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オレゴン州ユージーン発のスケート/スノーボードショップTACTICSが、今年11月についに日本初上陸。海外進出の第一歩となる札幌店のオープンを目前に控え、CEOのデューガン・ベイカーとチームライダーのサイラス・バクスターニールに、スケートコミュニティにおけるショップの役割とその意義について話を聞いた。
──TACTICS: DUGAN BAKER & SILAS BAXTER-NEAL

2024.10.17

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Photos courtesy of Tactics
Special thanks_Tactics Japan

VHSMAG(以下V): まずTacticsについて教えてください。

デューガン・ベイカー(以下D): Tacticsはサイラスと私が育ったオレゴン州ユージーンでスタートしたんだ。大学時代に通っていた地元のスケート&スノーボードショップ。大学卒業後はNike SBに20年ほど勤め、最終的な肩書きは北米のジェネラルマネージャー。Tacticsの創業者であるマットとボブはショップに通っていた子どもの頃からの付き合いでNikeを通して仕事をすることもあったけど、引退することになって。ということでTacticsを率いる人材としてオファーされたってわけ。うれしかったし、誇りに思った。だって私が育った場所であり、そこには多くの思い入れと愛情があるから。Tacticsの一員になれたことを本当に光栄に思っている。

サイラス・バクスターニール(以下S): オレも同じくユージーン育ち。あの町には素晴らしいシーンがある。子どもの頃はビデオもたくさん作ったし、スポットもたくさんあった。Tacticsがスタートしたのは1999年だったと思う。オレは2001年にユージーンを離れたんだけど、当時はあまり接点がなかった。2015年頃にTacticsがスポンサーのオファーをしてくれて、ライダーが経営していてスケーターをたくさん雇用していること、そして自分の地元であることが気に入って加入した感じ。

 

吹雪の中に佇むTacticsユージーン店。2004年撮影。

 

V: Tacticsのコアバリューは何ですか?

D: 我々はコミュニティのあらゆることに焦点を当てている。コミュニティをサポートし、幅広い世代がスケートボードやスノーボードの世界に足を踏み入れるきっかけになりたいと思っている。本当に誇りに思っていることのひとつは、Tacticsがウェルカムな場所だということ。どんな人でも親身になって相談に乗る。このカルチャーやコミュニティの一員になりたいのであれば、プロダクトの販売だけでなく、Skate Like a Girlのような団体、あるいはスケートやスノーを教えてくれるローカルコミュニティとのつながりを作るなど、できることは何でもする。我々のモットーのひとつは、「Standing sideways, moving forward」。長年Nikeにいた間も、スケートの話をするときはいつも背筋を伸ばしていた。スケートは自分たちを本当の意味で大切にしてくれるコミュニティ。誰でもウェルカムで、アートや現代の若者が目指しているものをサポートしてくれる場所なんだよ。

S: Tacticsはローカルイベントをたくさんやっていて、コンテストを開いたり、ジャムをやったり、コミュニティのためにできることは何でもやっている。かなりインクルーシブで、いろんな面でスケーターを支えている。若手を世に出したり、露出を増やす手助けをしてきた。今やライダーのロメル・トーレスはFAの一員だし、アレックス・ロバシュクのキャリアも後押ししている。Tacticsはライダーのためにできることをしている。

D: 我々が絶対にやりたくないことは、イベントやプロジェクトを立ち上げて、終わったら何も残さずバナーを撤去して立ち去るということ。Tacticsを設立したマットとボブは行政と協力してワシントン・ジェファーソン・スケートパークをオープンさせた。これは屋根と照明が完備された子どもたちが安全に滑れるパーク。しかもこれはふたりの功績なのに、その手柄を一切受け取らなかった。結局のところ、シューズやスケートボードをより多く売ることが目的ではなく、雨が多いオレゴン州に安全で路面の乾いた場所を提供することが目的だったんだ。Skate Like a Girlのような団体とパートナーシップを組むことで、我々はコミュニティをサポートして何かを残すためにできる限りのことをしている。

V: Tacticsが手掛けたプロジェクトで印象に残っているものは?

D: ユージーンで生まれ育ったということで、やはりワシントン・ジェファーソン・スケートパーク。コミュニティにとって最高の置き土産だ。私がシーンからいなくなっても何年も残るもの。またTacticsの初期に始まったNorthwest Openというイベントがある。当時は何年も連続でやっていたんだけど、縮小してしばらくやっていなかった。それを3年前に復活させたんだ。ポートランドで開催されるこのイベントは市内各地からスケーターが参加できる素晴らしいイベントなんだ。



 

S: 自分は2022年に公開した『Easier Said Than Done』というビデオかな。ポートランドのチームと周辺に住んでいるライダーに焦点を当てたもの。みんなと一緒に撮影してビデオを完成できたのは楽しかった。しかもそれがTacticsという地元のプロジェクトだったというのも良かった。

 

V: 地元をリプレゼントするのは特別な感覚だろうね。

S: そうだね。基本的にオレゴンが好きなんだ。今の地元はポートランドだけど、10代の頃にスケートしていたスポットに行ったり、子どもの頃からの仲間と一緒に滑るのも楽しい。Tacticsではユージーンだけで撮影した『Fire in the Shire』というビデオパートもあるんだ。もう何年も滑っていないような子どもの頃のスポットに戻ったんだ。昔のスポットを再訪して、また違った解釈で攻略するのは楽しかった。

 

D: ここでちょっとサイラスを持ち上げる話になっちゃうけど(笑)。私はサイラスよりふたつ年上で同じ高校に通っていたんだ。みんなサイラスのことを知っていた。ただのファンだったから、サイラスは我々のことなんて知らなかっただろうけど。とにかく、サイラスのスケート写真が卒業アルバムに掲載されたんだ。あの頃は…Adioのライダーだったっけ?

