DGKより公開されたマーキース・ヘンリーの“BEATBOX”パート。ハイレベルなテクニカリティで繰り出すコンボトリックで構成された作品と進行中のNEWプロジェクトについて語ってもらった。
──MARQUISE HENRY
[ JAPANESE / ENGLISH ]
Photos courtesy of DGK
Special thanks_Charlie Trading
VHSMAG(以下V): 今回は時間ありがとう。最近はどんな感じ?
マーキース・ヘンリー(以下M): 最近はチルな感じだね。スケートは変わらずしてるけど。New Balance NumericのNEWカラーウェイのプロジェクトを進めてるところ。ガキの頃のホームスポットだったシェイフィハイスクールで撮影してるんだ。付き合いの長いホーミーたちも参加してくれてる。そのビデオを来年のどこかのタイミングで公開できればって感じかな。
V: シェイフィがホームスポットなんだ? あそこはいろんな有名プロが滑りに来てたよね。なかでも影響を受けたのは?
M: そうだね。シェイフィで見たスケーターの影響はでかい。ガショーン・モズリー、ジェームス・クレイグ、リチャード・マルダー、ジョーイ・サリエル、クリス・コール…。 これまでヤツらのとんでもないトリックをたくさん見てきた。当時はまだ14歳か15歳だったと思う。シェイフィで見たヤツらがオレのスケートや人生に大きな影響を与えたのは間違いないね。
V: 今もよくレッジを攻めてるもんね。レッジ天国のシェイフィが現在のマーキースのスタイルをつくったって感じだね。
M: そう。イーストコーストのスケーターの影響も受けてるけどね。スティービー(・ウィリアムス)や(ジョシュ・)ケイリス…影響されたスケーターを挙げたらキリがない。好きなスケーターがたくさんいるからね。わかるだろ? いろんなスケーターからいろんな影響を受けてる。
V: LAの新型コロナの状況はどうなの? ロックダウンは終わったの?
M: 徐々に街が動き出してる感じかな。ほとんどの店や会社は動いてるけど、どこに行くにもマスク着用が義務付けられてる。ダウンタウンは特にクレイジー。店がまだ閉まってたり、窓やドアが板で塞がれてたり。でもほとんどの店が営業し始めてるかな。
V: じゃあ自宅にこもってる感じじゃないね。
M: 自宅待機を強要されてもオレは無理だね。外に出ないと。マジで。
V: DGKから“Beatbox”パートが公開されたね。新型コロナの騒動のなかで撮影したの?
M: 実は半年ほど前に完成してたんだ。昨年ずっと撮影してたから。フィルマーの入れ替わりがあったから撮影のタイミングを合わせるのが大変だった。
V: 海外で撮影するというよりも、今回は地元LAのスポットが多いね。
M: そう。だから結構難しかったんだ。LAのスポットはいろんなスケーターが攻めまくってるから。でもなんとかやりきった。同じスポットに何度も通ってやりたいことを形にして、ただひたすら撮影し続けた感じ。
V: パートを撮るときはやりたいトリックをリストアップするタイプ? それともノリで行くタイプ?
M: ある程度撮りたいトリックのリストは頭にある。過去にやったことのあるトリックにヴァリエーションを加えたり。もちろんまったくやったことのない新しいトリックをトライすることもある。あとはやるだけだね。結果は自分次第。苦戦することもある。でもそうだね、特定のトリックとスポットは頭の中にある。
V: お気に入りのビデオパートは?
M: 『The DC Video』のスティービー。『Mouse』のキーナン・ミルトン。『Yeah Right!』のエリック・コストン。『Trilogy』のカリーム・キャンベル。『Video Days』のガイ・マリアーノ…これもキリがないね。
V: Channel Liveのトラックを使ったのも良かったね。懐かしい'90年代の出来事を思い出したよ。
M: あれはワイルドなトラックだよね。ちょっと前に聴いたんだけど、「ヤベぇ。スケートに合う」って思った。パワフルなトラックだから、オレのスケートスタイルにも合ってると思うんだ。'90年代にスケートをして育ったから辻褄も合うし。完璧だね。
V: あのパートで一番気に入ってるトリックは?
