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DCによる新作モデルMETRICの初カラーウェイに大抜擢された本郷兄弟。公開されたばかりのWパートと歴史的快挙の裏側を語る。
──HONGO BROTHERS / 本郷真太郎&本郷真輝

2022.10.20

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Photos_Mike Heikkila
Special thanks_DC Japan

VHSMAG(以下V): まず自分たちのカラーウェイがリリースされた経緯からお願いします。

本郷真太郎(以下S): チームマネージャーのジミー(・アストルフォード)から連絡があった感じです。Metricっていう新しいモデルの初のカラーウェイをオレと真輝の兄弟で出したいって言ってくれて。それで「もちろん」って。断る理由なんてないんで(笑)。

本郷真輝(以下M): オレはひとりでアメリカに行ったときにサンディエゴのエンシニータスのパークで滑ってたんですよ。そのときにジミーとジョン(・ガードナー)からMetricのブラックのサンプルをテストライド用に渡されて。それで兄弟シューズを出すことになったんですけど…。オレはアメリカにいて真ちゃんは日本だったから一緒にいなかったんです。だからお互い別々にオファーされました。

S: そうだ。離れてたからちゃんと話せずで。お互いに使いたいカラーがあって、写真を送り合ったりしてメッセージしたのは覚えてる。

M: しかもSK8MAFIAのツアー中でホーミーの裏庭に泊めさせてもらってるときで。フィルマーのパソコンを借りて色をいじったりしてましたね。

V: 結局カラーとかデザインはどういうふうに決めたの?

S&M: それは…(笑)。

S: 兄弟シューズは最初で最後だろうから思い切った色を使いたくて。それで理由もなくぱっと出てきたのが青と黄色だったんです。最初は真輝が「いや〜…これはヤバいんじゃない?」みたいな感じだったんですけど(笑)。

M: オレはメインが青で白のグラデーションが入ってるうみかぜカラーとかにしたかったんですよ。

S: あとは赤と白の日本カラーっていう案もあったり。でも今回は青と黄の2色にしようってオレが強く押して説得した感じでした(笑)。

M: オレが完全に折れました。

V: でも噂だとそのカラーは横須賀線の電車が青と黄色っていうのが由縁じゃないの?

S: それは知り合いが後から教えてくれたんですよ。

M: オレたち何も知らなくて(笑)。

S: あとオレたちの友達から「お父さんのペンキ屋のステッカーと同じ色じゃん」って言われて。お父さんがやってたHappy Paintのステッカーが青地に黄色の文字だったんですよ。

M: それを考えてたら、横須賀にあったスケートショップのdOUBLE fAITHの初期のステッカーのカラーも同じなんですよ。

S: たぶん潜在的に青と黄色が頭にあったのかもしれないですね。

V: なるほど。カラーは弟が兄を立てた感じだ(笑)。ヒールに入ってる家紋も特徴的だよね。

S: あれはブランドン(・ターナー)に相談したときに「ファミリーシンボルを入れたら?」ってアイデアをもらったんですよ。それでお父さんに送ってもらった家紋をそのままデザインに使ってもらいました。

V: ちなみにタンに入ってる「HONGO BROS」のロゴは真太郎くんがデザインしたんだよね?

S: 当時はアルファベットの文字を自分の字体で作ったりしてたんですよ。その文字でHONGO BROSって書いたものを送ったら意外と反応が良くて使ってもらった感じです。

V: 弟的には「なんで兄貴ばっかり」とか思わなかったの?

M: いや、オレは思ってましたよ。でもふたりでひとつの靴だから、両方の意見を均等に取り入れるのは難しい話だし。オレは「HONGO BROS」の字体とか何も考えてなかったし。でも真ちゃんは考えてたから。それで全部持ってかれちゃいました(笑)。今はすごく気に入ってます。

S: でも実物を見る前にジミーから画像が送られてきたんですよ。それを初めて見たときは「やっちまった〜! 結構これヤバいかも」って思いましたけど(笑)。色が派手だし。でも実際に見て履いたら意外と心地良くて。あとゴツくないし、軽いし柔らかいし。すごく調子いいですね。

M: 色に関して言えば灰色が入ってるから。履いて上から見ると派手な感じがしないんですよ。オレも最初画像を見たときは「ヤベ!」って思ったんですけど…。

S: そのときは「真輝ゴメン」って感じでした(笑)。

 

V: (笑)。シューズのリリースに合わせてプロモビデオが公開されたよね。

M: あれはCMみたいな感じで。本当は靴が出ると同時に自分たちのパートも出せれば一番良かったんですけどオレがまだ撮りたくて。それで公開を延ばしてもらったんですけど、真ちゃんはほとんど撮り終えてたよね?

