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3人のスケーターに焦点を当てた『SPONSOR THEM VIDEO』が、IKBのスケートショップHIGHSOXから公開された。従来のユーモアを交えた作風とは一線を画し、今回はストレートなアプローチが光る。ディレクターのTKと、本プロジェクトを写真で支えたフォトグラファーの和栗に作品に込めた思いを聞いた。
──HIGHSOX / ハイソックス

2024.12.12

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Photos_Waguri

 

VHSMAG(以下V): まず『Sponsor Them Video』制作のきっかけを教えてください。

TK(以下TK): 今回のビデオは2023年の後半から撮り始めたんですけど、昨年も『WAITING』っていうビデオをHIGHSOXで出してて。それは今までのSketchy Life作品の延長という感じで、どっちかっていうと「スケボー楽しい!」っていうのを推した離れ技勝負っていうか、変化球系のビデオだったんです。今回みたいな直球の作品は過去に作ってきてなかったんですよね。でも澤田莉旺っていう素晴らしいスケーターがチームに入ることによって、直球勝負の作品を作りたいっていう気持ちが少しずつ出てきて。まずは莉旺とパートを作ろうっていう感じで話してたんです。それで昨年11月頃にIGを見てたら駒沢のランプで滑ってる動画がオススメに出てきて、それがめっちゃかっこよくて。連絡して撮影したのがケンケン(滑川絢斗)なんです。HIGHSOXのライダーになってもらいたくてパートを撮り始めたって感じです。今村怜也は和栗がChuulipの撮影に同行してて…。

WAGURI(以下W): 渋谷のステアに点字がついた後にノーリーフリップをメイクしたじゃないですか。最後にみんなでコンビニ前でいい気分で飲んでたときに怜也から「HIGHSOXに入りたいです」っていうアプローチをもらって。

V: じゃあケンケンと今村怜也は最近HIGHSOXに加入した感じだ。今回の作品はHIGHSOXの10周年に合わせたの?

TK: そうですね。ただ今の時代はとにかくペースが速いというか。本当は7月がお店の10周年だったんですけど間に合わなくて。でも最後にケツを決めて超追い込んだ感じです。怜也のハードフリップも試写会の2日前とかにメイクして。莉旺のラストトリックも3日前とか。

V: ライダーたちの魅力を引き出すために意識したことは?

TK: なるべく行きたいっていうところに連れて行こうっていう感じで動いてたかな。ライダーの希望をなるべく実現できるようにっていう。今の若い子たちの滑りって昔と全然違うというか。やる技を決めてからメイクまでの過程が短いんです。昔はまずオーリーして、50-50して、5-0してみたいな感じで段階を踏んでたじゃないですか。でも今は「オーリーできた、はいじゃあ次もう本番」みたいな。中間がないというか。だから逆に見極めもすごく早くて。とにかくスポットに行って、できなそうだったらもうすぐ次行ってみたいな感じでやってました。

W: ケンケンは本当にスムースすぎちゃって。写真もめちゃくちゃ撮れてたんで、ケンケンに関しては何も言うことがないです。莉旺は逆に大人数の撮影がダメですよね。

TK: そうだね。麻布も城南島も対マンで行ってて。意外とみんなお互い気を遣っちゃうっぽくて。ふたりで行くとアングルも限られてきちゃうし大変なんですけど。麻布のステアも「上から撮ってほしい」って言われたんですけど、「誰が通行人を見るんだよ」みたいな(笑)。怜也はとにかく完璧で全部超きれい。あれだけテクいことやってるとちょっとギコくなったりすると思うんですけど、それが本当になくて。しかもでかいのもやるんですごいなっていう感じですね。ケンケンは初パートなんで、出てない技だったら何でもやりなっていう感じで。とにかくどこに行っても撮れちゃうんですよね。それでまずケンケンのパートがほぼできてたんですよ。ラストトリックも3月とかに撮れてて。

V: 今回の撮影で印象的だったことは?

W:  HIGHSOXの作品をこうやって一緒に作るのは今回が初めてで。前回の『WAITING』のときも店番があったから。それで今回初めてフルで動かせてもらって、HIGHSOXのツアーにも初めて行けました。沖縄と大阪ツアーも楽しかったけど、やっぱラスト1週間の追い込みが衝撃的すぎて(笑)。

V: エンドクレジットの全裸のモーニングセッションは何だったの?

