何も足さない、何も混ぜない――。これって意外と難しい。何かを継続させていく上でモディファイは欠かせないことだし、例えば相手がいるビジネスであれば、さまざまなニーズに応えていかなければならないのだから。
そう考えると人間のクリエイティビティというのは計り知れないと、つくづく実感させられる。その時々に直面した出来事に対処しつつ、モディファイを繰り返し、次々に新しいものを生み出してしまう。そう、今こうしている瞬間にも、この地球上ではさまざまなモノが最新版へとアップデートされているのだ。
そんな日々の進化へ感心しつつも、自分は“ファーストモデル”に多大なリスペクトを抱く人間だ。例えば工業製品の話になるけれど、自動車にしてもオートバイにしても、何よりファーストモデルが一番美しく、エクステリア、そして機能と、そこにはデザイナーの熱くピュアな思いが見てとれる。しかし顧客のニーズに応えていくには、時を重ねると同時にモディファイを繰り返していかなければならないし、そうすることでファーストモデルに反映されていたデザイナーの熱くピュアな思いというのは、どうしても薄れてしまうものなのだ。
そんな工業製品の宿命を理解して次々に最新モデルをリリースするのと同時に、いまだにファーストモデルにもこだわりをもつシューズブランドがある。それがみなさんご存知のVans。1966年の創立とともに創始者のヴァン・ドレン、そして数名のスタッフで完成させたファーストモデルこそ、いまも同ブランドのラインナップに残るAuthenticである。シンプル極まりないそのシャープでスタイリッシュなフォルムは、時の流れを感じさせないほどに洗練されている。機能性でいえば、Vansには素晴らしいプロダクツが幾つもあるが、このAuthenticには、それをも超越した魅力を存分に秘めているのである。
かくいう自分もAuthenticの大ファン。古いモデルも合わせて、20足以上は馬鹿みたいにストックしていたりする。そう、自分にとってはAuthenticを超えるシューズなど、いまだ世に存在していないのだ。
今年で設立45周年のアニバーサリーを迎えたVans。きっとこれからもモディファイを繰り返し、魅力的なシューズを僕らに届けてくれることだろう。そして一方でVansにとってAuthenticは、いつまでも変わることのないマスターピースなのだ。
--Kota Engaku