スティーブ・ロッコという人をご存知でしょうか? '70年代後期から'80年代半ばにかけて活動した元フリースタイラー/ストリートスケーターで、'87年にSMAからRocco Divisionというサブブランドを立ち上げた実業家。さらに同年にWorld Industriesを発足させ、'90年代初めにBlind、101、Plan Bなどを傘下に携えスケートシーンを席巻。これが広く知られたロッコの経歴。今となればスケーターよりも実業家としての一面のほうが有名かもしれません。
しかしこの人、実はストリートスケートになくてはならないトリックの発案者でもあることを先日知りました。そのトリックとはFsポップシャヴィット(本当の発音はショービットではなくシャヴィット)。ロッコがこのトリックを初めてメイクしたのは'79年、場所はベネズエラのスケートイベント。アラン・ゲルファンド(トランジションでのオーリーの発案者)とともに床に置かれた直径10cmほどのパイプをFsシャヴィットで飛び越そうと勝負したのがきっかけだったとか(ポップしないFsシャヴィットもロッコが発案)。ついでに付け加えると、普通のシャヴィットを発案したのはタイ・ペイジという'70年代のプロスケーター(2017年没)。当時のシャヴィットはスペースウォークの遠心力を利用してデッキを横回転させるトリックでタイホップ(1:16〜)と呼ばれていたようです。
ちなみに'89年にリリースされたWorld Industries『Rubbish Heap』のロッコのセクションはFsポップシャヴィットがオープニングトリック。これは自身が発案者であることを示唆しているのでしょう。なにはともあれ、スティーブ・ロッコは'90年代にWorld Industriesを通してスケートシーンをひっくり返した実業家だけでなく、ストリートスケートに不可欠なトリックの発案者でもあったのです。ということでロッコのシグネチャートリックと併せて、World Industries系ブランドから個人的に思い入れの強い作品をスローバック。なお、ロッコについてさらに知りたい人は『The Man Who Souled The World』(たしか日本語字幕版もリリースされていたはず)というドキュメンタリーがあるのでそちらをディグってチェックしてみてください。
--MK