M: ラストトリック。あのクリップを撮るために3、4回通ったから。あれはマジで大変だった。
V: 惜しかったけど撮れなかったトリックは?
M: 何個かあるね。ハンドレールでノーリーヒールからのクルックスをトライしてたんだ…。それも結構高いレール。惜しいところまでいったんだけどメイクできなかった。次のビデオプロジェクトで仕留めたい。他にもフェイキートレフリップからのフロントノーズもトライしたんだけど…これも無理だった。
V: ポップシャヴィットからのノーズグラインドのノーリーヒールアウトは? 後ろで仲間が大興奮してたね。
M: それも気に入ってるトリックのひとつだね。あそこにも3、4回通ったんだ。後ろに映ってるのは毎回オレに付き合ってくれたホーミー。メイクしたときはマジで興奮したよ。「一丁上がり! 次」ってね。しかもあのトリックはやったことがなかったんだ。ノーリーフリップアウトは他のパートで撮ったことがあったから、今回はそれに捻りを加えた感じ。上手くいってよかった。さらに言うと、メイクした1週間後にあのスポットがなくなっちゃってね。
V: いつまでもあると思うな、親とスポット。できるときにやらないとね。
M: 間違いない。だからあれがあのスポットのラストトリック。
V: パートが無事に公開された心境は?
M: うれしいよ。達成感もある。プロジェクトがひとつ終わった感じだね。やっとみんなに見せられたからいい感じ。でも今はもうNew Balance Numericのプロジェクトに集中してるから。特に今はおかしな時代だからやることをちゃんとやっとかないと。
V: New Balance Numericといえば、マーキースのモデルのNM420だよね。
M: あれは420っていうランニングシューズのリメイク版なんだ。スケートで履けるように420をアップグレードしてもらったんだけど、どちらかと言えばまだランニングシューズでNumericのスケートラインには入ってなかったんだ。とにかくそれでずっと滑ってたんだけど、「ずっとこのモデルを履きたいからNumericのラインで出せないか?」ってリーヴァイ(・ブラウン)とセバスチャン(・パーマー)に頼んだんだ。そこからアウトソールの型を3つほど作ってもらってベストなものを選んだ感じ。そうやって今のモデルの形になったんだ。毎回カラーウェイが出る度にオレをプロモーションに起用してくれてキャンペーンを行ってる。そしてさっき話したシェイフィのプロジェクトもこのモデルのNEWカラーウェイのキャンペーンってわけ。シェイフィの歴史と当時のオレのスケートライフがテーマになってる。
V: 楽しみだね。
M: ドープな仕上がりになると思う。ホミーもたくさん協力してくれたから。ヤバいことになると思う。
V: ちなみにあのモデルは本革じゃなくて合成スエードを使ってるよね。
M: そうそう。素材についてまったく気にしてなかったんだけど、ヴィーガンの人たちから「最高だ!」ってたくさんメッセージが届いたんだ。「ああ、なるほどね」って思った。いろんな人に気に入ってもらえてうれしい。
V: 意図的に合成スエードを使ったのかと思った。ヴィーガンってわけじゃないんだね。
M: 違うね。できるだけ肉は食べないようにしてるけど。魚は食べるけど、牛、羊、豚とかは控えてる。
V: というわけでDGKのパートが公開されてNew Balance Numericのプロジェクトも進行中。それ以外は?
M: 36FIVEっていうアパレルブランドを始めるんだ。ギアもすでに完成して家にすべて揃ってる。パンツ、ショーツ、キャップとか。これをまとめて数ヵ月後には正式にローンチしたいね。
V: 生産的に動きまくってるね。
M: そうするようにしてる。動き続けないと。だから旅も好きなんだ。ずっと何かしらしとかないと気が済まない。知らない場所で新しい文化や人と出会うのも最高だし。近いうちに日本にも行ければいいね。
V: じゃあ待ってるよ。改めて時間作ってくれてありがとうね。
M: もちろん。ピース。
Marquise Henry
@marquisehenry
1985年生まれ、カリフォルニア州インランドエンパイア出身。フリップイン・フリップアウトを駆使したテクニカルトリックに定評あり。DGKやNew Balance Numericの看板プロとして活動中。