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POLAR SKATE COの最新ビデオ『EVERYTHING IS NORMAL』の撮影ツアーに同行し、スケーティングだけでなく現場の雰囲気を写真に収めたフォトグラファーのCHANGSU。6年間ともに過ごしたPOLARクルーとの思い出を振り返る。
──CHANGSU

2024.07.11

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Portrait_Sirus Gahan
Archive photos_Changsu
Special thanks_Kukunochi

 

 

VHSMAG(以下V): 今回の『Everything is Normal』が完成するまでの6年間は結構すごいスケジュールでツアーに同行していたんだよね?

Changsu(以下C): そうですね。厳密に言うと全部じゃないんですけど。どうしても行けない日があったときは井関さんとか航ちゃん(林 航平)がスイッチしてくれたんですけど、9割くらいは同行させてもらったと思います。一番ヤバかったのは、42日間のツアーが1回あって…(笑)。ライダーは分散して来日するんですけど、オレとサイラス(・ガーン)と(柿谷)季輝はほぼ全流し。さすがに自分は最後らへんで熱が出て1日ホテルでダウンしました。10日前後ツアーしたらまた体力満タンのヤツらがやってくるみたいな流れで。めちゃくちゃ楽しかったけど、あれは痺れましたね(笑)。

期間が6年間くらいあったからみんなの人生とかも変わった

V: この6年で同行したツアーで印象的だった出来事は?

C: めっちゃくちゃいっぱいありすぎてひとつには絞れないけど…。Polarのツアー全体で考えたら、期間が6年間くらいあったからみんなの人生とかも変わったりとかしていて。子どもができた人とか、チームを離れちゃった人とか。途中でメインフィルマーもTAO(トール・ストローム)からサイラスに変わったりとか。(三本木)心とかローマン(・ゴンザレス)とかに子どもができていろいろ変わったけど、やっぱりそういうのが全部ちゃんと写真に残っていて。正直パッと思い出せないこともあるけど、写真を見返して思い出したりとかします。やっぱり変化しているものの経過を記録することが写真の特性のひとつだと思うし、そういうものが今回の写真集『Everything is Normal』に収録されているので、是非見てもらいたいです。

V: あの写真集はこの6年間で撮影した写真をまとめたもの?

C: あの写真集はサイラスと井関さんと航ちゃんと自分の写真で構成されていて、ロンドンのWASTE! STOREのジャック(・チャーリー・ミッチェル)がアートディレクターを務めました。エディットは絶対的に感性を信頼しているサイラス。僕は写真を投げただけで、彼らの感性を信じて「好きにやってください」って感じでお願いしました。上がってきたものを見て感じたのは、やっぱりただのツアードキュメンタリーとかライディングカットが並んでいるだけじゃなくて、各々のパーソナリティが感じられる作品になっているということ。日本が舞台となったわけだから、Kukunochi、季輝、心に対して意味のあるものが収録されているというか。時間の経過と成長、友情がテーマになっていたりだとか。自分は保育園の先生として働いていたときに仕事で子どもたちの写真を撮っていたんです。子どもたちの様子を写真に撮って親に見せるみたいな。そのときに意識していたのは、作り込まずにありのままの感じを伝えるということだったんです。それが自分のスナップ写真の原体験みたいな感じで、今もそのテイストがずっと残っていると思っていて。保育園で働いていたときに子どもたちを撮るような感じで、今もスケーターたちのビハインド・ザ・シーンみたいなものを無意識に撮っています。そういうライフスタイルの写真がいっぱい盛り込まれているから、より生々しい記録になっていると思います。ツアーのムードとか、彼らのノリとか、撮影時の苦悩とか、みんなで喜びを分かち合っている姿とか。1枚の写真で見るというよりか膨大なアーカイブを時間の経過の記録として見てもらえたらなと思っています。

 



 

V: たしかに演出した感じがないから嘘がないというか、現場の空気や感情が伝わってくると思う。

C: 逆に自分はそういうのしかできなくて。たとえば1枚で成立するようなハイクオリティで強いポートレート写真とかを撮ったりするのがあまり上手じゃなくて、自分は保育園で働いていたときの原体験から繋がるものでみんなに伝えることができたらな、と思っています。ポイントアンドシュート系のカメラでつねにシャッターを切りまくって量で成立させていくのが今のところ自分のスタイルなのかもしれません。クオリティよりも瞬間にプライオリティを置いています。

 



 

V: なるほど。ちなみにモエレ沼のダウンヒルについてはやっぱり聞かないといけないよね(笑)。20年くらい前にもフォトグラファーがあのダウンヒルで散って大怪我をしたことがあるのは知ってる?