W: あれは沖縄です。毎朝起きるのが一番遅いヤツにやるっていう(笑)。

TK: あれは面白かったですね(笑)。でも沖縄のスポットは結構知ってると思ってたんですけど、自分が思ってるものよりサイズが大きいものじゃないとダメだったりとか。ステアやハンドレールも10段以上じゃないと反応しなかったり。昔すごく大きいと思ってたスポットに連れて行っても、自分も彼らとの撮影で目が肥えちゃってるんで「ちっちぇ」みたいな。だからスポットが難しかったですね。

W: 怜也と莉旺は「シンプルなトリックだとちょっと…」みたいな感じで前半は意外と撮れなくて。でも後半になるにつれて、シンプルな技もかっこいいんだっていうのに気づきだして。それで一気にいろいろ撮れていいスパイスになったというか。

TK: スポットもハマらないとちゃんと滑ってくれなかったりとか、キックアウトが早かったら技を選ぶ段階でやめたりとかっていうのもあったんですけど、とにかくみんな超がんばってたんで。みんなで本当にいいものにしようっていう感じの感覚がつねにずっとありましたね。

V: それをプレッシャーに感じることはなかった?

TK: 直球勝負のビデオって作ったことがなかったんで、試写会の前日まですげぇ緊張してました。どういう風に評価してもらえるのかがわかんないというか。今までは自分でビデオの面白いところを強制的に作ってたというか。笑いどころやギャグを突っ込んでた感じだったんで。それが今回はなしでスケートでの勝負。だから緊張しちゃいましたね。本当に大丈夫かなって。でもとにかく3人ともヤバいんで。しかも3者3様で、まったく別のスタイルでそれぞれの良さがあるっていうのがみんなにわかってもらえれば。

V: TK&和栗のコンビで動いてどうだったの?

W: 沖縄ツアーではかなりTKさんに任せっきりで、ライダーと一緒に遊んじゃってたんですよ。僕はライダーと仲良くなって普通に遊んでて、TKさんにハードな仕事を任す形になってて。それでTKさんに「オレひとりでは無理だ」って言われて。

TK: ブチ切れたっすね。なんか1対4みたいな状況になってたんですよ。和栗もHIGHSOXのスタッフだし、オレ的には進行を一緒に手伝ってほしかった。「一緒にスポット選んだり考えたりしてくれ。スポットのピン1個でも保存したのか?」って。「すいません、してないです」って涙目になってて(笑)。若い子たちをオレらが連れて行くっていう立場なんで、うちらが引っ張って行かないとダメなんで。でもそこから意識を改善してくれて、頼りになるし率先して動いてくれるようになって一体感も出ました。オレもそっちの輪にもう少し近づけて良かったです。それ故の和栗の涙だったんじゃないのかなって思ってるんですけど。超えた壁が結構あったから、その達成感もあったのかなって。

V: 試写会での涙ね。ちなみに和栗は上映後に感極まって泣いたんだよね(笑)。

W: 思い出すと今も泣きそうなんですけどね。

TK: やっぱり店も止めずにすべてを動かしていくってことをしなきゃいけなくて。ただ撮影だけをしてればいいっていう状況だったら、たぶんこの感動はなかっただろうとは思うんです。仕入れをして、商品の写真を撮って、靴を出荷して。休みのない状況のなかで形にできたっていうのがとてつもないオレら的な達成感に繋がったのかな。

W: ライダーの成長が見れたのもでかいっすよね。僕も徐々に成長したし(笑)。

V: ではそれぞれのラストトリックについて聞かせてください。まずはケンケンから。

TK: 最初は莉旺がノーリヒールでレールオーバーインしようとしてたんですよね。ケンケンも連れて行ったら「50-50できるかもしれないです」みたいな感じでぽちぽち歩きながらやり始めて。一発目に入るまで時間はかかったんですけど、いきなり入ったらキンクくらいまで流しちゃって。どこに降りていいかわからない感じだったんですよね。ずっとフラット着地みたいになってて。だから50-50をかけた瞬間に降りたほうがいいっていう流れをみんなで作ったら、数回惜しいのがあって突然バコーンって乗った感じですね。感動しましたね、あれは。

 

V: では怜也は?

