STORE
VHSMAG · VHSMIX vol.31 by YUNGJINNN

POPULAR

NEW BALANCE NUMERIC - 306

2024.12.16

SKATE SHOP VIDEO AWARDS - 昭和99年スケーターの休日

2024.12.18

褒め言葉

2024.12.20

MOMIJI

2024.12.16

SKATE SHOP VIDEO AWARDS - 視聴覚

2024.12.20

TEPPEN KABUKICHO

2024.12.17

KENTO NAMEKAWA / 滑川絢斗

2024.12.18

SKATE SHOP VIDEO AWARDS - RUKA HORIUCH

2024.12.20
  • G-SHOCK

SKATE SHOP VIDEO AWARDS 2024
SKATE SHOP VIDEO AWARDS 2023 SKATE SHOP VIDEO AWARDS 2022
ADIDAS SKATEBOARDING /// TYSHAWN II

世界中のスケート僻地へ
──UZI MATSUI

2023.12.21

大阪を拠点に世界中のスケート僻地でパークビルドを行うUZIこと松井佑治。WONDERS AROUND THE WORLDアンバサダー、パークビルド会社NATTY CONCRETEオーナーとして活動中。アジアツアーから帰国したばかりの彼にショートインタビューを敢行。

--MK

 

VHSMAG(以下V): まずどのような活動をしているの?

松井佑治(以下U): 今はスケートボードをしながらビジネスとチャリティーを含めてスケートパークのビルドをやっています。

V: Wonders Around the WorldはNPOだよね。具体的に何をしている団体なの?

U: 基本的にはWondersの活動はすべてのスケーターがスケートパークにアクセスできる状況を作ろうっていうのが目的です。それがすべてですね。「みんなでスケートしようぜ。場所がなければスケーターで何とかしようぜ」っていう。そして最終的な目標はそこからカルチャーを生み出すこと。ひとつのものだけがひとつの方向に進んでいくだけじゃなくて、今はその各地から生まれる個性をフィードバックできる状況だと思うので。スケートが発展していない土地でスケートボードを通じてひとつの産業ができるように働きかけていけば、スケーターがスケーターのまま生きていけるよねっていう。それが目的かな。

V: パークビルドを始めたきっかけは?

U: Grindlineのファウンダーのマーク・ハバードに出会って、その人の家に居候させてもらったのがこの世界にどっぷりハマったきっかけ。2010年頃だったかな。ひとりでポートランドに行ったときにAgent OrangeとGrindlineの対バンのイベントがあって、Jivaro Wheelsのオーナーに誘われて行ったライブハウスで知り合ったんです。だから向こうは僕のことをスケーターではなく、ただのパンクキッズだと思っていたみたいで。それで居候させてもらうのも気まずいから、何か手伝いたいって思って。それで近くの現場を手伝うようになりました。若い頃に舗装とか工事の仕事をしてたから、なんとなく建築業のバックグラウンドはあったんです。「面白いな、案外オレでもできるんじゃね?」って思ったのが最初ですかね。

V: 松井は基本的にひとりで行動してるよね? LAの道端で偶然会ったこともあったし。いつからひとりで海外の僻地に足を運んでビルドするようになったの?

U: 自分が滑りたい場所を作りたいと思ったのが最初なんです。そのときにDIYに熱を上げて、街中にボムってスケートスポットに変えてしまうというのがグラフィティと似てるなって思って。でも上手くできないからやり方を学ぶきっかけを探しました。まずアメリカのビルダーたちに方法を聞いたときに、「いろんな開発途上国でスケートパークを作る活動をしているヤツらがいて、つねにボランティアを探しているから当たってみろ」って言われて。でもなかなか連絡できなくて、どうしようかなって思ったときに大阪でとあるプロジェクトがあったんです。そのときにパークビルドをやっている団体に出資しているコペンハーゲンのALISというブランドをやってるアルバートに出会って。そこから誘ってもらいました。

V: 自然な流れで繋がっていった感じだね。海外のパークビルドはボランティアなわけだよね。

U: 基本的に自腹ですね。グループハウスがあって、そこでみんな雑魚寝するっていう感じです。朝晩の2食は出ます。

V: じゃあ渡航費が自腹で経験値がギャラってわけだ。

U: そうですね。そこの魅力はアメリカだけじゃなくて世界中のビルダーやDIYに興味あるヤツが集まるところですね。スキルもマインドセットもみんなそれぞれ違う。視点がひとつじゃないから。だからすごい。いきなり視野が広がったり、ひとつの目的を達成するにもいろんなアプローチがあるっていうことを学べたことがデカかったと思います。あとはコネクションですよね。それぞれの国の最前線で動いている人たちなので、新しい情報や価値観を目の前で確認できるのが楽しいです。

V: これまで何ヵ国くらい回ったの?

U: 数えてないからわからないですけど、おそらく20ぐらいですかね。

V: 先月はブータン、タイ、フィリピン、パプアニューギニアと、アジア諸国を回っていたんだよね?

U: すごく楽しかったですね。アジアでスケートボードが普及してない場所はまだたくさんあるし。そういうところに種を蒔いていけるのはすごくいいことだと思います。0から1ですよね。そこが一番楽しいかなって思います。

V: 資金が集まって施工が確定した後の、現地での作業はどんな感じなの?

