VHSMAGには、Guest Talkというコンテンツがあります。内容はタイトルそのままで、主に海外からの著名人スケーターをインタビューさせてもらうといったものです。
スケートツアーだったり、プライベートだったり、来日の目的はそれぞれですが、海外のビッグネームともありますと、なかなか撮影や取材も一筋縄でいかないことも多々あります。
例えば現在アップされているゲストの、ジェイソン・ディルに関してもしかり。ディルが来日するということなので、事前にemailでコンタクトをとるも、レスなし…。1週間が過ぎ、取材の方もあきらめかけたころ、突如携帯電話がおびただしく鳴り響く(急を要するときはリング音が大きく聞こえる気がする)。電話越しにディルが「そういえばインタビューなんだけど、今日の15時からだったらイケるから、すぐに用意してホテルまできてくれ」と。おいおいちょっと待ってよ、質問も考えてないし、フィルマーの用意とかもあるから、明日とかに取材日ずらせない? と促すも、「ルック…オレは今回の来日で、他のすべての媒体のインタビューを断ったんだ。そんななか、オレはお前らのインタビューだけは受けたいと思ってるんだ。なぜかって? お前らが日本唯一のハーコースケートメディアだからさ」って嘘みたいな本当の言葉がディルから発せられる。加えて「まさか東京にいて、ビデオカメラ1台もすぐに用意できないってことはないよな? 明日ではダメなんだ。今日、しかも今からでないと」ガシャン。
なんだこいつ面倒くさいな、と普段なら思うんだけど、ディルのありがたい言葉もあったのと個人的にも尊敬しているスケーターで、運良くフィルマーもインタビューワーもすぐに捕まったので、普段は乗らないタクシーに飛び乗りディルのステイ先ホテルへと駆けつける。ディルはオープンな雰囲気で取材クルーを迎え入れるも、クオリティやライティングも度外視で、カメラアングルのみ指定。ほとんどフリースタイルに近い質問にたいして、逆に質問返しをしたりとかなりの苦戦を強いられました。しかも話が途中とんでもないところまで脱線したりして、終始がつかない一幕も…。
その後、編集に関してかなりの苦労をしながらも、細かいやりとりが何度となく繰り返されたのち粗編を送ると、ディル本人がいたく気に入ったらしく「実はもうすぐオレに関してのビッグニュースが発表されるんだ。そのキャンペーン内のオフィシャル動画としてこのVHSMAGのインタビュー動画を使わせてくれ」と。さらには、ディルの機転でAlien Workshopのフィルマーである、ベニー・マグリナノが映像を被せることになり、あれよあれよとVHSMAG×Vans×Alien Workshopとのトリプルコラボが完成され、ディルのVans加入のニュースのマテリアルとして、世界中へ発信されることとなったのです。
ディルのアウト・オブ・コントロールといいますか、問題児的な言動はスケート業界内では有名な話で、事実デッキスポンサー以外はあっちこっち変わることが多い。それでも、今回のVansチームへの加入のように、紆余曲折しながらも最終的にベストな形で着地させてしまうところが、ディルの真骨頂ともいえるような気がします。
今回の一件ですが、ディルの周りではよくある話のひとつに過ぎないかもしれませんが、1+1を3以上に膨らませてしまうと言いますか、ディルのスケーター(人間)としてのカリスマ性を、我々VHSMAGスタッフが身近で感じたエピソードでありました。
Guest Talkでは、ゲストのスケーターが「ユーアー・ウォッチング VHSMAG !!」と言って締めるのが通例なのですが、なんどお願いしても、ディルだけは頑にそれを了承しなかったのでした。曰く「他のみんなが言っているからイヤだ」と。
--KE