今年11月に長崎県大村市のボートレース大村にオープン予定の「大村スケートパーク」シリーズ企画の第4弾。今回登場するのは現場を取り仕切るMBM PARKBUILDERS。絶賛建設中の現場で職長の吉澤大輝と木村将人会長を直撃。
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VHSMAG(以下V): まず長崎の大村スケートパークの施工を担当するようになった経緯からお願いします。
木村将人(以下K): これはボートレース大村とBOATRACE振興会の共同事業で、以前に鳴門のUZUPAを作ったときのチームの第2弾として請け負った感じです。だから振興会の担当者は今回も当時と同じメンバー。UZUPAがすごく人気で話題になったらしくて今回の話が実現しました。
V: パークのデザインについて聞きたいんですけど、最初は粘土を捏ねてパークのセクションを作ったじゃないですか。あれは通常のやり方なんですか?
K: そうですね、通常のやり方というか…スケーターは基本的に土木の知識がないじゃないですか。だからセクションの表現の仕方がわからないんですよね。たとえばオレたちだったら「高さいくつの何千アール、ボトムがいくつで」と言えばすぐに理解できる。でもそう言ってもわかってもらえないからまず粘土で作ってもらうんですよ。それが一番表現しやすい。初めてパークデザインに関わる人とやる場合は粘土を使います。もしくは「どこどこのパークのどんなセクション」みたいな感じで進めていくこともあります。UZUPAのときもまず南のカッチャン(南 勝己)が粘土を捏ねましたね。
V: ではUZUPAのときとまったく同じプロセスで進んでるわけですね。
K: そうですね。今回はドプロというよりは女の子や子どもたちも楽しめるパークということで、セクションが小さめに設定されてます。
V: 今のパーク建設の工程はどの段階ですか?
K: 今は下地ですね。今日はみなさんが現地に来るということで、セクションの色合いを見てもらおうと思ってます。
V: ちなみに今回の職長の吉澤さんに聞きたいんですけど、現場での生活はどんな感じですか?
吉澤大輝(以下Y): 近くのレオパレスを借りて仕事してます。でも今回は空いてる部屋が少なくてみんなの拠点が分散してるんです。だから車2台とチャリンコでそれぞれ現場に通ってます。仕事して、スケートか釣りばっかりですね(笑)。休みになれば足を運んで山で釣りしたり、遠くのパークに行ってみたり。
K: 現場が中途半端な遠さだったらたまに家に帰れるんですけどね。こいつは子どもがいるんで。週末とか連休に帰るとかね。でも長崎だとできない。
V: そうですよね。パークが完成するまで3ヵ月間は帰れないということですね。今回の現場はどうですか?
Y: ここは敷地も広くて色をつけたりとか。FUNな感じのパークですね。東京や神奈川と違ってパークが多い場所ではないので、楽しみにしてくれる人の密度がより高くなるかなと思ってます。
V: 今回のパークはグリーンの色が特色のひとつですよね。
K: カラークリートはうちの渡辺班とか山田班はやったことがあるんですけど、吉澤班は初めてなんですよ。だからまず練習をして自分たちのやり方でやってもらった感じです。最初はコンクリートに色を混ぜるだけのタンクを用意しようという案もあったんですけど、そういう使い方をすると最終的にタンクを捨てることになっちゃうんで…。その請求を出すのは心苦しいな…と。かなりの金額がかかるんで(笑)。
V: 今回のパークで思い入れのあるセクションはありますか?
K: 自分はセンターのボウル。滑ってみたいと思いますね。
Y: 僕はチャイナバンク風のセクション。その形が個人的に好きなんで。早く作って遊べる日を楽しみにしてます。
K: あと歩道橋ね。元のデザインにはなかったんですけど、ボウルに架かった歩道橋の一部の形が面白くなります。
Y: そうですね。歩道橋の両端がバンクtoバンクの形になってるんですけど、それぞれのバンクの両端をハーフボウルのようにラウンドさせてカービングで戻れるようにするんです。
K: 戻っても良し、飛んでも良し、トランスファーしても良し。しかもリップがラウンドしてるからドロップインできない人はロールインできる。
V: なるほど。初心者も玄人も遊べる感じですね。そういう新しいアイデアは現場で思いつく感じですか?
K: そうですね。自分もそれは思いつかなかったんですけど、いいアイデアだと思いましたね。
V: 今回のパークは女の子や初心者も楽しめるように設計されてますが、それ以外に他のパークと違う点はありますか?
K: Nigoちゃんがデザインしたってところですよね。女性スケーターの目線だったり、サイズ感だったり。Nigoちゃんなりのこだわりがちゃんと出てて、それを自分たちが忠実に形にするっていう感じですね。やっぱりデザインする人と地元で滑る人たちを優先しないと。自分たちが滑りたいものを作るだけだと職業的にもよくないと思うんですよ。ビルダーは滑る人の意見を聞いて、それから懸念点やデメリットを伝える。それでデザイナーや地元の人たちがどう判断するかですね。だって自分たちはそのパークのローカルになるわけじゃないですから。
V: スケーター、デザイナー、ビルダー、出資者とか、関わる人がたくさんいるなかで兼ね合いを取るのは大変じゃありませんか?
K: デザインに関してはスケーターの意見が反映されるようにしています。ラーメン屋が作った寿司は美味くないでしょ? あとよくあるのが街にパークスタイルのものを作りたいというケース。「ストリートスケーターしかいない街にパークスタイルを作っても誰も滑らない」ということはちゃんと伝えます。
V: 吉澤班の班長として見て、自分のチームはどうですか?
K: 今年6月の横浜の赤レンガ倉庫のコースもこのチームが作ったんですよ。あのときよりも連帯感ができた感じがしますね。現場を重ねて吉澤がそれぞれのビルダーの長所を理解できてるから。
Y: それぞれ得意・不得意はありますけど、絶妙なバランスで協力できてます。奇跡的なメンバーで仕事ができてると思います。みんな仲良いですし。一緒にいて楽しいですね。
K: 不思議と他の班もそうなんですよ。みんな仲が良い。みんな共通点がスケートと釣りなんですよね。なぜか釣りだよね。
Y: そうですね。釣りはスケートと似てますね。釣りができない現場はスケートと酒(笑)。
V: これまでいろんなパークを作ってきたじゃないですか。この大村スケートパークはどんな場所になってほしいですか?
Y: みんなが納得できるパークになればいいですね。滑る人、デザインする人、作る人、お金を出してくれた人も。関わった人全員が「このパークを作って良かった」って思ってくれたら最高です。
K: それが一番ですね。今はMBMという名前がブランドになってるじゃないですか。だから「MBMが作ったのにこれなの?」って思われるのは正直怖いです。イヤとかじゃなくて怖い。同じコンクリートで同じようなパークを作り続けても「ああ、MBMって感じだね」って思われちゃうから。うちはマンションの外構工事をやってるチームもいるから、そこからも新しいアイデアを取り入れていかないといけない。これからも土木とスケートの知識で新しいことをやっていきたいですね。