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スムースな滑りと洗練されたファッションセンスで絶大な人気を誇るスペンサー・ハミルトン。カナダを代表するスタイラーが語るファミリーの魅力。
──SPENCER HAMILTON

2020.02.17

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Photo courtesy of_Grand Collection
Special thanks_Kukunochi

VHSMAG(以下V): カナダ・オタワの出身でバンクーバー在住だよね。スケートとの出会いは?

スペンサー・ハミルトン(以下S): 兄貴がスケーターで近所の幼馴染もスケートをしていたからそれがきっかけかな。

V: 当時のカナダのシーンはどんな感じだったの?

S: カナダ全体というよりオタワのシーンだけど、スケートを始めた頃はブームだったと思う。ウェイド(・デザルモ)もいたし、ジョー・バッファローやガレア・モモルといったレジェンドもたくさんいた。スケーターが多かったね。

V: リック・マクランクもオタワの出身だよね?

S: そうだね。でもオレがスケートを始めた頃はすでに別の場所に移っていた。トニー・ファーガソンも同じ。当時のオタワのシーンは盛り上がっていた。スケートが人気だったからね。ヤバいスケーターもたくさんいたし。

V: スケートを始めたのはいつだったの?

S: '90年代半ば。たしか'95年にガレージセールでデッキを買ってもらって、その翌年か2年後にちゃんとしたコンプリートを手に入れたのかな。Top of the Worldで買ってもらったんだ。後にウェイドとオレがライダーになるショップ。

V: ウェイドとは長い付き合いなんだよね?

S: そうだね。初めて会ったのは7、8歳頃だったかな。6歳でスケートを始めてTop of the Worldに加入したのが9歳。それからコンテストに出たりしていたね。

V: 同じ街の出身でチームメイトなわけだけど、ウェイドはスペンサーにとってどんな存在?

S: ウェイドはゴールデンチャイルドのような存在だった。イケてるスポンサーもついていたし、ヤツがバンクーバーに移ったときも後からついて行ったくらいだから。師匠のような感じかな。

V: オタワ時代に影響を受けたスケーターは?

S: まずウェイドにかなり影響を受けた。Top of the Worldが『Top Dollar』っていうビデオを作ったんだけど、それに出ていたデイブ・ノーランやトレント・マットリーといった年上の連中。オレはまだガキだったから年上のスケーターに影響を受けていた。でも当時はあまりスケートシーンというものを気にしていなかったんだ。雑誌もほとんど見ていなかったし。でも当時よく観ていたのは『Chocolate Tour』と『Thrill of it All』。この2本にはかなり影響を受けた。
 


 

V: スケート誌に初めて写真が掲載されたときのことは覚えている?

S: ジェイ・ブリッジズっていうフォトグラファーがTop of the Worldのライダーを撮っていたんだ。それで14歳くらいの頃に初めて自分の写真が雑誌に掲載された。Concrete PowderかSBCだったかな。カナダにはあまりスケート誌がなかったから。Concrete Powder、SBC、Expose、そしてColor Magくらい。初めて写真が掲載されてから映像も含めて撮影に目覚めたんだったと思う。それからビデオパートも撮るようになった。

V: そうしてExpeditionにフックアップされたんだよね?

S: そうだね。ウェイドがDGKに所属していて『Top Dollar』のビデオもリリースされていたからKAYOの連中がそれを観てオレにポテンシャルを見出してくれたのかも。もしかしたらウェイドが口を利いてくれたのかもしれない。早い段階でKAYOとのコネクションが築けてラッキーだったと思う。カナダはディストリビューター止まりのスケーターが多いから。

V: 結局本国のチームは誰もその存在すら知らないっていう…。

S: そうなんだよ。日本も同じような感じなのかもね。

V: 直接アメリカのブランドにフックアップされたわけだけど、カナダを離れなかった理由は?

S: 理由はたくさんある。まずバンクーバーが好きなんだ。自然が身近にあるし。大都市だけど移動しやすい。交通の便がいいから車も必要ない。自転車でもプッシュでも移動できる。歩きでも問題ない。

V: カリフォルニアに移ろうとは思わなかったんだね。

S: そうなんだよ。カリフォルニアに行く度に…実は車の免許を取ったのが3、4年前なんだ。だから初めてカリフォルニアに行ったときは免許がまだなくて…正直最悪だった。あの街は車がないと何もできないし、オレはそんな環境でスケートがしたいわけじゃない。カリフォルニアに行く度にがんばって撮影していたけど、いつもカナダに帰りたいと思っていたから…。

V: カナダ人は静かで繊細な人がタイプが多いっていうのは本当?

S: まあ、カナダにもうるさいヤツはいるけどね。でも基本的にはそうかな。礼儀正しいというイメージはあるよね。いつもアホみたいに謝っているし。でも全部ただのステレオタイプだよ。

V: ちなみに腰の調子がずっと悪いって聞いたけど今はどう?