TK: あれも実は莉旺が行きたいって言ったスポットで。でも行ったら想像以上にでかくて、しかも想像以上の山奥なんですよ。さらにインもアウトもワンオーリーが必要なんですよね。だから思ってたよりも大変なんですよ。100mくらい上からスピードつけて、4方向から車もやってくる感じだから、山彦みたいな声で「い〜よ〜!」とか叫んで(笑)。時間がかかりましたね。

 

V: では莉旺のフロントフリップ。あのスポットは池袋ローカルにとって特別な場所なんでしょ?

TK: 一応8年ぐらい前にHIGHSOXのライダーのムッツが飛ぼうとしたんです。発車台を作って最高のお膳だてをして、みんなで応援したんですけど、乗りゴケとかも全然なくて。もう空中分解するだけみたいな。ムッツはいまだにやりたいって言ってたんですよね。でもさすがに海外からスケーターがいっぱい来るようになってて、オレら以外の人にやられちゃうっていうのはどうしても許せない。池袋のローカルスポットで毎日のように見てるのに、違う人がいきなり飛んじゃったみたいな。それだけは避けたい。昔は今と違ってダブルセットだったんですけど、そのときはイッセイ・ユミバが最後に飛んじゃって。「池袋のローカルじゃなく外タレに飛ばれた!」みたいな。だから今回は絶対に自分らがやりたいっていうのはずっとありました。それで莉旺に「どう?」ってずっと言ってたら「たぶんイケるっすよ」みたいな。オーリーは3発でメイク。オーリーすら出てなかった場所なんで「マジで」って…。それでフリップを5回くらいトライしたんですよね。そしたらフロントフリップのほうがイケるかもみたいな感じになって、フリップもメイクせずにフロントフリップをやり始めたんですよ。それが初日。

W: 初日は雨が降ったり止んだりでリズムがうまく作れなくて。ちょっと時間が早かったから人が少し多かったんですよね。

TK: 2回目はキックアウト。信号をちゃんと待って万全の状態、100%絶対OKっていう状態でトライするんで時間がかかりました。信号を1回見送ると10分に1トライとかのペースになることもあるから。そんな集中力が必要なプレッシャーのなかで通報されて終了。それで最後、今日できなかったら試写会の前日に再トライっていうタイミングで、KINARIのナオヤンとか沖縄のヘドロマン、鯨井さんも手伝いに来てくれて。それまで1回も乗りゴケとかも何にもないんですよ。テールを叩いて、ステアを全越えはするけど、板は足元にないみたいな。でも直感的に、乗るときは「一発で乗るだろう」っていうか、板が足元に来た瞬間待ちだと思ってたんですよ。とてつもない集中力をみんなで研ぎ澄まして。あのステアはアプローチの距離とステアの長さがミスマッチすぎるんですよ。なんか来そうだなっていう瞬間が3回くらいあって「これたぶんイケるで」みたいな感じでナオヤンも声をかけたら突然パコーンって来て。着地もギリギリだったんですけど耐え抜いて「うわ〜!」って感じですね。乗りゴケなしの1発でメイク。もう奇跡でしたね。

W: 僕は過ぎ去ったところまでしか見られてないです。板をキャッチする瞬間をレンズ越しに狙ってずっと待ち構えてたんで。乗ったか乗ってないかわからなくて、リオが過ぎ去った瞬間で「あれ? 乗ったのかな?」って思って見たら…「あ、進んでる〜」って(笑)。

TK: 発射台を使わずランニングプッシュであれをメイクしたことで、あのスポットの難易度をめちゃくちゃ上げたと思うんですよね。とりあえず莉旺が池袋の代表としてやってくれたんじゃねえかなって。ラストトリックのひとつ前の麻布のステアをメイクしたカットのときに「帰ろう」って言ってるんですけど、あれも映像的に最後に池袋に帰ってくるっていう構成にしたんですよ。「オレらのホームはここなんだよ」っていう気持ちがずっとあるんで。試写会を渋谷のでかい場所でやるっていう憧れはあるんですけど、でもまあそういうのじゃねえなっていう。やっぱりローカルショップとして、自分たちの場所を高めていくっていうことをしたくて。

 

どこよりもすごいスケートショップのビデオを作ろうっていう感覚でやった

V: ではHIGHSOXというスケートショップとはどんな存在?

