岡田仁之介と竹田昭馬のSPRINKLESプロ昇格が最新ビデオの試写会でサプライズ発表された。来年公開予定の同作品を手掛けるディレクターのザック・チャンバリンと、プロとして新たな一歩を踏み出したふたりに話を聞いた。興奮冷めやらぬなか、ZOOMで顔を合わせて行われたインタビューの模様をチェック。
──SPRINKLES / スプリンクルス
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Photos_DEIB
Special thanks_Shelter Distribution
VHSMAG(以下V): Sprinklesの最新ビデオの試写会はどうだった?
ザック・チャンバリン(以下Z): ずっとSprinklesのビデオを作ってて、Shelterと一緒にプレミアをやろうって話になったんだ。タイミングもバッチリ合って、ちょうどAREthのビデオも完成してたから両方同じ日に上映するイベントを企画した感じ。オグがずっとやってきたことには本当にリスペクトしてるから、同じタイミングでビデオが完成して一緒に試写会をやれたのはうれしかったよ。
V: それでイベント中に仁之介と昭馬のサプライズでプロ昇格の発表をしたんだよね。
Z: ジンとショウマはずっとオレの兄弟みたいな存在でさ。Sprinkleを通じた繋がりとか、家族みたいな絆が時間とともに深まったと思う。ヤツらを通して出会った人たちや、兄弟愛を分かち合う旅とか、いろんなことがずっと繋がってきて。だから今回がヤツらをプロにする最高のタイミングだって感じたんだ。それを祝う特別な機会にしたかったし、楽しいパーティにしたかった。それでShelterのマサ(入潮正行)にスモークマシンを頼んで、映像の最後にちょっと仕掛けを作ったんだ。スモークの中からふたりのデッキが出てくる演出とかマジでクールだったよ。
V: ふたりは今回のサプライズをまったく予期してなかったの?
竹田昭馬(以下S): 最初は何が起きてるかわかってなくて。ビデオの最後に自分の名前とジンの名前が出て、プロみたいな感じで書いてあって。でもそれにも気づいてなくて。
岡田仁之介(以下J): ザックが前で2本板持って「イエーイ!」ってなってて。「なんか新しいデッキのモデル出たわー」みたいな感じやって。そしたら周りがなんかそわそわしだして。「おいジン、オマエはよ前に行けよ!」みたいな。
V: プロ昇格のサプライズってよくあるけど、どれくらいで実感が湧く感じなの?
S: 今もまだ実感は湧いてないですね。たぶんひとりの時間になったら実感しそう。でもめちゃくちゃうれしかったですね。涙が出そうみたいな(笑)。
J: 涙ちょっと出てたし。高山レオくんとか泣いてたな。もう号泣(笑)。でもそういう友達が身近にいるって最高やなって思いましたね。
V: ヤバいね。今回のビデオはどんな感じなの?
Z: 今回のビデオには16年前のクリップも入ってるんだ。たぶんそれが一番古い映像で、オレが初めてSFに引っ越した頃にホーミーが撮ったもの。あと10年前のカルロス・ヤングの映像もあって、それと最近の映像が混ざってる。つまり一番新しいクリップは日本に来る1週間前に撮ったもので、一番古いのは16年前。スケートは本当にいろんな繋がりをくれるから、過去も現在も一緒に滑ってきたみんなで楽しい作品を作りたいと思ったんだ。実はこの作品を作り始めた途中でブランドがスタートしたんだ。Sprinklesはもともと行き場のないクリップを集めるプロジェクトだった。どこにもハマらないクリップとか、スポンサーの関係で使いづらいクリップとか、そういうのを気にせずに使える場所だった。みんながスポンサーがあったりブランドのことを考えなきゃいけなかったりして、いろいろ複雑になるけど、Sprinklesはそういうのを気にしなくていい場所だったんだ。ビジネスのことを考えずにただ映像を作れるって感じ。でも今はブランドとして形になって、特にお気に入りのスケーターたちの映像がこんな風に混ざり合うのを見られるのは、本当に最高だよ。
V: 今回のビデオで印象的な出来事とかあった?
S: やっぱジンの怪我。
J: いっぱい撮れたなかでどれを見てもそのときの状況を思い出すんですけど、台湾で膝を怪我して…。前回のツアーの帰国3日前に、昼から酒飲んで遊んで。それまでは勢いでスケボーしてきたから。ベロベロでスピーカーとビールを持って、ウォールライドしてそのままダウンヒルをするっていう。普段やったら1回とりあえず決めに行くけど、なんかもう勢い任せでダウンヒルして。それでめっちゃとんがったコンクリに膝から行って、8ヵ月間滑れんかったんですけど…。なんか後十字靭帯が切れちゃって。だからそのクリップっていうか、その出来事っていうか、そのツアー自体が印象的っていうか…。なんて言ったらいいんですかね…。ごめんなさい、オチがないです(笑)。
S: バッドメモリー(笑)。
J: いや、バッドじゃないんですよ。それがなかった今がないから。
V: その怪我したクリップは今回のビデオで使われてるの?