C: 聞きました(笑)。あのダウンヒルをした時期は自分のセットアップが10インチくらいのデッキ、ワイドトラックにソフトウィールだったんです。「行けるかなー」みたいな坂をチョッカるのがブームで。ツアー中にやりたいタイミングでトライするのにハマっていたんですけど、実はモエレ沼をずっと狙っていて(笑)。北海道に行く前にもVHSMAGに上がっていたKP TOKYOとWHIMSYの北海道ツアーでアーロンがパワスラしながら降りている映像を観て「うわー、オレもこれ行きてー!」みたいな感じでイメトレしていたんですよ。それでPolarツアーで実際にモエレ沼に行ったんですけど、みんなと一緒に一番上まで上ったら想像以上のヤバさで。しかも自分はトラックをガッチリ締めるのを忘れていたんですよ。Polarのクルーが先に行ったんですけど「これヤバい! 抑えろ!」みたいな感じで彼らでさえ焦っていて。その前に自分は神奈川の有名なダウンヒルをメイクできていたから調子こいていたんですよね(笑)。そしたら坂の3分の2ぐらいでシェイクして制御不能になっちゃって。心から「ヤバくなったら草むらに逃げなよ」って言われていたんですけど、それすらできないほど制御不能で。吹っ飛んで鬼スラム。よく覚えてないんですけど、頭を打って、両肘、両膝、腰とかぐしゃぐしゃ。その後2日間ぐらいシュンとしていました。でもオスキー(オスカー・ローゼンバーグ)とかエミール(・ローレント)から「マリモ、リスペクト」って言ってもらえたから「散ってもメイクかな」って感じでした(笑)。

V: 今回の作品は三本木 心にとってPolar初のフルパートとなったんだよね。彼と過ごした6年で感じることは?

C: 最初のツアーは2017年でした。当時フロウからアマとして正式にチームに迎えられた直後で、その頃の心は自分のオリジナリティについて考え始めていた時期でした。というのもポールジャムやウォールライド、ノーコンプライのバリエーションとか、Polarのライダーとしてチームのカラーを体現するスキルは十分あったけど、彼は本当の意味で自分ならではの見せ方について悩んでいるという話を移動中のバンで話してくれたことを覚えています。つまりここでいうオリジナリティとは、自分をはっきりさせるということ。それから自分の源流であるサーフスタイルと元々持っていた素晴らしいフロウを掛け合わせた滑りが自分の強みであるということに気づいて、そうやって確立したスタイルが多くの人に認知されていったんだと思います。そういった彼のスタイルのルーツも今回のビデオでサイラスが掘り下げているので注目のポイントかもしれません。本作は心を中心に構成されることが割と序盤から決まっていました。しかもPolarで初のフルパートということもあって、正直かなりのプレッシャーがあったと思います。この6年間でプロスケーターになって、父親になって、撮影に対する向き合い方も見違えるほど変化しました。映像はもちろん、素晴らしい写真もたくさん残してくれたので是非チェックお願いします。

 


 

V: あと本作の撮影の途中で季輝が参加したよね。

C: 季輝と最初に会ったときは、昔のケビン・ロドリゲスを彷彿とさせるロングヘアーとChuck Taylor、板にPolarのアイコニックなハッピー・サッドのデザインが手書きでペイントされていて「こいつ本当にPolarが好きなんだなあ(笑)」っていうのが第一印象でした。チームでいうとエミールに印象が近くて、とにかくどこでもバリスケ。「スケート以外興味ないっす」くらいの勢いで滑りまくっていました。撮影も終わってみんなクタクタになって宿に着いて、寝る準備をしているのにエミールも季輝も震えがきてひとりで滑りに行っちゃうタイプ(笑)。彼との撮影で印象的だったのは、パートのエンダーでやったShibuya 14でのポップショービットテールグラブの撮影。かなりナーリーなスポットなんで「集中して数発で決めたいっす」って感じだったんですけど、結構苦戦して死闘は約2時間。完璧にメイクしたんですけど、もちろん踵も体もボロボロ。次の日は早朝から移動して姫路。「さすがに明日はスケート無理だろ。てか数日戦線離脱だろうな」って思ってたんですけど何事もなかったように着いた瞬間からバリスケ。デモが終わった後も気持ち良さそうにパークが閉まるまで滑りまくっていました(笑)。この6年で季輝やエミールみたいな新しいライダーがチームに加入しましたけど、そういった若いエナジーが加入するとチームに勢いが出るし、制作サイドにサイラスが参加したことでライダーだけでなくクリエイションにも新しい風が吹いたと思います。いい感じにチームの新陳代謝に成功したブランドだと感じました。

 


 

V: 本作のディレクターであるサイラスについて聞きたいんだけど、フォトグラファーとして彼と一緒に撮影していく中で感じたことは?

