読売ジャイアンツと公式サプライヤー契約を締結したSTANCEがジャパンツアーを敢行。その内容は同ブランドのアンバサダーであり、スケートコミュニティを表と裏で支え続けてきたアーティストのラス・ポープを迎えてジャイアンツ戦を観戦し、チームのために手がけたドローイングをプレゼントするというもの。100 年続く日本プロ野球史上初めてスケートボード、アートと野球が交差する。
──RUSS POPE / ラス・ポープ
[ JAPANESE / ENGLISH ]
Photos courtesy of STANCE Japan & Waguri
Special thanks_STANCE Japan
VHSMAG(以下V): まず簡単にスケートコミュニティでの経歴を教えてください。
ラス・ポープ(以下R): スケートを始めたのは'70年代。今は52歳だけど、オレが5歳だった1975年に親父が初めてスケートボードを作ってくれたんだ。だから5歳の頃からスケートボードは持っていたけど、バーチカルを滑ったり本格的にスケートに没頭するようになったのは'80年代に入ってから。
V: 当時のスポンサーは?
R: Small Room、SpitfireにThunder。Small Roomは'80年代半ばにあったクールなスモールブランド。当時はBlockheadが有名でよく一緒にツアーをしていたよ。
V: スケート業界の裏方として働き始めたのは? スケートブランドを立ち上げていますよね。
R: そう。Creatureを始めたんだ。Small Roomに所属していたとき、サンタクルーズに引っ越してSanta Cruzで働き始めたんだ。Santa Monica AirlinesとSpeed Wheelsのチームマネージャーをしていた。それを2年間ほどやって、自分のスケートブランドを立ち上げたいと思った。それでNHSのオーナーのリッチ・ノヴァックに「会社を辞めて自分のブランドを立ち上げる」と伝えたんだ。ビジネスプランもあったからそれを見せてね。そしたら彼は「辞める必要はない。ここでやればいい」って言ってくれて。それでNHSでCreatureを始めたんだ。そしてCreatureの後はScarecrowという新しいブランドを立ち上げた。そして今やっているTransportation Unitを立ち上げるまでは、いろんなブランドの下で働いたよ。VansのOff the Wall Galleryのプログラムを担当してサポートアーティストとしてアパレルの仕事もしていた。その後、Converseでは、ルイ・ロペス、アレクシス・サブローン、ミルトン・マルティネス、セージ・エルセッサー、ショーン・パブロとかの契約をまとめたり。最高に楽しかったね。
V: STANCEに携わるようになったのは?
R: オレはブランド立ち上げからSTANCEのメンバーだよ。ブライアン・キングマンに誘われたんだけど、最初のオフィスは小さくてデスクが5つしかなかったのを覚えているよ。ファウンダー全員がひとつの部屋にいた。2011年のキックオフパーティにも参加したし、それから一度もSTANCEを離れたことはない。それ以来、少なくとも毎年ひとつはプロジェクトを形にしてきた。
V: STANCEは読売ジャイアンツのオフィシャルサプライヤーなんですよね?
R: そうだね。まずSTANCEにはベースボールのプログラムがあり、MLB全30球団の公式サプライヤーなんだ。そして読売ジャイアンツが日本での公式サプライヤーチーム。だから「日本で野球のプロジェクトをやろう 」っていう話になった。そうして今回のジャパンツアーが実現したんだ。
V: MLB全球団と読売ジャイアンツの公式サプライヤーということですが、それは具体的にどういうことですか?
R: アメリカでは、MLBの全球団にソックスを提供しているんだ。だからMLBの選手はSTANCEのソックスを履くことが義務付けられている。そしてここ日本では、読売ジャイアンツにソックスを提供しているということ。
V: インタビューの前に、子供の頃はスポーツに興味がなかったと言っていましたね。どうして野球ファンになったのですか?
R: 子供の頃、オレらスケーターは1種類の音楽しか聴かなかったから。パンクロックを聴いて、スケートボードに乗ることだけが許されていた。それから大人になるにつれて、いろんな音楽を聴くようになっていった。スケーターもマインドがオープンになっていろんなことをしても大丈夫な時代になった。そうして年齢を重ねるにつれて野球が好きになっていったんだ。アメリカで生まれた歴史あるスポーツだからね。何世代にもわたって家族で野球を観戦する。そんな歴史が好きだし、アメリカンフットボールほど肉弾戦じゃない。アメリカンフットボールはいつもぶつかり合っていて間抜けに見えるよね。野球の方が賢い感じがするだろ?
