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‘80年代から現在に至るまでの歴史を振り返る
──PUMA SKATEBOARDINGの今と昔

2024.05.16

 PUMAとスケートボードの事柄・歴史、そしてそれらに付随した諸々をざっくりと振り返り、筆者が勝手に簡単に考察し紐解いていくコラム。今回はPUMA Skateboardingについて紐解かせてもらいます。
 自分が最初にPUMA SUEDEを履いたのは1992年だったと思う。当時ブランドを立ち上げたばかりで勢いのあったPlan Bのライダーが来日し、川崎クラブチッタ内でのデモを見に行ったところから始まる。デモをしていたマイク・キャロル、ショーン・シェフィ、リック・ハワードらはスケートシューズではなくPUMA SUEDEやadidas Superstarなどのローカットのスニーカーを履いていた。それはスケートボード専用ではなかったが、その時代の回転系のトリックに適したシェイプで履きやすそうで、そして何よりかっこよかった。そんなスニーカーと凄いスキルのデモを見た後、やはりそのスタイルを真似したくなるってのが人の常である。
 すぐに近所のスポーツ用品店で記憶を頼りにあのデモで見たスニーカーを買い漁った。その中に黄色や紫とかの派手なPUMA SUEDEがあり、それをスケートで履きまくったのが自分とPUMA SUEDEとのファーストコンタクトだった。

 1992年より前にスケートでPUMAを履いていた人がいたのか少し気になり、過去にPUMAを履いたスケートの写真を調べてみると、1987年のThrasher Magazine 11月号の表紙を飾ったスティーブ・キャバレロがPUMA SUEDEのハイカットを履いてFsボードスライドをしている写真が最も有名であろう。この時代はまだゴツいハイカットのバッシュをスケートボードで履くのが主流であり、当時のトリックやスタイルにもマッチしていた。

 

 さらに調べてみると、その前年の1986年にクリスチャン・ホソイがPUMA SUEDEのハイカットを履いてブルックリンバンクスで滑っている写真がPUMA SUEDEを履いている著名スケーターの最古の写真かと思われる(筆者調べ)。その写真はメディアにあまり出回ることはなく、最近になってインターネットで発見されることとなった。

 

 上記と同年には人気が下火でワゴンセールとなっていたNike Air Jordan 1をボーンズブリゲードが履いて映画『ポリスアカデミー4』に出演。それによりスケートシーンにAir Jordan 1が浸透した。その流れからPUMA SUEDEのハイカットもスケートに適してたスニーカーとして流通したと予想される。

 

 その後'90年代に入りスケートボードのシェイプやトリックの変化もあり、スケートシューズの主流がハイカットからローカットへと移り変わっていった。回し技が主流になり技数も増えていく中、足首の可動域を広げるためにVANSのCaballeroモデルやAirwalkのEnigmaなどをローカットにカットオフしたりするスタイルが浸透していった。そんなブームもすぐに去り、スケートシューズではないスポーツブランドのローカットのオールドスニーカーを履くことがブームとなった。その先駆けとして知られるのは前述したマイク・キャロルが1991年に最初に履いたと言われているPUMA SUEDEだった。

 

 ショップの歴史をまとめたFTC Bookでオーナーであるケント・ウエハラがこう回想している。
 「サンディエゴから戻ってきたマイクが新品だが古い型のPUMAのスニーカーを履いていたんだ。すごくクールでスケートボードがしやすそうなモデルだったのでどこでいくらで買ったかなど根掘り葉掘り聞いたんだよ」
 「'80年代後半にはランス・マウンテン、トミー・ゲレロ、ジム・シーボー、ナタス・カウパスらみんながAir Jordan 1をCopelandという店のワゴンセールで2足24ドル99セントで購入し履き始め、街のスケーターがみんな真似をして、そのムーブメントが世界中に広がったんだ」
 「その需要とこれから来るムーブメントを見据えて、マイクがPUMAを購入した店名を聞き出したんだ。その店はサンディエゴにトレードーショーで行った時に面識のあったスニーカーショップだったから、まだ他にも在庫はあるかと聞いて山ほどあったから、そのすべてを買い取ってFTCでスケーターに売ったんだ」

