唐突ですが、自分はスケートラインの最中のジャンプカット反対派です。ジャンプカットというのは映像作品で多用される編集技法のひとつで、要点のみを映したカットをつなぎ合わせて、途中のプロセスなどを端折るやつです。作品の趣向や尺的なことだったり、さまざまな目的でポイントのみを映したいってのはわかります。実際に自分もPR用の動画なんかでは、音と合わせたり流れを作るために効果的なので用いることもあります。それを加味してもらった上での話になりますが、PVとかあからさまなCMではない所謂スケートのビデオパートでの、トリック間のプッシュなどが飛ばされて(ジャンプカットされている)メイクしている画だけがつなぎ合わされているラインに違和感を覚えます。映像をどのように編集しようとそれは作り手の自由ですし、こうでなくてはならないなんて決まり事もないし、ジャンプカットが効果的に使われている映像も沢山観ているので、あくまでも個人の好みの話ですが。
それではなぜ自分的に苦手かと言うと、国内外を問わず、ビデオパートからスケート以外の要素を汲み取るのが好きだから。文化というと少し大げさかもしれませんが、少なくても自分はスケートのビデオパートを観るときに、スケートのトリック以外の部分にもあれこれと目を凝らしてしまいます。いまでこそひとつのビデオパートを作るにあたり、世界中を飛び回って撮影するのがスタンダードとなっていますが、'90年代はロケで海外というのは頻繁には見られなかったのです。そのほとんどが、ビデオパートを持つスケーターの生活圏に近い街などで撮影されており、そういったところからスケーターの人なりや個性なんかを映像を介してあれこれ自分なりに理解しようと努めたのです。
単品トリックから見えてくることもありますが、やはりラインは情報量が豊かで見ていて楽しい。背景に映り込んだ街並みや、偶然映り込んだ人たちを見ながら、「この人はこんな土地でスケートを覚えたのか」とか「なんか怪しい動きしている人がいる」とか、あれこれ余計な思考を巡らせながら、足を運んだことのない土地や街の情報を取り入れるのがビデオパートを楽しむ醍醐味のひとつなのです。
そして何よりも好きなのが、スケーターの何気ない動作を見ること。例えば車道を横切る際に車が来ていないかチラっと振り返ったり、次のトリックへ移行するときにちょっとヨレたりと、そういった細かい仕草や癖だったりがトリックという行為そのものよりも、グッとくる場合が多々あります。そういう理由で、国産モノで多用されるジャンプカットラインの映像を見ると、少しもったいないなって思うのです。 そんな風に感じてしまうのも、90'sに自分なりのスケート黄金期を過ごしたミドルエイジ・スケーターの名残なのかもしれませんし、そもそも大きなお世話なのですが。
自分も含め、最近'90年代をリアルタイムで過ごしたスケーターの妙な90's押しが目立つので、10代、20代のスケーターから「しつけぇ~いま2013年だし」って突っ込みが聞こえてきそうなので、このあたりでこの話は締めさせてもらいますが、次号(6月末発売)SLIDERの第1特集はこのコラムの主旨同様に、“'90年代にある意味ジャンプカットされたブランド”をフィーチャーします。イケてたのにいろいろな理由で消滅してしまった<幻>のブランドに、いまさら迫ります。
それでは最後に、個人的に好きな90'sのビデオパート3つほどを貼り付けてあるので、時間を持て余してる方はご覧ください。スケーターそのものの魅力もさることながら、SF / SAC、LA / OC、PHILLY/ NYといった街的なエッセンスも凝縮された、いつまでも色褪せなることのない(内容的に)良質なビデオパートです。
「てか、ジャンプカットで端折らなきゃならないようなライン、そもそも撮影すんなよ!」ってところはジャンプカットでお願いします。
--KE