スケートコミュニティでBigfootの新たな目撃情報が報告された。SATORI WHEELSとのコラボレーションを記念して、謎のアーティストにインタビューを敢行。
──BIGFOOT
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Special thanks_BP Trading
VHSMAG(以下V): アートを始めたきっかけは?
Bigfoot(以下B): 母親が絵を描いたり、アート作品を作ったり、グラフィックデザインをしていたから、幼い頃からアートが身近な存在だったんだ。特に5歳の頃に彼女はニュージャージーの家からほど近いキーン大学でアートを専攻していた。もちろん子供の頃は漫画やコミックなど子供が好きなものに夢中だった。小学校2年生の頃は漫画家になるのが夢だったから日曜版の新聞を見て絵の描き方を覚えようとコピーしたりしていたね。それから数年ほどアートから遠ざかっていたんだけど、本格的にアートに目覚めたのは小学6年生の頃。スケートを始めた'85年だ。スケートのグラフィックや雑誌に影響を受けたのがきっかけだった。その後、'89年か'90年頃の高校時代にはアートのクラスでいい成績を収めるようになり、自然からインスピレーションを受けながら家でも学校でも描き続けるように。そしてニュージャージーを離れてSFの芸術大学に進学したんだ。最初は正直、SFの大学に行くのは地元ニュージャージーから離れるための手段だと思っていた...。でも自由にいろんなアートを試したり、新しいスタイルを開発したり、アートスクールに出入りして刺激を受けるうちに、それまで以上に絵を描いたりすることに夢中になってね。自分のビジョンを表現するために、ずっと創作を続けることになると思うようになっていった。未来がどうなるかはわからなかったけど、オレはつねにアーティストであり続けるだろうと思っていたんだ。
V: Bigfootというアーティスト名の由来は?
B: 自分のアートで表現したいことに意味を持たせたシンボルを探していたんだ。そして'94年のある日、ピンときてBigfootという名前を自分のアートに使うことにした。森から来た古代の人々の声を代弁して、現代社会の人々に自然をもっと認識し、尊重する必要があることを伝えたかったんだよ。
V: まず街でタギングすることから活動を始めたんだよね? それから筆を取って絵を描き始めたのは?
B: SFでタギングを始めたのは'94年の終わり頃。伝統的なグラフィティのスタイルに合わせて絵を描くという点では、それほど上手くなかったけどね…。でも自分のタグを確立させようとしていたし、ハンドスタイルや素材に関しては、他の人とは違うことをしていた。基本的にはマーカーを使ったり、人のガレージで余っていたスプレー缶を使ったりしていたけど、ほとんどは家庭用のアクリルペイントを使っていた。安くて手に入りやすかったんだよ。鮮やかな緑色のものを見つけることができたし。'90年代はいい感じの緑色のスプレーを手に入れるのは大変だったんだ...。だから家の外壁用ペイントを小さな瓶に入れてプッシュで出掛けて、壁を茶色や緑色で塗ってその上からマーカーで絵を描いたりしていたね。
V: 現在のスタイルはどのように生まれたの?
B: 何年にも渡る実験と試行錯誤を繰り返し、自分のインスピレーションがどこに向かっているのかを見極めてきたことが自分のスタイルの発展に役立ったんだと思う。アートスクールに入学したときは、高校の課題から解放されて好きなタイプのアートができることに喜びを感じていた。2年間、狂ったように描きまくっていた。そうやって自分だけの線や線の使い方を発見できたんだ。すべてのアーティストは長い旅に出ているようなものだと思う。人生経験の中で新しいものを発見し、それがアートに影響を与えるんだ。オレは早い段階で、自然への傾倒が自分の芸術の原動力になると気づいた。そして世の中には、超クリーンでテクニカル、そして現代的なアートがたくさんあることにも気づいた。そこで、オレは自分が本能的に感じていることを実行して、自然にインスパイアされた独自のスタイルを追求しようと思ったんだ。
V: '98年にIPathを共同設立したよね。その経緯は?
B: ニュージャージー時代からの仲間のマット・フィールドがスケート関係のプロダクトを作りたいという男に出会ったのがきっかけ。それでふたりでブランド名を決めて、オレがロゴのスケッチを描いたんだ。
V: IPathはスケートシューズに新しい風を吹き込んだよね。このブランドがスケートシーンに与えた最大のインパクトは何だと思う?
B: IPathは今振り返っても本当にユニークだったと思う。シューズのデザイン、スケートチーム、グラフィックやロゴ、美学など、人の心に響くものがあったと思う。オレたちはただ'80年代後半のバスケットボールシューズのようなシンプルなスニーカーでスケートをしたかっただけ。というのも'98年当時のスケートシューズは超ハイテクでクレイジーなソールを搭載したロートップばかりだった。それから数年して、他のスケートシューズもIPathのようにシンプルになっていった。これはひとつのインパクトだったと思う。またIPathライダーはそれぞれスタイルを重視していて、他と同じようなスケートをする必要がないということを当時のシーンに示していたこと。そして3つ目の大きなインパクトは、自然や地球と一体となるIPathの美学 を伝え、当時のスケーターたちに影響を与えたことだと思う。
V: SatoriはIPathと同じ頃にスタートしたと思うけど、Satoriを始めたクレイグ・ネイエドリーとは当時から繋がっていたの?
