MAGENTAの最新作『JUST CRUISE 2』が公開間近。5ヵ国に散らばったMAGENTAのライダーたちがフランスに集結して撮影された力作。本作に込めた思いをブランドの共同設立者ヴィヴィアン・フェイルの言葉とクレメント・ハーピラードの写真でご紹介。
—MK
フルレングスビデオの公開が近づいてきた
数年間の沈黙を経て、5ヵ国に散らばるMagentaの全チームライダーがブランド発祥の地であるフランスに集結し撮影された待望のフルレングスビデオ『Just Cruise 2』が遂に公開される。本作はロックダウンやその他の問題に直面した2年の間に制作されたもので、タイトル通り2016年に公開された『Just Cruise』の続編となっている。Magentaチームがフランス各地でスケートするという、前作と同じコンセプトを踏襲した作品。
クルー
世界各地の仲間を訪れた際に、素晴らしいスケーターたちと出会うことができ、さまざまなローカルシーンに接することができた。中には個人的な友人となり、後にアンダーグラウンドのアベンジャーズチーム、つまりMagentaの一員になった者もいる。その多くは10年以上経った今も親交があり、その中には圧倒的な浮遊感で人気を博すジミー・ラノン、SFのパワーハウスのベン・ゴア、クイックフィートに定評のあるグレン・フォックスなど、個性豊かなメンバーが揃っている。お互いの忠誠心(と鉄の掟)に誇りを持った面子ばかり。歳を重ねるにつれ、独自のスタイル、スポットやトリックのセレクションで魅せる成熟したスケーターへと成長した。我々は「スケーターの全盛期は10代後半から20代前半である」と言う世間の常識には共感できない。ガキの時代を終え、シャルドネを片手に、まともな会話ができるスケーターの方が我々には合っている。注目されなくても、スポンサーがつかなくても、スケートをするような情熱を持った連中。インスタグラムのポストで満足するのではなく、地元のシーンにフォーカスし、昔ながらのビデオパートに重きを置いている類が、特に我々には合っていると思う。例えばイタリアの雄、ルーベン・スペルタは最近までインスタグラムのアカウントすら持たず、フォロワーを増やすことよりミラノのストリートを滑ることだけに集中していた。そのような彼のまともなアプローチを本作でご覧いただければと思う。
サンフランシスコは、この15年定期的に訪れていたこともあり、我々にとって身近で大切な場所。ベイエリアとのネットワークは、Loopholeのジェス・ナルヴァエスや、スムースなスケーティングで知られるジャミール・ダグラスらも加わり、確実に広がり続けている(もちろんOGのベン・ゴアも)。
日本のスケートシーンに対する我々の愛情には特別なものがあり、彼らが我々にどのような影響を与えたかは一目瞭然だ。『Soleil Levent』は日本のスケーターやフィルマーとの深い繋がりを表現した作品であり、年内にオンライン公開する予定。我々は幸運なことに、’90年代のZoo Yorkに所属した「東京のスケートセンセイ」荒木 塁、スピードとスムースさを兼ね揃えた「ベイビーフェイスアサシン」座間翔吾を作品に迎えることができた。荒木はユニークなスタイルとアプローチが特徴。スケートとダンスを融合させたようなエピックなスタイルは今も進化を続けている。
ここ数年、力を入れているのがオセアニアエリアでの活動。何年も前から大ファンであったニュージーランドのスムースオペレーター、ケーシー・フォーリーが新たにプロチームに加入できたのもこの取り組みのおかげ。直接会うことで、お互いのリスペクトが深まり、チーム入りが実現した。
オーストラリアのレジェンドで最も元気な中年スケーターであるモーガン・キャンベルは、オーストラリアの厳しいロックダウンのためフランスでの撮影に間に合わなかったが、オーストラリアでVXフィルマーのジョシュ・ロバーツと年末の公開に向け、独自の映像作品を撮っているようだ。
続いて南米。ブラジルとのパイプができたのはつい最近。笑顔が眩しいサンパウロ出身のセルジオ・サントロは、グッドヴァイブスとヤバいコンボの持ち主。ブラジルとフロリダを行き来しているマイク・マグはアマゾン川を下り、スケートできそうなコンクリートがある小さな町をすべて制覇した伝説の持ち主。そんな彼らもパートを撮影するために数ヵ月フランスに滞在してくれた。
ソイ・パンデイ、レオ・ヴァルス率いるMagentaのオリジナルのフランスメンバーは、まだスケートとビデオパート制作に熱中しており、それぞれがフルパートをお届けできることをうれしく思う(ソイのような高齢でのフルパート公開は奇跡であり、これは我が国のワイン産業のおかげとしか考えられない)。
