VHSMAG印のソックス。あれ、いいですね。ソックスって、ハーフパンツや、ぶったきりのパンツとかを穿かないかぎり、あまり見えない部分だから、ついついなんでもいいやってなりがち。だから、仲がいいブランドとかいいなっていうブランドがソックスを出してると、ソソられる。なぜって、なんでもいいからわけわからないのをうっかり履いてしまうよりも、見え隠れしてほとんど見えないソックスが見えたとき、それを目撃した人も目撃された自分自身も、「そ、これね、いいでしょ、●●のソックスなんだよ」って言えるから。ぶっちゃけ品質とかってそんなに差があるのか、作ったわけじゃないから自分はわからないけれど、ましてやYves Saint Laurentとか大手ブランドもライセンスものが出回るから、ロゴマークがついてるだけじゃんていうのも多そうだ。それだったら、「そ、これね、いいでしょ、●●のソックスなんだよ」って言えるのがいい。さらには、それがブランドとかマガジンと縁がある人のデザインだったら、それでディス・イズ・イットって感じだ。ということで、VHSのソックスよろしく、そのバッグの中で見え隠れしてるヤツって何? とか、そのポッケに丸めたバイト情報誌みたいなのは何? っていう感じで、ついつい持ってるのがバレちゃったとき、「そ、これね、いいでしょ、なんだか知らないけどスケボーマガジンみたいなヤツなんだよ」って言ってもらいながら一緒にパラパラしてたら、ついつい「これいいじゃん!」ていう1枚の写真を見つけてくれちゃったりする存在になりたい雑誌、Sbがまた1冊完成しました。ぜひ、見つけた際には、よろしくお願いします!
新刊の第35号のタイトルは202Xということで。2002年創刊の流浪スケボーマガジンSb Skateboard Journal。年2回、春と冬に粛々と発行してきた。最近では世界的に人気のスケートボードだけれど、創刊時とそれ以前はまだまだイリーガルなものだった。オリンピックの正式種目なんて夢のまた夢、そんなことありえなかった。で、このSbなんだけども、結局オリンピックとは縁がなく、ましてや発刊年数は18年も経ってるのにまだ34号しか出ていなかった。メジャーリーグでいうところのプロ入り18年で一軍登板34試合、0勝5敗、防御率5.18といった感じだった。そうして、5月末に出来上がった新しい1冊。当初は、オリンピック開催直前号の予定だった。といっても中身はオリンピックから縁遠いページばかりだった。もとから、リーガルなところの影でスケートをひたすらするだけのスケーターの写真たちをかき集めていたSbだったから、通常営業、いつも通りではあった。しかし、そこに新型コロナウイルスというとんでもない事態が重なってしまった。クローズドな社会情勢になって、それでも紙として制作する意味はあるのか。紙でないといけない根拠はあるのか。キバヤシくん、これはどういうことだ?! MMRマガジンミステリー調査班に聞きたいくらいだった。そんなとき、東京より先にロックダウンしたパリやロンドン、ニューヨーク、そして旧知の仲であるポートランドのフォトグラファー、ジョー・ブルックらと連絡を取り合い、この今の世界的危機の状況を、ストリート目線で記録しておこうということになった。
ということで、危機的状況下だったけれど、そんな中でも、「あっ、スケートだなあ」と感じた瞬間をあえて書き残しておくことにした。コロナ禍や香港での大規模デモなど、2019年から2020年の今も起きている深刻な出来事、続けさまにやってくるトンデモなことに対するスケーターの目線、スケーターだからこそのオピニオンを記事にしたのだった。この困難を克服したいつかの日。その先の未来に、また何かトンデモなことがあったとき。そんなときに、未来のスケーターが参考にできるかもしれない。そういう1冊になったら、そのときこそ、流浪のスケボーマガジンSb Skateboard Journalが初勝利をメイクしたと書いてもいいかもしれない。一軍登板何試合できるのかわからないけれども、ぶっちゃけ何が勝ちなのかわからないのだけれども、背表紙にイカす広告とともにバーコードを提げて書店に並んではいるのだから、Sbにもチャンスはあるんじゃないかと思った。誰かのためになるかもしれないと思っているし、思っていた。スケボーマガジンなのに、表紙は、香港のビーチでチルする名もなきオッサン。異国のマガジンのカバーガールならぬカバーオッサンに乾杯パイセン!
—Senichiro Ozawa
定価¥1,100。5月29日より全国書店にて発売中。