S: うん、オレは結構長い間撮ってたから。

V: 先に公開されたプロモビデオはすべてSFで撮影したんだよね?

S: そうですね。あれはSFのザック・チャンバリンに撮ってもらいました。ザックもDCもオレたちも一緒に仕事をするのは初めてで。

M: ザックがいっぱいスポットを紹介してくれて。いろいろ連れ回してくれたんですよ。ザックは「まだまだスポットあるよ! 夜でも行こうぜ」って感じだったんですけど、チーマネのジョン・ガードナーは帰りたそうにしてました(笑)。

V: 兄弟ということでシンクロするシーンが多かったでしょ。あれは大変じゃなかった?

S: いや、そういうカットが欲しいってことだったんで、ふたりでスポットで話してやった感じです。

M: いつもそうやって遊んでたからそんなに難しいことじゃないんですよ。完全にナチュラルな感じです。

V: シンクロ以外にもミラーラインっていうか、ふたりともレッジでブラントからステアで180ヒールのラインをやってるよね。

S: あれは真輝が先にトライしてたんですよ。オレもあの場所で1カット欲しかったけど、いいアイデアが思いつかなくて。それで真輝のラインに合わせてトライした感じでした。

 





V: ちなみに兄弟喧嘩はなかったの?

M: 撮影中はまったくないですけど、プライベートで意見がぶつかって喧嘩になることはありました。

S: くだらないことが原因ですけどね。前に一緒に住んでた頃は家からうみかぜまでプッシュで5分くらいなんですけど、その間に言い合いになって。

M: うみかぜに向かう途中でオレがヘッドホンしながらプッシュしてたんですけど、交差点に来た車をスレスレで交わしたのを見た真ちゃんに「マジ危ないからやめろよ」って言われて。なんかムカついて飲んでた水をぶっかけちゃったんですよ。

S: ふたりで取っ組み合いになってたら、知らないおじさんが「やめなさい、やめなさい」って(笑)。

M: それでふたりの顔を見たら「なんだ兄弟喧嘩かよ」みたいな(笑)。

V: たしかに顔を見たらすぐに兄弟ってわかるね(笑)。

M: 撮影でアメリカにいるときもずっと同じ部屋にいるから説教されることが多くて。「オマエは何でこうなんだ」って(笑)。今回のプロモビデオの撮影のために1ヵ月アメリカに行ったんですけど、出発する前日に「日本に帰ってきたら家を出てもらうから」って言われて(笑)。それを告げられて一緒にアメリカに行くみたいな。

S: オレがかなりストレスになってて、1週間くらい口を聞いてなかったんですよ。シカト状態で。まあ、すぐに出てもらうのもアレだから1ヵ月家を離れてる間に真輝もじっくり考える時間があると思って。

V: そんな険悪な感じで一緒にアメリカに行ったの?

S: オレは結構スッキリしましたけど。そんな引きずった感じじゃなかったです。

M: オレは「ヤバい! これからどうしよう」ってなってましたね(笑)。それで帰国して本当に家を出ましたよ。最初は友達の家に泊めさせてもらったり実家に帰ったりしながら物件を探しました。ちょうど18歳になったばかりで成人年齢が引き下げられたときだったんですよ。

S: それまでは実家でもずっと一緒だったから。そろそろ親離れじゃないけど、兄離れしてもいいんじゃないかって。結局、真輝もやればできるし。

M: 今は一番いい距離感ですね。滑るときだけ一緒で。結果オーライです。

 

こういう形でパートを出せるのは兄弟ならでは

V: では今回のWパートについて。撮影はどんな感じだったの?

M: アメリカでは一緒に撮ってましたけど、日本では別々で動くことが多かったです。

V: お互いどんなクリップが撮れてるか把握してたの?

S: 日本で撮ったフッテージは真輝と共有しました。アメリカで撮ったものは持ってなかったから見せてないですけど。

V: じゃあ今回はWパートということで、お互いライバル意識みたいなものはあった?

S: いや、あまり意識してなかったかも。すでに撮り溜めたフッテージが結構あって、それを組み合わせる感じだったし。

M: 編集もクリス・レイに頼むってことだったから、どんなパートになるのかわからなかったし。ひとりずつの構成になるのかミックスされるのか。

S: とりあえず撮りまくったものを全部渡して料理してもらった感じです。

V: パートを観た感想はどうだったの?