B: もちろん! SFではいつもクレイグがスケートをしているのを見かけていたし。IPathのライダーの多くはSatoriのライダーでもあるから、共通の仲間もたくさんいた。音楽やスケートなど趣味も似ていたし、お互いベジタリアンだからSFでは同じレストランで鉢合わせすることも多かったね。
V: IPathとSatoriにはブランドイメージ的に自然に立ち返るという共通点があったよね。このようなブランドが同時期に台頭したのはどうしてだろう?
B: それはいい質問だね。時代が進むにつれていろんなブランドが生まれるのは必然だと思う。'80年代のスケートブランドの数は15~20くらいだったと思う。でも'90年代に突入して、'90年代終わりにはどんなブランドでも受け入れられる土壌が作られたと思うんだ。つまり似たようなブランドである必要がなくなったということ。オレたちはマッチョなアスリートでもプレッピーでもない。自然や地球を大切にするスケーターがシーンに登場するべき時期だったんだと思う。IPathとSatoriの間には、共通の仲間やライダーという大きな繋がりがあっただけでなく、意識や精神的な側面、ヨガやレゲエ、ベジタリアンフードに対する感謝の念、そしてデザインやグラフィック、感情におけるコネクションも確実に存在していたんだ。
V: これまでに日本で何度もアートショーを行っているよね。当時のことで何か印象に残っていることは?
B: そう、これまで何度も日本を訪れているね。日本のすべてのものに刺激を受けてきたよ。でも日本でできた仲間が一番大切だと言わざるを得ないね。日本の仲間、自然、言い伝え、そして温泉!!!。
V: Satoriはしばらくの活動休止を経て復活したよね。ブランドの復活を知ったときの気持ちは?
B: Satoriが復活すると聞いてうれしかった。今のスケートシーンにはSatoriのようなブランドが必要だ。最高のタイミングだと思う。
V: 今回、Satoriとのコラボが実現したわけだけど、そのきっかけは?
B: 前回、2019年11月に日本に行ったときに親友でBP Tradingを運営している(西林)ヒロシと一緒に遊んでいたら「Satoriが復活する」って言ってきて...。それでヒロシに、遊びでコラボウィールを出したいって言ったんだ...。それから何ヵ月も経ってからクレイグにもそのアイデアを伝えて実現した感じ。
V: 今回のコラボのために制作したアートワークについて聞かせて。
B: まずグラフィックには多くの素材を使った。自分のキャラクター、パターン、レタリングなどの要素を組み合わせて、頭の中で思い描くイメージに近づけていったんだ。瞑想するビッグフットとマンダラのパターンは絶対に入れたかった。というのも、これまでのSatoriのグラフィックを見ていると瞑想的な気分になるから。クルーザー用のソフトウィールには、祈りと賛美をするビッグフットが描かれていて、本質的にスケートが与えてくれる自由と動きの感覚を喜んでいるんだ。
V: これまでの活動を通して自分の作風が変わったと思うことは?
B: この12年の間に、自分の描いた絵をコンピュータに取り込んでプロダクトのためのグラフィックを作るという方法を少しずつ学んできた。しばらくの間はそればかりで絵を描くのをやめてしまっていたから、ある意味、自由でゆるやかなものから、調整されたカチッとしたものへと変わっていったと思う。でもそれも一周して、また'90年代の頃のスタイルに立ち戻っているような気がする。でも一番大切なことは、'94年から'21年まで描いてきたビッグフットのキャラクターが長い時間をかけて徐々に進化してきたということ。
V: では今も変わらないことは?
B: 今でも実際の紙にペンで描いたり、自分で作った木のオブジェに絵を描いたりしていること。茶色や緑色を使い、独自の方法で表現されたビッグフットのキャラクター、木、レタリングなど、さまざまな自然や魔法を描き続けていること。
V: インターネットやソーシャルメディアの普及で世界は近くなったけど、同時にすべてが速くなった。世界は超ハイテク化してIPathやSatoriが傾倒する自然から遠く離れているように感じる。現在の世の中について思うことは?
B: 数千年前、ほとんどの人類は、地球、星、天候、植物や動物といった自然と調和していた。でも人類は長い間、自然との調和から離れ、自分たちが自然に何をしているか考えすらしなかったと思う。今では自然のバランスの中で、ひとつひとつの行動がいかに重要であるかを理解している人も増えてきたと思う。みんなが地球についてもっと考え、地球上の植物や動物がいかに神聖でデリケートな存在であり、人類が利用するためだけのものではないことに気づくことを願っている。多くの人は可能な限りテクノロジーを駆使して自然と逆の方向に進み、宇宙に行ったり、ロボットになったりしたいと思っているようだけどね。母なる地球に勝るものはない。彼女を守り、彼女の声に耳を傾けなければならないということを人類が理解することを願っているよ。
V: では最後に今後の展望は?
B: 今は自然に身を置きながら創作し、将来的に自分のアートをさらに進化させていくための準備や整理をしているところ。絵、Tシャツのデザイン、彫刻、アパレル、プロダクト、ドローイング、音楽、アニメーション、壁画、グラフィティなど、毎日のようにいろんなアイデアを考えている。将来的には日本や行ったことのない場所に可能な限り旅するつもり。結局、創作という名の旅の終わりなき探求と魔法の発見こそがオレの人生なんだよ。
Bigfoot
@bigfootone | @satoriwheels
ニュージャージー出身。ビッグフットのキャラクターで知られる自然との調和に魅せられたアーティスト。IPathの共同設立者でもあり、自身のアートスタイルと親和性の高いSatoriからコラボウィールをリリースしたばかり。