J: 怪我する瞬間は映ってないんですけど。ちょうど切ってくれてます。
S: 僕は飛び出しバンクからプレッシャーフリップが台湾に着いて撮れた最初のクリップで。いいスタートが切れたんで、自分的にはすごい気持ち良かったなーっていう。
V: 撮影は全部ザックなんだよね? 言葉の壁を感じることはないの?
J: 最高。壁とかまったくない。
S: つねに波長が合ってる感じで、どこまでも付き合ってくれる。
J: 何してもついてきてくれるし。でももっとディープな会話をしたいときに翻訳アプリを出すことがあったんですけど、それを使ったら怒るっていうか。「ソウルtoソウルやろ」みたいな。「喋れんでも伝わるやん、オレら」みたいな感覚で。
V: Sprinklesは3名の日本人ライダーがいるよね。
Z: 最高だね。だって3人ともオレの兄弟みたいなもんだから。国籍の違いなんて関係ない。サンフランシスコの大好きなライダーである仲間と同じ感覚なんだ。なんていうか、ヤツらには「Sprinklesっぽさ」が感じられる。単純にいい仲間たちだよ。
V: ふたりとはいつ出会ったの?
Z: 日本に来始めたのは10年前くらいで、こっちでたくさんの仲間に会えたし、新しい人たちとも出会えた。でも7年前に神戸に来たときは… 初めて会ったはずなのに、ずっと前から知ってたような感覚があって。すべてが自然な感じだったんだ。たまには物事を流れに任せるのがすごくポジティブなことだと思うんだ。そしてあのときは本当に宇宙がすべてを完璧に繋げてくれたような感じがしたよ。
V: ではふたりのスケートを言葉で表現するとしたら?
Z: ジンはスタイルがヤバい。ダンスのような動きと腕の動きもヤバい。言葉で表すのは難しいけど、なんかわかるんだよ。ショウマに関しては、ヤツの魅力を完璧に伝えるビデオパートを作るのは本当に難しい。いつもマジでヤバいから。たとえばスムースな路面のストリートを滑ってて、いきなりプリモスライドをやったり。そういうランダムなことが自然にできる。スケートの魅力はスポットからスポットへ移動することにもある。たくさんのいわゆるスポットをヒットできなくても、結局移動してるだけでかなりのセッションをしてることもある。それがSprinklesが大切にしてるところでもあるんだ。ずっとバンに乗って移動してることが大事じゃなくて、むしろ「滑り回って、何か見つけよう」って感じ。
V: 7年前にふたりと出会って仲良くなって、それから自分のブランドでプロに昇格させたというわけだよね。
Z: ヤバいよね。人をプロにする立場になるなんて、正直あんまり考えたことなかったけど。でもさっき言った通り、すべてが繋がってうまくいって自然な感じだったんだ。だからふたりをプロに昇格させることができて本当にうれしいし、いい気分だね。
V: シグネチャーデッキのグラフィックはどんな感じに仕上がったの?
J: 最高。「結構ぶっ飛んでるなぁ」みたいな。ノーズの方にほぐしてる瞬間の写真とオレの顔がでかく貼りつけられてて。あとショウマとのかわいい2ショットがテールの部分にあって。やたらオレの顔が丸いんですけど(笑)。
S: 自分の方はまたジンとはちょっと違う感じでネイチャースタイルというか。木とか日章旗みたいなデザインが描いてあって。うれしかったですね。
Z: 今回晴れてプロ昇格を果たしたわけだけど、今後の展望は?
S: 変わらず楽しく滑り続けるだけとは思ってます。こういう風に形になったけど、それはそれで、つねに行動し続けていきたいですね。
J: とりあえ楽しみ続けるけど、「もっとやらなあかんなぁ」っていうのと、いろんな場所に自分の足を運ぶこと。来年はサンフランシスコで映像を撮りまくりたいですね。最後にサンフランシスコに行ったのが5年前なんで。
V: ではSprinklesの今後の予定は?
Z: またみんなと次のツアーを形にしたいね。集まるたびに新しいことができて、新しい人に出会って、新しい場所にも行けるから楽しい。今ここ日本にいるのは楽しいけど、いつも次に何があるかを考えてるんだ。今を楽しむのは大事だけど、未来の計画も立てて、みんなの生活をもっと良くするためのことを考えるのが大事だと思う。それが大切だね。
Zach Chamberlin @sprinkle.sf
オレゴン州出身サンフランシスコ在住。コアなストリートスケーターを記録し続ける映像作家。SprinklesやLoophole Wheelsの立役者。
Jinnosuke Okada @yungjinnn
兵庫県出身。神戸のスケートコミュニティを牽引するスタイラー。Sprinklesからプロに昇格したばかり。
Shoma Takeda @shomataketa
愛知県出身。自由自在でクセのあるスケーティングにヤラれる人続出。Sprinklesからプロに昇格したばかり。