C: 今回のようなビデオプロジェクトでは基本的にフィルマーと連携して撮影していくんですけど、自分が今まで出会ったフィルマーの中でもかなり特別で面白い人でした。サイラスはイギリスのボーンマス芸術大学を卒業して映画製作の学士号を取得しているんです。学のないストリートオンリーで写真を学んだ自分にとって、アカデミックな文脈で表現を学んでいたサイラスの存在は刺激的だったし、かなりインスピレーションを受けました。スケートフィルミングのスキルも超絶で、HPXとXtreme Fisheyeの爆重セットアップをあり得ないフロントアングルの接近戦で鬼のようなフレーミングをしていて…。世界トップレベルのスキルに感動しましたね。さらにミディアムフォーマットのフィルムカメラ、35mmのフィルムカメラ、ポイントアンドシュートのフィルムカメラ、コンデジ、スーパー8、HPXとか、何種類ものカメラをオペレーションしながら朝から晩まで素材を撮りまくるという地獄のような仕事ぶりでした。そんな彼の人柄はめちゃくちゃ謙虚で親切。他人に対して理解しようとする姿勢、スケートボードへの愛もハンパじゃなかったです。自分は感性の部分でもめちゃくちゃ尊敬しているんですけど、今回のビデオは彼の作品であると同時にPolarというカンパニーへのクライアントワークでもあるわけです。その制約の中で自分のアプローチを絶妙に含みながらブランドの歴史や文脈に沿った作りになっていて。その塩梅もヤバかった。たとえば選曲においてもPolarの過去作の“Manhattan Days”で使用された曲を再定義して心のパートで使ったり。あとハイパーポップをスケートビデオで使ってる人を初めて見ました(笑)。スーパートリック連発の激ヤバビデオが日々ネットにアーカイブされている今は、みんな昔のようにきちんと作品にタッチしなくなってきていると思うんです。でも素晴らしいスケーティングに加えて、人間や人生みたいなものにも深く切り込む作風は本当に新鮮で素晴らしかったです。

 


 

V: 日本におけるPolarの成長をずっと写真に収めてきたわけだけど、振り返ってどう?

C: Polarのボスのポンタス(・アルヴ)はあらゆるベクトルでクオリティコントロールにストイックな人です。チーム構成、広告、映像作品、デザイン、マーケティングにブランディングとかすべてに妥協を許さない。そういったあらゆる分野で細部にまでこだわる人だからこそ、本作では日本のディストリビューターであるKukunochiのサポートが重要だったんじゃないかなと思います。ツアーのオーガナイズにまつわるあらゆる調整や手配はウルくんが手厚くやっていました。そんな多忙な中、自分のこともよく気にかけてくれてたことに感謝しかありません。ウルくん並びにKukunochiスタッフのみなさま、この場を借りて改めてありがとうございました!

 



写真家として独立して、写真で食えるようになったきっかけのひとつ

V: 全日程の9割もツアーに同行しただけに『Everything is Normal』は思い入れの強い作品だよね。完成した作品を観た感想は?

C: ツアーの初期はいわゆるツアービデオになるのかなって思っていたんですけど、大切に、慎重に、長編にしよう、コンセプチュアルな作品にしよう、みたいなノリになってきて。結局コロナもあってプロジェクトがストップした時期もあったんですけど足掛け6年。その6年の間にPolarのプロジェクトを通して自分の人生も変わりました。というのも自分がすべて撮った2回目のツアーの記事がThrasherで16ページの特集になったんです。それが写真家として独立して、写真で食えるようになったきっかけのひとつでもあったので。Polarは自分がすごく恩を感じているチームだから思い入れはひとしおです。そして新たにチームにジョインした季輝という新世代もいて。みんなにとってもただの作品じゃないと思うし、もちろん自分にとっても一生忘れられない作品になるなって完成する前から思っていたし。『Everything is Normal』は今後も人生の節々で見返すことになる作品だと思います。サイラスの感性も大好きだし、最高の作品でした。そして最後にこの旅で出会ったすべての方々、本当にありがとうございました!

 

Changsu
@changsu_____

1988年生まれ。福岡県出身、東京都在住。スケートのトリックだけでなく現場で生まれる空気感や感情などを切り取ることで定評のあるフォトグラファー。Polar『Everything is Normal』ではメインフォトグラファーとしてツアーに同行し、128ページにおよぶ同名タイトルのフォトブックにも参加。


2017年から2023年、Polarの6年間にわたる壮大なジャパンツアーを記録したフォトブック『Everything is Normal』。¥5,280
問い合わせ Kukunochi 045-325-7738 / www.kukunochi.com @kukunochi

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