プロスケーターとしてのキャリアを終え、現在はオレゴン州のホーナーズ大学で建築史学の教授を務めているオーシャン・ハウエル。'90年代初めにH-StreetやBirdhouseのプロとして活動し、スムースで極上のスケートスタイルを誇ったテクニカルスケーターの走りです。
先日、そんな建築に精通したオーシャンがアメリカのラジオ番組に出演し、“ディフェンシブ・アーキテクチャー”について論じていました。つまりホームレス対策を目的とした、公共スペースにおける建築手法。要は、座り辛く長居できないように設計されたベンチや、横になって寝られないように等間隔で突起物を設置したレッジなどをデザインし、ホームレスなどの侵入を防ぐ手法のことです。そもそも、アメリカでは'80年代にレーガン大統領が次々と精神病院を閉鎖したためにホームレス人口が急増したそうですが、それが原因で徐々にこの“ディフェンシブ・アーキテクチャー”が発展していったそうです。説明するまでもなく、この“ディフェンシブ・アーキテクチャー”がホームレスだけでなくスケーターにも大きな影響を与えるようになりました。そして、現代の公共スペースは本当の意味で公共ではなく、ある程度の排他的な意味を含むようになっていったのです。
また、オーシャンは急増する公共のスケートパークについても言及しています。「もちろんスケートパークが増えることは結構なことだが、これはホームレス、売春婦やドラッグディーラーを一掃することを目的として建設している」とのこと。つまり、ストリートスケーターを街から追い出すと同時に、ホームレスやドラッグディーラーたちが多くいる橋の下などにスケートパークを建設することで彼らを一掃し、スケーターが集まることで利用価値のなかった土地に文化がもたらされてカフェやギャラリーが増える。その結果、土地の価値が上がって市が喜ぶという構造があるというのです。しかも、これはただのオーシャンの見解だけでなく、実際に都市計画の担当者からはっきり聞いた事実だというから驚きです。アメリカではスケートボードが都市計画に利用されるほど影響力があるということです。実に興味深い。
元プロスケーターで大学の教授に就任するという、このような人材が存在することにアメリカのスケートカルチャーの奥深さを感じます。ということで、いつの時代もさまざまな形で影響を与え続けるオーシャン・ハウエルのスケーティングをご覧ください。
--MK