最近チームに加わったのがリヨン出身のフロリアン・メイレ、通称 @lepleasure_love。彼の多彩なアプローチは非常に新鮮で刺激的。おまけにスタイルも激ヤバ。
この作品には、上記以外にも多くの仲間やさまざまなローカル、フランスを訪れてスケートの楽しさを共有したスケーターたちが登場している。撮影に使える時間はあとわずかだが、何とかしてレアキャラであるユーゴ・メイラードの神々しい姿を作品に収めたいと思っている。かなり厳しいとは思うが…。
Magentaのオフィシャルフォトグラファーであるクレメント・ハーピラードは、恐らく最も面白いフランス人のひとりだろう。この記事のほぼすべての写真を撮影し、彼が参加したすべてのトリップで我々を笑顔にしてくれた。また、撮影担当のアンドレア "ドリュー" デュプレとステファン "フィグス" フィーガスは、昨年夏の厳しい暑さの中でも、クルーと非常に近い距離で素晴らしい仕事をこなしてくれた。彼らの献身的な努力には頭が下がる思いだ。彼らのスケートボードに対する献身がなければ、我々のカルチャーは成り立たない。
ロケーション
我々はフランスでスケートをして育ち、その空気感に恋し、’90年代からスケートシーンに関わってきた。その後ヨーロッパ、そして世界を旅する冒険を始めた。世界のスケートシーンを自分たちの目で見て以来、我々はフランスのスケートシーンの発展に対する責任を感じている。フランスでスケートをメインストリームにするためではなく、世界を旅する過程で得たユニークなヴィジョンを共有することでスケートの面白さを伝え、シーンを発展させることを目指した。それが『Just Cruise』の基本的なコンセプト。我々の街やスポット(特に知られていないスポット)に世界各国からスケーターを招き、新しいアプローチで未開のスポットを開拓し、ローカルにストリートスケートの魅力を伝え、フランスのスケート史を豊にするようなサイクルを構築することが狙いだ。
『Just Cruise 2』が撮影された主な都市は、ボルドー、パリ、マルセイユ、ストラスブール、トゥールーズだが、フランス通ならリヨンや他の町のフッテージも織り込まれていることがわかると思う。
我々はつねに新しいスポットや、隠された未開のスポットを探し出し、今まで見たこともないような街のセッティングの数々を、個性豊かなスケーターたちのライディングとともに紹介していきたいと思う。
ヴァイブス
我々のヴァイブスは「説明するまでもない!」と言いたいところだが、本当に親しい仲間や、才能を認めた者としか撮影や仕事をしない、企業的なしがらみでライダーを取らない、という強いこだわりを持ち続けてきた。そのため、ブランド発足当初から主要スケートメディアからは距離を置いてきた。なので2010年にMagentaを立ち上げて以来、メディアに大きく取り上げられることも、定期的な取材を受けることもなかったため、多くの人がブランドとしての動きや、誰が何のために関わっているのかをわかっていないと思う。ここまで読んでくれた方ならわかると思いますが、我々の存在は非常にユニーク。我々は最高にヤバくてビッグなものだけが好きで、ビッグなトリック、デカい態度、ヤバいテクニック、ビッグギャップなどを何よりも優先し、それ以外のものはすべて後回しでいいと思っているくらいだ。おっと、これは最近のメジャーなスケートチームに当てはまるガイドラインだった。失礼。このビッグ路線はこれまでも激戦区だったし、これからも競争が激化するだろう。我々が放っておいても他の多くの才能あるスケーターが面倒を見てくれるはず。我々は初めからそこを目指していたワケではないし、ブランド発足当初の姿勢から今も大きく外れていないことを誇りに思う。我々はスタイルやアプローチ、トリックやスポットのセレクションなど、グッドヴァイブスを持つスケーターやアーバンスケートをリスペクトしている。そして必要なとき以外は歩行者や警備員、警官を軽視したり敵対したりしない、ストリートスマートなタイプが好きだ。我々はケガをするような危険なスタントに特に魅力を感じない。そして超テクニカルなスケートスキルを身につけるには、スタイルを大きく損なうレベルの反復練習が必要となってくる。しかし『Just Cruise 2』は違う。これは、スタイル、フロウ、オリジナリティ、個性にフォーカスし、誰かの超人的なスキルに萎縮するのではなく、スケートボードを持ってストリートに出かけたくなるような、親近感を持ってもらうことに重点を置いた作品。そこにあるのはグッドヴァイブスだけだ。