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POLARの最新作『EVERYTHING IS NORMAL』のディレクターを務めたUKの映像作家サイラス・F・ガーン。制作期間6年。POLARの日本での歩みに焦点を当てた本作について聞く。
──SIRUS F GAHAN / サイラス・F・ガーン

2024.06.24

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Photos_Changsu
Special thanks_Kukunochi

VHSMAG(以下V): まず本作のコンセプトはどのように生まれたの? 典型的なスケートビデオではなくPolarの日本での旅がテーマって感じだよね。

サイラス・F・ガーン(以下S): このプロジェクトに参加したのは結構遅めで、ここ1年半くらいのことなんだ。パンデミックによる空白の期間はあったけど、その時点ですでに撮影開始から5年ほど経っていて映像がたまっていた。オレが参加する前から何度も撮影ツアーが行われていて、昨年最後のツアーをして完成させようということになった。今回のコンセプトは長い間中断していたプロジェクトだったという事実に基づいている。どのスケーターもこの6年で見違えるように成長したし、フィルマーも変わった。ドキュメンタリーの要素を加えたのは、この長いストーリーには文脈が必要だと感じたからなんだ。そして成熟と成長というテーマがすべての映像の根底にある。そういうことを何らかの形で伝えたかったんだ。

V: たしかに三本木 心の場合は、子どもの頃の様子が描かれていて今は父親になっているよね。

S: すべての映像、旅、そしてオレが行ったインタビューを見て、そこには1本の赤い糸が通っていることに気づいたんだ。心の父親にインタビューして彼の幼少期、そして彼がどのように成長したかを語ってもらった。それが今では心が父親になっていて、チームの半分に子どもがいる。そしてウル(漆間正則)には、日本におけるPolarの成長とポンタスのエネルギーについて語ってもらった。 ある意味すべてに共通点があり、本質的に同じことのように感じられたんだ。

 


すべてが普通ではなく、すべてが変化しているというちょっとした皮肉のような感じでこのタイトルにした

V: ではタイトルにまつわるエピソードは?

S: タイトルは日本人がオレとジェイミー・プラットに言った言葉なんだ。彼らは「心配しないで、Everything is Normal(すべて普通だ)」って言ったんだけど、それがコンセプトとして気に入ってね。だって西洋人が日本に来ると、すべてが普通なわけないから。何もかもが普通じゃない。オレらが実際に言われた本当の言葉であることが気に入ったんだ。英語では「Everything is Normal」ってあまり言わないから。これは英語を話す日本人が訳した言葉なんだ。だから「Everything is Normal」と聞くとまるで外国語のように聞こえる。それにオレが映像制作をポンタスから引き継ぐというのも普通じゃない。もう10年以上もポンタスがPolarのビデオを作り続けてきたんだから。だからすべてが普通ではなく、すべてが変化しているというちょっとした皮肉のような感じでこのタイトルにしたってわけ。

V: すべてが普通ではないということで、日本で他の国との違いは感じた?

S: ストリートスケートは世界のどの場所でも受け入れられているわけではないけど、日本では本当に一般大衆に受け入れられていない気がする。日本には周りの面倒を見たがるという文化があると思うんだ。みんな助け合っていて素晴らしい。でも、だからこそストリートスケートが破壊行為とみなされてどこでも滑ることができなくなっているのかもしれないね。そういう意味では他の国とは違うかもしれない。でもスケーターは変わらないね。もちろんこの国でスケートをすることによって形成されたユニークなスケーターがいることは確かだけど、正直スケーターはスケーターだと思う。

V: このビデオプロジェクトには最終段階で関わり始めたということだけど、撮影ツアーにはどれくらい参加したの?

S: 北から南まで日本中ほとんど行ったような気がする。北海道、福岡、広島、名古屋...。まだ行っていないのは京都くらいかな。

V: 撮影ツアーで印象的な出来事は?