U: 地元のスケートコミュニティとの連携が大切ですね。僕らが帰った後も彼らが自立してパークを維持できるように、現地の人を雇ったり、現地のスケーターにビルダーのノウハウを覚えてもらうようにしています。やっぱり現地の人は仕事が必要なんです。それでWonderに働きかけて現地の人間を雇うようにお願いしています。彼らにいろんな技術を伝えて、少しでも自立できるようにするのがサイドミッションというか…個人的にはそれがメインかもしれないですね。

V: これまでいろんな国でビルドしてきたわけだけど、なかでも印象的だった国や出来事は?

U: いろいろありますね。僕はレゲエが好きだからジャマイカは力が入ったし、最終的に政府とかに褒められたりとかするような現場は印象に残ります。たとえばネパールで政府から感謝状をもらったりとか、バングラデシュではスポーツ長官みたいな人のところに表敬訪問したりとか。活動を認めてもらえるとうれしいですね。

V: カオス的な出来事はなかったの?

U: どこの国に行ってもコラプションは目につきますね。許可を取って施工していても、スケーターが嫌いな人ってやっぱりごまんといて。パキスタンの現場では公園を管理する団体に訴えられました。団体にスケートボードが嫌いな人がいて、「この工事は違法」って言い出して。あやうく工事がストップするところまで行ったんですけど、それをひっくり返したとか。あとはアフリカのどこの国とは言わないですけど、毎日警察が来るんですよね。毎日工事を止めようとするんです。権力を使って僕らの道具とかを没収して、「返して欲しければ…わかるよね」っていう。

V: 袖の下…的な。そういうときはどうやって対処するの?

U: 僕らは無力なんで、基本的に地元の人間に話してもらう。それでも無理な場合は合わせるしかないですね。やっぱりローカルとの関係は大切です。ブラジルのファベーラにもスケートパークはありますけど、それも地元の人間の協力がなければ実現しませんからね。でも誰が見ても悪いことはしていないから、まあ基本的に最終的なフィードバックはポジティブです。

V: ちなみに先日公開されたSalad Daysのドキュメンタリー(www.vhsmag.com/random/salad-days)に数カット出ていたけど、あのパキスタンのパークはどうだったの? パークのオープン初日は日本のそれと感覚が違うんじゃない?

U: 感覚は違いますね。オリンピックで堀米くんが金メダルを取って世間のスケートボードを見る目が変わったと思うんですけど、あれに近い状況が生まれるんです。たとえばイスラム圏のイメージはアメリカのものというイメージで敬遠する対象であるはずなんですけど、スケートボードに触れる子どもたちを見ると、やっぱりみんな目の色が変わるっていうか。この遊びが今や世界に繋がるスポーツになっていることを再認識します。日本ではパークがオープンしたら商売としてある程度プログラムが組まれているじゃないですか。スクールやろうとか。でも僕らが作るパークはそういうものが何にもない状態なんで。だからどんなアイデアが生まれてくるんだろうとか、どんなものが必要になるのかなって。そういう意味でもまったく違いますね。

V: ではパークビルドの醍醐味は?

U: まず自分が滑り続けられますよね。なおかつ自分が滑りたいものを作れるという。あとは他の仕事と比べて世界と繋がりやすいかな。僕みたいに会社を立ち上げなくても個人で海外で仕事できちゃうし。パークを作れるということはそれなりの建築技術が学べるということなので、仕事に食い逸れることもない。世界中どこへ行っても、やり方は多少違っても考え方はほぼ一緒だから、そういう部分では生きる道がひとつ増えるよねっていう。あとソフトではなくハードを作ることによって視界が変わります。会社の社長さんや市議会議員さんと話すことが多くなるんで、社会の見え方が変わってくる。そこは醍醐味ですかね。

V: 海外のスケート僻地でのスケートパーク建設について思うことは?

U: まず現地のスケーターがやることに意味があると思うんです。スケーター以外の人が仕事としてスケートパークを作っても全然面白くないと思うから。僕らみたいなグレーエリアの住人みたいなスケーターたちが、行政が本来やらないようなことをやるっていう。僕らの世代はスケートボードがネガティブに捉えられていた部分があるじゃないですか。でもそれはただ行き場所がなかっただけかもしれない。そういう問題を僕らの手で後始末したいなっていうのはちょっとあります。あとたとえばバスケットボールのプレーヤーが自分らでDIYでコートを作るってそんなにないと思うんですよ。でもスケーターはそれができちゃう。それがスケーターの面白い部分だと思うから、それは残したいなと。

V: では今後の活動予定や展望は?

U: Wondersはこれからトーゴ、ナイジェリア、モロッコとか、あと他にもいくつかプロジェクトを抱えています。でもみんな疲れてくるんで、日本のスケーターにもぜひ参加してもらいたいとはつねに思っています。次の世代を作りたいのと、この動きをさらに拡大していけたらというのがWondersとしての目標ですかね。個人的な活動としては、パークを年に数個日本に作りたいです。今の活動をあと20年ぐらい続けていけたらいいですね。

 

Uzi Matsui:@uzi_matsui
Wonders Around the World:@wondersaroundtheworldorg
Natty Concrete:@natty_concrete

  • BRIXTON
  • VANTAN