フロウあふれる自由なスケーティングで注目を集めるローワン・ゾリラ。VANSから自身初となるシグネチャーモデル、ROWAN PROをリリースしたタイミングでクイックインタビューを敢行。
──ROWAN ZORILLA
[ JAPANESE / ENGLISH ]
Special thanks_Vans
VHSMAG(以下V): 初めて履いたVansは?
ローワン・ゾリラ(以下R): 難しい質問だね。まったく記憶にないね…。というのもカリフォルニアで育ったらみんなVansを履いているから。物心がつく前から両親も履いていたし。でもスケートで言えば、ずっとHalf Cabを履いていた。3歳の頃からAuthenticやEraは履いていたと思うけどね。
V: カリフォルニアって感じだね。ではVansに加入した経緯は? 『Propeller』がリリースされたのが2015年だからその数年前?
R: そうだね。たぶん2012年か2013年頃かな。その頃にフロウライダーになったんだ。当時のライダーのテイラー・スミスがチームマネージャーのジェイミー・ハートに口を利いてくれたのがきっかけ。それでジェイミーから連絡が来たってわけ。
V: 『Propeller』は特別なプロジェクトだったと思うけど、振り返ってみてどう?
R: あのビデオの撮影を始めた頃はまだフロウだった。ツアーにもあまり参加していなかった頃で、締め切りまでにパートを完成させることができたらビデオに出られることになったんだ。だからその1年は全力で撮影しまくって結果的にうまくいったって感じ。形になって本当に良かったと思う。あのパートがなければ今の自分はなかったと思うし。正式にVansチームに加入すらできてなかったかもしれない。オレにとってはあれが初めての本格的なパートだったから。
V: Supremeに加入したのもあのビデオがきっかけ?
R: Supremeに加入したのはサンディエゴからLAに移ったことがきっかけ。LAストアのスタッフと仲良くなったんだ。エイダン(・マッキー)とは前から友達だったけど、LAに移ったことで毎日一緒に滑るようになった。それでビル(・ストロベック)が目をつけてくれたのかな。とりあえずすべてはSupremeの連中と一緒に滑っていたことがきっかけだったんだけど、ちょうど『Blessed』の撮影を始めた頃だったからタイミングも良かったんだと思う。今回は余裕を持って撮影できたし。『Propeller』のときはずっと時間に追われている感じだったから。
V: じゃあ『Blessed』は自然に撮れたパートって感じだね。ちなみに『Baker 4』は? 思い入れの強いトリックは?
R: あのパートで使われたのは時間がかかったトリックばかりなんだ。だから全部思い入れが強いかも。『Baker 4』は『Blessed』が完成してすぐに取り掛かった作品なんだ。だからあのパートに収録されているフッテージは作品がリリースされた2019年に撮影されたものばかり。
V: 他のインタビューで『Baker 4』に収録されていたキンク付きハバでのSsノーズスライドについて話していたよね。あれはアリ・ボウララへのトリビュートって話だったけど。
R: そうなんだ。ガキの頃から『Baker 3』、『Sorry』、Toy MachineやZeroのフルレングスを観てきた。その中でもアリのパートがずっと印象に残っているんだ。スイッチスタンスを取り入れたスケートがヤバいだけじゃなくて、ヤツの個性がパートに反映されていたから。アリがどんな人間であるか…トリック以上のものがパートに収録されていた。パートを観ながら「ハングアウトしたら楽しそうなヤツだな、笑わせてくれそう」って思えるんだよ。
V: 自身初のシグネチャーモデル、Rowan Proがリリースされたばかりだよね。率直な感想は?
R: マジでヤバい。これまでに自分のカラーウェイがリリースされたことはあったけど、今回はシグネチャーモデルだから。それにもうサンプルを1年ほど履いているし。『Baker 4』のパートでもこのモデルを履いている。だからもうずっと履き続けているんだ。それがようやくショップに並んだり雑誌やインスタグラムで取り上げられるようになった。やっとリリースされたんだ。それまではオレだけが履いている架空のモデルのようなものだったのに。それはそれで良かったけど、誰かが履いて滑っているのを見るのは特別な感覚だね。
V: Rowan Pro完成までのプロセスにはどれくらい関わったの?
