BAことブライアン・アンダーソンがゲイであることをカミングアウトしたのが昨年6月。ジオヴァンニ・レダがVice Sportsで手がける“Reda for the World”という番組を通してそのニュースが世界に届けられました。これまでにToy MachineやGirlに所属して人気を博し、世界中にファンを持つスケーターだけにこのカミングアウトは大きな話題となりました。
殺人鬼のような顔つきでスポットに襲いかかる、雄々しく力強いスケートスタイルの持ち主で1999年度のSOTY。そんなBAは幼少期から自身のセクシュアリティに疑問を感じていました。女性ではなく男性に興味があると初めて感じたのは3、4歳の頃。男性のヒゲに関心を持つようになり、TVアニメ『ポパイ』に登場するブルートのフランネルに身をまとった筋肉質な身体とヒゲという風貌に惹かれたのが最初の記憶。そして、大人になった現在もそのような男性がタイプ。スケーターにはまったく性的関心がなく、どちらかといえばキックアウトされる度にたくましい警官を見ることができるのが楽しかったとのこと。しかし、男社会のスケートコミュニティで「オカマ野郎」という言葉を頻繁に聞く度に苦しみ、セクシャルマイノリティに対する風当たりの強さを感じてきたそうです。ツアー中はグループから離れてひとりで過ごすことも多く、ゲイであることへの恥のような感覚をごまかすために大量の酒を飲んだとか。そして、その苛立ちや怒りをスケートにぶつけてゴツいスポットに突っ込んでいたとのこと。それを知ってBAのパートを観返すと、なんとも言えない複雑な感情が沸き上がります。
世界に向けてカミングアウトする前から、BAはThrasher編集長のジェイク・フェルプスやチームメイトなどに個人的にゲイであることを伝えていました。そして、誰もが「そんなことはどうでもいい。何も変わらない」と気にすることなく受け入れたのですが、特筆すべきはその事実が誰の口からも漏れずに昨年まで秘密にされてきたこと。カミングアウトすることで気持ちが晴れ、それまでよりもハッピーになれるということを同じように苦しんでいる人たちに伝えたいというのがおおっぴらに告白した理由。さらには自身がカミングアウトすることで、セクシャルマイノリティについて考えるきっかけを作ることができればとのこと。
そのカミングアウトが公開されてからちょうど1年後の先月、The New Yorkerからその続編とも言える動画作品が公開されました。そこには現在付き合っているボーイフレンドも登場。そのルックスはまさに幼少期に惹かれたブルートそのもの。そして、昨年にカミングアウトをして間もなく、12月28日にボーイフレンドと無事結婚。さらにはAntiheroに迎え入れられ、いろいろな意味で新たなスタートを切っています。
というのが、ざっとしたBAのカミングアウトの内容とその後。それら動画と併せて、Toy Machineの『Welcome to Hell』とGirlの『Yeah Right!』のパートをどうぞ。BAの勇猛果敢な姿とスケーティングに改めてやられてください。
--MK
レダが手掛けたVice Sportsのエピソード。
The New Yorkerから公開された現在のBAをフィーチャーしたミニビデオ。
1996年のToy Machine『Welcome to Hell』。
2003年のGirl『Yeah Right!』。