TK: やっぱりいつまでも憧れの存在でいたいって思うんですよ。「スケートショップの店員ってかっこいいな」とか「なんかすごいな」とか、小さい頃にスケートショップに行ったときの感覚を今でも覚えてて。そうあり続けられるショップでいたいなって思ってます。そういう思いで、どこよりもすごいスケートショップのビデオを作ろうっていう感覚でやった感じです。

V: では『SPONSOR THEM VIDEO』というタイトルに込めたメッセージは?

TK: タイトルはやっぱり難しくて…。コンセプトを設けたいっていうのがつねにあるんですけど、前回の『WAITING』は「何かをみんなで待ってる」っていうことで、それに向かって進んでいけばいいっていう感じでした。今はSNSでの活躍が評価されることが普通になってると思うんですけど、やっぱり根底にあるのはビデオパートだと思ってて。あと自分たちの力だけではこの子たちを思う存分に活躍させるってことができないというのもあって。海外に連れてってあげたいけど限界があるし。オレらだけの力じゃなくてもっといろんな人にも協力してほしい、応援してほしい、という感じでつけました。わかりづらくなくていいかなと思って。なんかカッコつけてHIGHSOXが青だから『BLUE』とかでもいいですけど、そういうのじゃねえなみたいな。やっぱり伝えたいのは、こいつらをスポンサーしてもっと活躍できる場を設けたいっていうのがあったんで。

V: その思いを聞いて和栗はどう思ってるの?

W: 僕も3人にチャンスを掴んでほしいっていうのが大前提だったんで、逆にわかりやすすぎて「まあ、いいな」って思ってます。

TK: モーショングラフィックは鯨井さんが作ってくれたんですけど、あれは商品タグなんですよ。みんなに3人を買ってくれっていうのがコンセプトです。

W: オークションですね。人身売買。

V: ではHIGHSOXの10年間の歩みを振り返って思うことは?

TK: いやー、長いようで短いようで…。やっぱり長かったのかな。まあここまでやっと来れたなっていう感じもあるし。MxMxMの社長に「スケボーショップやらない?」って言われたところから始まったHIGHSOXだったんですけど、だんだん責任感も出てきて自分の店だって思えるようになって。スタッフも増えたり、スケートボードも波があるし、その波を止めないようにやりたいことができる場をどんどん作っていこうっていうふうに動いて。いろいろありすぎて言葉にはできないですけど、スタッフにも恵まれて。感動しますね。

V: 和栗は?

W: ふざけてしかないです…。

V: でもそれもHIGHSOXの色だよね。

TK: そうなんですよね。そのバランスを大切にはしてますね。基本的に楽しいスケボーっていうのを目標にしてるし、楽しいお店っていうのが根底にはあるんで。ふざけてばっかりだけど、たまにはちゃんと真面目にスケボーやってんだぜっていうのが今回のビデオかなっていう感じですね。

W: 真面目に接客すると「意外と普通なんですね」ってお客さんに言われます。

V: では今回は『SPONSOR THEM VIDEO』ということで、ブランドに伝えたいことがあれば。

TK: とにかくライダーにきっかけを作りたいというか、オレらができることってたぶんそこまでだと思います。ブランドには「今のままで大丈夫? こんなにがんばってるヤツがいるんだよ」って言いたいです。金をもらわなくてもこれだけヤベェことやってるヤツがいるんだから、フックアップしてあげてくれって感じですね。

W: 僕はライダーが「HIGHSOXに入ってよかった」って思えたらOKですね。さらに言えば、HIGHSOXに誘ったけど断った子たちが「入っとけばよかった〜」って思ってたらいいですね(笑)。

TK: オレらはこれからも動き続けるんで。次はもっといいものを作りたいと思ってるし、まだまだできると思ってます。みんなを驚かせてやるっていう感じですね。見てろよって。オレは宇宙一のスケートショップを目指してるんで。どんどん上を見ていかないと。高い目標を持って、低いステップをひとつずつクリアしていく感じだと思うんです。とにかく宇宙一のスケートショップになりたいってずっと思ってるんで。これからもがんばります!

 

HIGHSOX
@highsoxskateboards

今年10周年を迎えた池袋のスケートコミュニティのハブ的存在のスケートショップ。目指すは宇宙一。

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