S: ずっと様子を見ながら…って感じだね。自己免疫疾患が原因。腰の内部に炎症ができてしまうんだ。だから食事や投薬で免疫をコントロールしている。どうしようもないくらい痛みが引かないときもあるけどね。

V: うまく付き合いながら滑っている感じだね。ではGrand Collectionにフックアップされたのは?

S: オレがバンクーバに移ったとき、Grand Collectionを立ち上げる前のベンがいたんだ。ヤツは西海岸に移った頃から兄貴のような存在。誰よりも誠実な男でいつでも力になってくれる。だからブランドを始めるって聞いたときは全力で協力しようと思ったんだ。

V: ウェイドとバギーも同じことを言っていたよ。ふたりともベンの話になると笑顔になる。みんなベンをリスペクトしているんだよね。

S: 特別な男だから。努力家で誰よりもスケートが好きなタイプ。スケートオタクだし褒め言葉しか見つからない。

V: ということはGrand Collectionの立ち上げからブランドに関わっていたんだね。

S: そうだね。とりあえずベンはクリエイティブなんだ。ずっといろんなブランドで働いていたから運営やブランディングにも精通している。だからヤツはクリエイティビティを発揮できるサイドプロジェクトを立ち上げたかったんだと思うんだ。マジでドープなアイテムを作るからね。

V: ではスペンサーから見たGrand Collectionの魅力は?

S: ベンの才能とオレたちの意見がひとつになっているところかな。自分のインプットがきちんと反映されるブランドの一員であるのは素晴らしいことだと思う。毎回「このアイテムはヤバい!」って思える。品質も妥協しないし。パンツ、ハット、ジャケットやTシャツ…それが何であれ、ただアイテムを与えられるだけじゃなくチームのみんなの意見が聞き入れられているのがうれしい。

V: ではGrand Collectionで思い入れのあるプロジェクトは?

S: おそらく初めて行ったバルセロナかな。だってずっとカナダで滑っていたんだから。それがベンのブランドのためにみんなでバルセロナに行くことができたんだ。最高だろ? 今のところそのツアーが一番印象的かな。ジャパンツアーも楽しかった。
 

偽りのない小さなファミリーのような感覚。この先もずっと一緒に成長していきたいブランド

V: タイトなチームだよね。

S: かなりタイトだね。ブランドが拠点としているNYに行ってベンがいつもつるんでいるスクワッドと交友を深めることもできているし。偽りのない小さなファミリーのような感覚。Grand Collectionはこの先もずっと一緒に成長していきたいブランドだね。

V: “Tonal”ではいい感じのクリップが収録されていたよね。どれくらい撮影したの?

S: 他の連中はわからないけど、オレは基本的に2回のツアーでほぼ撮った感じ。バルセロナで10日、オーストラリアで8日ほど。だから2週間くらいかな。

V: デッキが折れたフロントフリップもヤバかったね。

S: あれはオーストラリア。でもオレのパートは2回のツアーで撮っただけだったから…。他にもパリやバンクーバーのクリップもあるけど。だから統一感のなさは否めない。しっかりとしたビジョンを持ちながら構成を考えて作られたパートではないってこと。でもJP(・ブレア)がしっかり編集してくれたから作品としていい感じに仕上がったと思う。洋服と同じで、映像作品もライダーの意見を取り入れてくれるから最終的にみんなが満足できるものができ上がるってわけ。
 


 

V: では他のアパレルブランドにないGrand Collectionの魅力は?

S: ビジョンかな。ベンはユニークなビジョンを持っているし、オレらのインプットを取り入れながら自分のセンスに忠実にプロジェクトを進めている。ヤツがブランドのマスターマインドだけど、そこにオレらの意見が入ることで特別になるんだ。洋服でもビデオでも、すべてのプロジェクトが共同作業でベンが監督をしている感じ。そしてみんな密接に繋がっている。普通、ブランドはピラミッドのような構造になっていると思うんだ。トップが決断して下の人間がそれを実現させるために必死になる。でもGrand Collectionはチーム全員が参加しているブランド。アイテムのクオリティも最高。それにブランドはまだ始まったばかり。コレクションも念入りに考えられているし、カラーリングのセンスも抜群。これから成長してさらによくなっていくと思う。

V: ではGrand Collectionにこの先どうなってほしい?

S: 可能性は無限大。大きなブランドにしたいけど、ブランドの構造や根底にあるコンセプトは絶対に変わらない。この3、4年でオレたちは誠実さを損なうことなく着実に成長してきた。量販店に卸すつもりもない。ただいい感じで大きくしていきたいと思う。

V: では最後に今後の予定は?

S: じきにGrand CollectionからVXパートがリリースされる予定。昨年から合間に撮影を重ねているからいい感じに仕上がればいいね。

 

Spencer Hamilton
@spencerhamilton

カナダ・オタワ出身バンクーバー在住。卓越したセンスが光るカナディアン。現在はGrand Collectionよりリリース予定のVXパートを撮影中。

 

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