R: かなり関わったよ。週に1、2日はVansに足を運んでリクエスト通りに進んでいるか確かめるようにしていたし。まず第一にクラシックなモデルにしたかったんだ。単に目新しくてオレのセンスやスケーティングに合わないものではなく、クラシックながらも機能性を向上させたもの。一見わからないかもしれないけど、インソールもアウトソールも従来のVansのそれよりも機能性がアップしている。スケートがしやすくて、ガキの頃に好きだったVansのシューズに近いものにしたかった。つまりオレがVansを好きになったきっかけのクラシックモデルに近いもの。
V: オーシャンサイドでリリースイベントも行われたよね。あのイベントに行くはずだったんだけどコロナウイルスで行けなくなっちゃって…。
R: マジで。それは残念だね。実はオレも中国に行くはずだったけどキャンセルになっちゃったよ。
V: イベントはどうだったの? スカイダイビングをしている写真は見たけど。
R: イベントは最高だった。両親がまだ住んでいる地元で開催できたのも良かった。一緒に育った仲間たちも来てくれたから、ただLAで開催するパーティとは違って特別な感じだった。
V: プリンスパークでセッションもしていたよね。あれはローワンのローカルパークなの?
R: いや、あのパークは比較的新しいパークなんだ。LAに移る2年ほど前にできたのかな。でも両親に会いに地元に戻ったときはあそこで滑ることが多いね。
V: ギタリストとドラマーがローワンのスケート映像に合わせて演奏したプロモビデオも公開されたよね。あれは実験的なアプローチだった。
R: あれはマット・スウィーニーっていうギタリストの友達とその仲間のジョン・セオドアが演奏したんだ。ジョンはMars VoltaやQueens of the Stone Ageのドラマー。まずグレッグ・ハントがシンプルなビートに合わせて映像を編集して、それを観ながらふたりが即興で演奏。何度も録り直して満足できたものが最終盤に反映されたんだ。マジで最高の仕上がりだったと思う。
V: いい感じだね。Vansは1966年にスタートしてずっとスケートをサポートしてきたわけだよね。Vansがスケートシーンに残した最大の貢献は何だと思う?
R: 最近だとコンテストのために作ったパークをそのまま残していることかな。コンテストが終わってすぐに取り壊すのではなくコミュニティのために残しているんだ。これは素晴らしいことだと思う。Vansは他にもいろんな貢献をしているはずだけど、すぐに思いつくのはこれかな。
V: ローワンにとってVansの魅力は?
R: ずっとスケートに関わってきているのにブランドやチームが大きすぎなくて親密であること。だから大きなチームを抱えるブランドよりもライダーひとりひとりを大切にしてくれている。他のシューズブランドに所属する仲間もたくさんいるけど、オレにとってはVansの一員になることが目標であり夢だったんだ。チームの一員になれただけじゃなく自分のモデルをリリースすることができたなんて…。これ以上のことはないよ。
V: ではローワンにとってスケートの魅力とは?
R: なんだろうね。ガキの頃は確固とした夢を持たなくても上達することができた。つまり唯一の目標はトリックを覚えたい一心で上達することだったってこと。それさえ続けていれば制限なんて存在しない。スケートは試合に勝ったりホームランの数を競ったりするスポーツじゃない。スケートは自分の考え方次第で可能性が無限に広がるものなんだ。
V: 自分のモデルをゲットしたばかりだけど、この先の予定は?
R: グロッソがホストを務めるVansの番組、Lovelettersを撮ったばかりだからそれが近いうちに公開されるかな。それ以外はVansやSupremeといったスポンサーのツアーに出ながら撮影を重ねたい。そしてフッテージが貯まったら次のプロジェクトについて考えたい。何もない状態でプロジェクトにコミットはしたくないから。そんな感じかな。
Rowan Zorilla
@rowan.zorilla
1995年生まれ、カリフォルニア州ヴィスタ出身。Vansの初フルレングス『Propeller』のパートで世界的認知を得る。現在はSupremeの一員としても活動。Vansから初となるシグネチャーモデル、Rowan Proをリリースしたばかり。