 

 SFのコンテスト“Back to the City Ⅲ”でマイク・キャロル、リック・ハワード、ダニー・ウェイなどがPUMA SUEDEを履き、その映像が411VMにより拡散され世界中でPUMA SUEDEをスケーターが買い漁る現象が起きた。

 

 そんなオールドスニーカーブームの流れからadidasのSuperstarやCampus、ConverseのDr. J、NikeのGTSなどがスケーターの足元の定番となっていった。
 その流行のなかには、あるイギリスのスケーターが暗躍していたという。先出のFTC Bookによると、当時ロンドン在住のプロスケーターであるポール・シャイアが、UK限定カラーのPUMA SUEDEなどをカルフォルニアのスケーターへ個人輸出していたというエピソードが掲載されている。マイク・キャロルやリック・ハワードたちは、当時のスポンサーのギアとそれらのスニーカーを物々交換をしていたというのだ。これはまさにスケーターのこだわりと繋がりの強さを痛感するストーリーでもある。
 同時期にはまだアマチュアでInvisibleからToy Machineへと移籍する直前のジョシュ・ケイリスなど'90年代中期から後期に大活躍するテクニカルでスタイリッシュな当時の若手スケーターたちもこぞってPUMA SUEDEを履いていた印象が強い。

 

 そんなブームを知ってか、PUMAは1995年にはドンガー、アラン・ピーターセンのシグネチャーをリリースしスケートボードシューズ業界に参入。アマチュアにはその後のトレンドセッターになるZoo Yorkのロビー・ガンジェミを迎え、伝説的名作の『Mix Tape』でトリを務める。その映像でも足元にはPUMAが履かれている。そのガンジェミのパートは当時ものすごい勢いでシーンに浸透してきていたHip-Hopと融合した構成であり、当時のスケーターのみならずBボーイをも唸らせた。そんなHip-Hopやブレインキンとの歴史も長いPUMAがここでまさにスケートボードとひとつになった瞬間ではないかと筆者は勝手に思っている。

 

 

 '90年代半ばにはNike、adidasもスケートシューズに参入して来るが、当時乱立するスケーターによるスケーターのためのスケートシューズブランドの数々には太刀打ちできず、それぞれ撤退していく。その後DC、éS、Emerica、OsirisやLakaiなどが台頭。10年くらい続いたスケートシューズブランド黄金期も2000年代初頭には陰りを見せ始め、2度目となるPUMA、Nike、adidasの参入(Nikeに関してはその間に1度Savierというブランド名で参入をしたが、失敗に終わっている)により勢力図が変わってきた。NikeはDunkを、adidasはSuperstar、Campusをスケートボード仕様にアップグレードしスケーターのみならずスニーカーファンのハートも掴み市場を拡大していった。
 一方PUMAはライダーにスコット・ボーンを迎え、当時にしてもド渋なマーケティングでコア層の獲得に出たようにも感じられたが、決して長くは続かなかった。

 

 その後もPUMA Sとしてジョーイ・ブレジンスキがブランドマネージャーを務め数年にも及ぶ企画立案からサンプルを作りチーム構成などを繰り返していたが、スケートショップへの流通直前に頓挫。その時期、日本では米坂淳之介がPUMA Sを履いていることもあった。

※PUMA Sについて語るジョーイ・ブレジンスキの記事はこちら(web.archive.org/www.rippedlaces.com/joey-brezinski-speaks-on-puma)から

 

 そして2022年10月、PUMAが3度目となるスケートシューズ参入を果たす。

 

 

 2023年4月には初となるチームビデオ“Forever Faster And Push”を発表。日本スケートボード界のレジェンド米坂淳之介のスキルフルなフッテージや根岸 空の衝撃のエンダートリックが話題に。つづく2023年10月には戸枝義明が電撃加入。


 

 そして2024年の夏には2作目となるチーム映像がローンチされるとのこと。これからもPUMA Skateboardingから目が離せないですね。

--Yuh Yanagimachi

@pumajapan

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