早いもので、SLIDERが創刊して丸2年が経ちました。今回の9号目を迎えるまでに、おそらく100名近くのインタビューを録り、記事にしてきました。やはりライター業の特権とは、仕事を理由に会いたい人に会えるということ。そして聞きたいことを自由に聞けるということ。子供の頃に憧れたヒーローに会えるということは至福の喜びです。たまに例外はありますが。
この至福の時を提供してくれているのがSLIDERなのですが、ある人の尽力なしではこういった貴重な経験は実現しないのです。ご存知ですか? サンフランシスコを拠点に活動し、日本人として初めてThrasher誌の表紙を撮影したフォトグラファー、ケン・ゴトウのことを。アメリカのスケート主要都市に強力なネットワークを持つ彼の存在があるからこそ、現地取材が可能となるのです。日本からやって来た、どこの馬の骨かもわからないヤツの取材なんて誰が受けますか? 適当にあしらわれるのが関の山です。
この2年の間にマーク・ゴンザレス、マイク・キャロル、ジェフ・ロウリーといったそうそうたるスケーターたちの自宅にお邪魔し、ジェルー・ザ・ダマジャやボビートのようなアーティストと会って話を聞くこともできました。SF、LA、サンディエゴ、オレゴン、NY…さまざまな都市で忙しなく移動し続け、さまざまな珍事件にも遭遇しました。SFではジョバンテ・ターナーと車で移動中にガス欠という凡ミスをメイクし、身動きができなくなったこともありました。ゴトウの自宅の隣の部屋が大火事になり、消防士が駆け込んできて避難したこともありました。オレゴンではあわや殺人事件になりかねない状況に遭遇し、サイラス・バクスターニールとゴトウが事態を解決してヒーローとなったこともありました。NYのブルックリンバンクスでは寒さと前夜の過剰飲酒のため、恥ずかしい粗相をしたこともありました。相当悪そうな、ゴトウのお友達ともたくさんお会いしました。このようなスリルや珍事件も現地取材の醍醐味かもしれません。
とにかく、SLIDERの現地取材はゴトウの存在なくして成立しません。彼の強力なネットワークやアメリカのスケートコミュニティにおける信頼度の高さ、誰に対しても怯むことのないゴリゴリなアジアン・ギャングのような立ち振る舞い。そして度々見せる凡ミスやお茶目な素行。彼のおかげで読者のみなさまにアメリカのスケートコミュニティの生の声をお届けすることができているのです。
現在発売中のSLIDER Vol. 09のフォトグラファー特集では、今まで裏方として本誌を支えてきたゴトウ自身を彼の作品とともに紹介しています。その美しい外見と比例した、彼の繊細な作品群をご覧ください。加えて、11月に来日したトミー・ゲレロ率いるBlktop Projectのジャパンツアーの模様も、同行した彼の写真で16ページにわたり掲載されています。冬の夜長のお楽しみに、是非、ゴトウをご賞味ください。
--Masafumi Kajitani