S: ふたりがミックスしてて、知らない人が観たら全部同一人物って思うんじゃないかって。「これどっち?」っていう議論が出そうな感じがしたけど、それはそれで何度も観返してくれるかなって。

M: オレ的にはひとりずつのパートが良かったですけどね。どっちがどっちかわからないっていうのはあまり好きじゃなくて。「オレはオレだ」っていうのが強いんで(笑)。でもこういう形でパートを出せるのは兄弟ならではだから。そういう意味ではいいなって思います。

V: シルエットは似ててもスケートスタイルが違うから。スケーターならわかるよ。ラストトリックに関しても編集するクリス・レイ次第になるわけだよね。どっちがラストトリックを飾るのか意識した?

S: ん〜…。オレ的にはあれが来るんじゃないかって思ってたかな(笑)。真輝はどうだったの?

M: 「持ってかれた〜! ヤベ〜マジか〜」って(笑)。

S: 「やっぱこう来るっしょ」ってオレは思ってましたね(笑)。Thrasherのコンテンツで掲載されてから映像が出てなかったし、そういうのも含めてラストトリックになるんじゃないかって。でもラストトリックが一番ヤバいって感じでもなく、パートの途中にもいいのがいっぱいあったし。真輝もヤバかったから。

V: お互いどのクリップがヤバいと思った?

M: それはもうラストトリックは特に男気っすね。帽子も飛ばして「ハー」みたいな。

S: あれはブランドンが見せてくれたんですよ。「あのスポットは昔からあるけど誰も手をつけてない」って。それでスポットを見たら「いや、これは…」って(笑)。でも本気で行けばできるかもって思ったんですよ。それで後日トライしたんですけど、テールを叩いて逃げるっていうのをずっとしてて。すごいストレスになっちゃって、板を地面にぶん投げたんですよ。普段はそういうことしないんですけど。そしたら「ポン」って肩が外れちゃって(笑)。

V: マジで!?

S: うずくまって悶絶してたら、みんなが「大丈夫。そういうときもあるさ」みたいな感じで肩が外れてるのわかってなくて(笑)。それで1週間後に再トライ。またずっとできなかったんですけど、1回本気で乗りに行ったらそのまま流れてメイクできたんですよ。スラムもなしで。それで帽子を取って…。

V: 感無量だね(笑)。では兄から弟へ、ヤバかったトリックは?

S: Bs 5-0からSsクルックのフェイキーマニーの180アウト。あの掛け換えはめっちゃやりたかったから。さらにマニュアルで上を行かれたから「あ〜ヤラれた」って思いました。

M: あのスポットは角が丸いから掛け換え系がやりやすいんですよ。だから掛け換えはスムースに行けたんですけど、マニュアルがめっちゃ難しくて。1時間近くトライして何回も「マジで無理だ」って思って2リットルの水も飲み干して…。それでやっとできたって感じでした。途中で心が折れそうになりました。ちなみにあれがパートの中で一番新しいフッテージです。

V: パートを振り返って今思うことは?

M: そうですね、オレはもうちょいハンマーをやりたかったな。ステア系がほとんど使われてなかったんですよ。ステアもハンドレールもできるから。次はそういう映像も出したいですね。

S: 今回のパートが3分半くらいで、使われてない映像がふたりで6分くらいあったんで。もしかしたら他のプロジェクト用にキープしてるのかもしれないです。

V: シューズ、プロモビデオとWパートがリリース。今の心境は? かなりの快挙であることは実感できてる?

S: そう言われたら「よくやったな」とは思いますけど…。

M: でもオレはこれまでちゃんとしたパートをひとつも残してないのに靴が出ちゃった感じなんで…。本当はいろいろ映像を出してから靴のオファーが来るのが常識だと思ってたんですけど…。すごくうれしいけど「まだまだなのにな」って自分では思ったりして。だからこれをスタートとして考えることができればいいなって思ってます。これから自分ができるベストのパートを残したいですね。

S: でもこの後、SK8MAFIAからパートが公開されてみんな納得するんじゃないかな。

M: ちなみにオレはおじいちゃんとおばあちゃんに靴を渡しに行きました。「神棚に飾るよ」って言ってました(笑)。

S: お父さんのペンキ屋のステッカーの色とか家紋とか。家族にちょっとした恩返しができたかなって思います。

V: では最後に、お互いひと言ずつ声をかけ合って締めますか。

M: え〜(笑)。まあ…もっとひとりで動いて、いろんなところに行って、いろんな経験を積んで、また一緒に動きたいなって思います。

S: 真輝から本当にいい影響をもらってるから。これからもよろしく(握手)。

 

Shintaro Hongo @shintaro_hongo
Masaki Hongo @masakihongo_

神奈川県出身。横須賀の四天王として知られる最強兄弟。クリエイティビティとテクニカリティを武器に世界に羽ばたく実力派。

 

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