V: 野球選手を描くようになったきっかけは?
R: オレはいつも何かを描いているんだ。オレの描く絵は視覚的日記ってところかな。アートショーに行ったり旅に出たら、そこで見る建物や飲んでいるコーヒーを描く。ピザを食べている面白い人を見たら、その絵を描く。野球が好きになってからは、野球の絵がかっこいいと思うようになった。そうして野球の絵を描くようになったんだ。去年はワールドシリーズの期間中、試合ごとに絵を描いてアニメーションにもできたから楽しかったね。
V: 東京ドームにジャイアンツ戦を見に行って、その午前中は練習に立ち会ったんですよね。事前に制作したプリントにサインして配ったと聞きました。
R: そうだね。東京ドーム全体を自由にアクセスすることができたんだ。コーチやマネージャー、選手たちにプリントを渡したよ。前日の試合で勝ったルーキーのピッチャーもいて、彼とハングアウトすることもできた。マイアミから来たアメリカ人選手もいたね。グラウンドでいろんな選手にプリントを1枚ずつ渡すことができて最高だった。
V: プリントをもらったときの反応はどうでしたか?
R: 喜んでいたよ。最初は少し不安だったけどね。だって「何やってんだ。野球の練習を邪魔するな。アホなスケーターにしか見えねぇな。失せろ」とか言われてもおかしくないし(笑)。でもみんなとても親切だった。元木コーチがグラウンドに登場したときはオレらの様子を見ていたけどね。でも話し始めたら笑顔になって、すごくいい人だった。彼もプリントをもらって喜んでいたと思う。元木コーチのテストに合格したということだね(笑)。
V: このドローイングのモデルになった選手はいますか?
R: これは複数の選手を組み合わせたものなんだ。自宅のテレビで野球を観戦するときは、スクリーンに映る実際の選手を描けるけどね。アメリカではジャイアンツの試合は見られないから、所属選手の写真を探すしかなかった。だから特定の選手をモデルにしているわけではないんだ。でもたしかにこれは読売ジャイアンツの選手だろ? STANCEのソックス、ジャイアンツのユニフォーム、帽子のYとG。
V: VIPルームで試合を観戦したんですよね?
R: そう。かなり豪華な空間で素晴らしかったよ。ランチに寿司を食べてドリンクもあった。冷房も効いていて、黒とオレンジの革張りの椅子があってね。試合を見ながらライブドローイングもできた。途中で豪華なVIPルームを出てホームプレートの後ろ側に座りながら、ピッチャー、バッターとキャッチャーを描いたんだよ。どれも15秒くらいで完成するスケッチ。
V: 翌日はスケートショップを回ってプリントを配ったんですよね。
R: 今まで会ったことのない人たちに会えたから楽しかった。オレは習慣から抜け出せないタイプの人間だから、東京に来るとどうしても決まった人にだけ会いに行く感じになるんだ。HeshdawgsのCBやSunday's BestのYokに会いに行ったり、AdvanceのYuumacに電話したり。でも今回はStormy、instantやBatsuにも行けたよ。
V: ジャイアンツの試合の後にファンと食事をしたとき、みんなしきりに「ナイスゲーム!」と言っていたそうですね。それが今回の旅のタイトルになりそうですか?
R: そうなりそうだね(笑)。まあ、それも今朝思いついたんだけどね。最初は“Weekend in Tokyo”にしようと考えていたんだけど、千葉の柏に行ったりしたから東京だけじゃないし。ファンとの食事の後は、いいことがあれば何でも「ナイスゲーム!」と連呼していたね(笑)。
V: いいタイトルだと思います。スケートとアートと野球がこんな風に交差するとは思ってもいませんでした。この先、STANCEで形にしたい新たな挑戦はありますか?
R: 立ち上げ当初のSTANCEはソックスしか作っていなかった。でも今はアウターウェアもある。ビーニーやショーツ、Tシャツもある。ソックスだけでなく、他のアイテムにもアートを吹き込むことができる。だからSTANCEの他の商品カテゴリーにも手を広げていきたい。今回の野球は間違いなく新しいチャレンジだったから。最高だね。
Russ Pope
@russpope
1970年生まれ。カリフォルニア州LA出身。Small Roomのプロライダーとして活動した後、CreatureやScarecrowを発足。これまでにアーティストとしてさまざまなプロジェクトに参加。現在はSTANCEのアンバサダーを務める傍らノースカロライナ州を拠点に自身のスケートブランドTransportation Unitを運営中。
STANCE 公式サイト
https://stance-jp.com/