S: 北海道での撮影は本当に独特で面白かった。三笠のボウルもマジでヤバい。基本的に北海道は景色が美しかったね。他の場所とはまったく違う雰囲気で、広大で人が少なくずっといたいと思えるような場所だった。空気が澄んでいて、田園風景も素晴らしい。スポットも極上で映像的にも映える。三笠のボウルは早朝に行かないと滑れないんだ。クレイジーな体験だった。4時に起きて、車を走らせて、撮影して…。みんな疲れ果てていたよ(笑)。エミールとオスキのマジでヤバいトリックを撮ることができた。そして8時にキックアウトされて逃げなければならない。あれは本当に最高の体験だった。

 


 

V: エミールとオスキの話が出たけど、巨大な噴水でのふたりの映像はサイラスが撮ったの?

S: そう。ヤバかった。あれも同じ北海道ツアーでの出来事。いつも撮影するときはスポットやトリックを可能な限り良く見せたいと思っているけど、あのスポットとトリックは映像で正しく表現するのは難しい。マジでヤバすぎるから。あのボウルは本当に危険。水が出て来たら脱出できなくて死んでしまう。あれも早朝の撮影だった。決まった時間しか滑れないし、ひどい二日酔いだった。前の夜にパーティしていたから、エミールが噴水で滑りたがっていたんだけどみんな「明日はないでしょ」って感じで。次の朝に噴水で撮影するなんて不可能だと思っていた。たぶん水が張っているしとか言い訳を探して撮影する気なんてなかった。だからみんな思い切りパーティして泥酔(笑)。それで朝になると、エミールはエネルギー全開で「噴水に行って撮影しよう!」って。

V: あの噴水は中にライトもついているしマジで危険だよね…。撮影するのも怖かったんじゃない?

S: 噴水の縁で撮影していたんだけど、あそこに立ちながら「もし落ちたら…」って考えると恐ろしくて。ビデオを見てもらえばわかると思うけど、水が抜けている状態でも外に出るのが大変なんだ。それにオレは重度の二日酔いで吐きそうだったし。

 

 

V: では今回のビデオを観たスケーターに感じてもらいたいことは?

S: 実は昨日、このことについてポンタスと話していたんだ。オレにとってのスケートビデオはスケートボード以上のものなんだけど、ポンタスも同じ意見だった。オレがスケートビデオを作るとき、たとえそれが2分の作品であろうと、ただのスローアウェイであろうと、制作に関する決断はいつも感情と経験に基づいている。この作品にはオレ自身の多くを注ぎ込んだ。今回の制作期間にいろんなことがあったから。オレの人生にとって大変な時期で、そのすべてがこの作品に入っているんだ。オレ自身の大変だった経験すべてが編集方法や使用する映像、そしてオレが伝えようとしたストーリーに結実している。本作では時間、そして物事が時の経過とともに変化していく様を描いている。成熟し、時が過ぎ、物事が変化していくというコンセプトが多少なりとも伝わればいいと思う。このビデオはそのスナップショットのようなもの。言葉で説明するのは難しいけどね。うまく説明できないからこの作品を作ったわけだから(笑)。

 


 

V: 本作を完成させた後、Polarの今後をどう見ている? 本作はある意味、日本に捧げたものだよね。

S: まぁ、今後は国をテーマにしたスケートのアートフィルムを作ることはないと思う。今はオレとポンタスがクリエイティブ関連の決断を半々で行っているけど、それが今後変わるのか、それともオレがもっと主導権を握るようになるのかはわからない。今回のビデオプロジェクトはその最初の試みなんだ。果たして本当に自分に任せられるのか、そしてちゃんとPolarの感覚を表現できるのか。もちろんポンタスの作品を真似するつもりはないし、彼のスタイルで映像制作をしようとも思っていない。オレは自分なりのスタイルで、これまでと少し違った雰囲気でPolarの作品を作りたい。物事には変化が必要だ。そして特にスケートの世界は変化が目まぐるしい。だからオレにとっての今後のPolarは、少しばかり新しいスタイルとやり方を模索していければと思っている。でもライダーと彼らの最高のスケーティングに専念するのはこれまでと変わらない。それが今後のPolarの一番の焦点かな。

 

Sirus F Gahan
@sirusf

ロンドンを拠点に活動するフォトグラファー/フィルムメイカー。ポンタス・アルヴからクリエイティブディレクションを任された自身のPolarデビュー作『EVERYTHING IS NORMAL』を完成させたばかり。

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