異様な存在感を発揮していました。
初めてあのシーンを観たときは完全にふざけているとしか思えませんでした。ただのギャグだと思っていました。でも本人は至って本気。彼はオーリーが登場する前の'70年代から活動していたスケーター。'60〜'70年代の優雅なフリースタイルに傾倒し、テクニカルトリックが台頭し始めた時代に流動的なスタイルを提示したかったのだとか。芸術的な動きを表現するためにバレエを習ったというのも特筆すべき点。
ちなみに『Public Domain』で使用されたシーンは、本人が制作した“87 DREAMS OF A LIFETIME”というエディットからの抜粋。当時はボーンズブリゲードのほとんどが彼の出演に反対したものの、監督のステイシー・ペラルタはその声を無視して強行突破。彼を出すことで論議を巻き起こそうという目的もあったようです。しかし'80年代のスケーターは今日と違って年齢層が低く10代から20代、しかもシニカルな若者がほとんど。彼が表現しようとしたものなど理解されるわけもなく、思い切り笑いものにされてしまいました。当時はThrasherも彼をゴシップ記事で嘲笑していたのだとか。現代であればスケーターの年齢層も許容範囲も広がっているため受け入れられた可能性もあったはずですが…時代が早かったか。
ということで、あれから34年。『Public Domain』で使用されたシーンと、そのもとのフルバージョンをどうぞ。ちなみにYouTubeで公開されたフルバージョンのコメント欄には、10年ほど前にヘイターから殺人予告が届いたそうです。
--MK