スケートメディアに従事するようになってから、取材を通して何百名ものスケーターに話を聞く機会に恵まれてきました。今や国民的スターとなった堀米雄斗のようにシーンの最前線を走る現役から、クリスチャン・ホソイやマーク・ゴンザレスなど今日のシーンを築いたレジェンドまで。取材の対象となったスケーターはさまざま。通常なら聞けないことが聞けたり、ときには自宅にお邪魔していろんなお宝を拝見できたりなど。今回はこれまで取材したなかでも印象深かった人をご紹介させてください。
ヴァーノン・コートランド・ジョンソン aka VCJ。'70年代からPowell Peraltaのアートワークを担当したアーティストです。同ブランドのRipperを始めとするスカルモチーフの作品で有名。スケーターであれば誰でも一度は彼の作品を目にしたことがあると思います。自分にとって初めて選んだデッキが彼の代表作のひとつであるSkull & Swordだったため、ずっと会って話を聞きたいと思っていました。そして彼が手掛けたデッキを選んでから25年。2010年の春に念願叶ってカリフォルニア・サンタバーバラの森林の奥に構えられたご自宅にお邪魔して話を伺うことができました。
初対面の第一声が「僕を見つけてくれてありがとう」。イメージ通りスーパーナイスなご老人。影響を受けたアーティストについて教えてもらったり、Bones関連のグラフィックの制作秘話などなど。VCJが手掛けたグラフィックにワクワクした'80年代にタイムスリップしたような感覚。富や名声などに興味がないらしく、人里離れた場所で奥さんと慎ましい生活を送りながら創作活動を続けている感じでした。スパイス入りのタバコを巻いてもらって煙をくゆらせながら1時間ほど話を聞かせてもらい、マジックで描いた簡単な自画像をプレゼントしてもらうなど…実に贅沢な時間。
初めて購入するデッキはやはり好みのグラフィックで選ぶもの。自分にとってのそれがVCJの作品でした。スケートの原点とも言えるその本人と過ごす時間は夢のよう。そして最後に忘れられないこんな言葉をいただきました。
「君は2000年前の前世にインドのカシミール地方で僕に家を建ててくれた。今度は僕が君のために家を建てる番だ」
やはり只者ではありませんでした。世俗的な僕らとは違う周波数で生きているからこそ、歴史に残る名作を山ほど残すことができたということでしょうか。思い切りぶっ飛んだ人が自分のスケートの原点で光栄です。なにはともあれ、そんな人と2000年来の仲とはつゆ知らず。いつか家を建ててもらえるのを首を長くして待ちたいと思います。リスペクト。
--MK