S: いや、当時はたぶんSavierかDVSのフロウとかかな。

D: とにかく、我々にとってユージーンは大好きな地元だけど、一般的にはポートランドからサンフランシスコに行くときに通り過ぎるだけの小さな町なんだ。そんな町を飛び出して成功するようなスケーターが身近にいればどうしてもうれしくなる。今でも卒業アルバムの写真を鮮明に覚えているよ(笑)。

スケートショップがなければ、カルチャーは崩壊し、なくなってしまう
デューガン・ベイカー

V: ではスケートショップの重要性についてどう思いますか? オンラインショッピングが増えている今、敢えて札幌に新店舗をオープンするわけですよね。

D: スケートショップはスケートカルチャーの根幹を成す存在だと信じている。スケートにはリトルリーグもスーパーボウルもワールドシリーズもない。我々には特別な瞬間やイベントはあるけれど、いつでも足を運んでカルチャーが体験できて、それに参加し、それを自分の一部にできるような場所はないんだ。私にとってスケートショップとは、スケートに対する本当の愛情が存在する場所。初めてスケートボードを買う人が来たら、単純にそれを売るだけでなく、その仕組みなどいろんなことを教えるんだ。何を手に入れようとしているのか、これからどのような経験をしていくのかを理解してほしいと考えている。実店舗は商品を売るだけでなく、このカルチャーを存続させている。Nikeで働いていたから、大都市でスケートショップを経営している人をたくさん知っている。スケートショップがなければ、カルチャーは崩壊し、なくなってしまうんだよ。

S: スケートショップはコミュニティの形成に役立っていると思う。初めてスケートボードに触れるとき、スケートボードとは何かという自分のイメージを持っているかもしれない。でもショップに行って、スタッフに会って、スケーターがどんな人たちなのかを見れば、スケートボードがどんなものなのか、スケーターがどんな人たちなのかを実際に知ることができる。それは出会いの場であり、待ち合わせ場所でもある。地元ユージーンのスケートショップでも何時間も何時間もスケートのビデオを観たりしてハングアウトしていた。そしてやがて家族のような存在になっていった。 自分たちの活動の拠点となったんだ。スケートショップは今でもそういう場所だと思う。プロレベルのビデオやローカルビデオのプレミア上映、イベントやコンテストの開催とか、スケートシーンをまとめ、スケートボードとは何かを広める手助けをしている。さらに、キッズが上達してスポンサーが付くようになれば、その足がかりにもなる。スケートショップはさまざまなブランドと関係を持っている。だからライダーに可能性を見出すと、その子たちの方向性を後押ししたり、より大きな業界に紹介したりできるんだ。

V: Tacticsにとって初の海外進出となるわけだけど、札幌を選んだ理由は?

D: 若々しく、ある種のカルチャーがある都市を探していたんだ。そして地理的には山に近いところが良かった。札幌はニセコや旭川まで車で行くことができるけど、これは私にとってユージーンからシアトルへのドライブに似ている。絶景の渓谷、美しい農地、素晴らしい山々、海岸への近さ。それにポートランドと札幌は姉妹都市なんだ。実際に行ってみると奇妙にも共通点がある。両市ともビールがかなり盛ん。まったく異なるふたつの場所だけど、地元のような居心地の良さを感じた。もちろん日本には他の都市もたくさんあるけれど、自分たちのルーツを維持したかったんだ。ロサンゼルスには店舗を構えていない。サンフランシスコやテキサス、ニューヨークにも店舗を構えていない。それは街の雰囲気として自分たちの居場所からあまりにもかけ離れているから。我々は自分たちの場所、自分たちが何を目指しているか、何を愛しているかを理解している。札幌は自然にフィットする場所だと感じたんだ。

S: スケートのツアーで札幌に行ったことがあるけどとても美しい街だった。札幌はアートに力を入れている印象で、公園や緑のオープンスペースもある。ポートランドと似ていると感じた。家族と行ったこともあるけど、食や有機農業のコミュニティも盛んだった。

V: Tacticsは、それぞれの店舗でローカルコミュニティのハブとなっています。札幌でそのような感覚をどのように再現するつもりですか?

D: 札幌もこれまでの店舗と同様のプラン。地元の新進気鋭の子どもたちのサポートをしたい。また子どもたちが安全にスケートできる場所を作るためにできることをしたいと思っている。日本ではアメリカほど安全が問題になっていないのは知っているけど、基本的にユージンでやってきたことと同じ。もし5年か10年先に我々がユージーンで手掛けたワシントン・ジェファーソンのようなものを札幌に作れたら、そのときにTacticsがそこにあろうとなかろうと、それが完璧なシナリオだと思う。コミュニティの一員であることでシーンを向上させ何かを残せたということになるから。

V: これはサイラスに聞きたいんだけど、何度も日本に来ていて仲間も多いよね。日本のスケートシーンについての見解は?

S: まあ、日本でもっと時間を過ごしたいけどね。オレの視点から見ると、日本はスケートシーンが充実していていろんな側面があると思う。日本のシーンを知って注目し始めたときから、彼らのビデオが違うことにすぐに気づいた。たとえば森田貴宏がやっていたような、カメラを動かしたり、ライトを高い位置から照らしたり、夜に撮影したり…。それはスケートビデオの作り方の新しい方程式を形作ったと思うし、オレらがアメリカでやっていたこととはまったく違うものだった。今や他の多くのブランドがそれを模倣していると思う。また日本にはストリート志向の若いスケーターがたくさん育っている。三谷小虎のような正真正銘の純粋なスケーターもいるし、宮城 豪のようなアーティスティックな類もいる。『LENZ III』も素晴らしかった。だから日本には本当に強力なストリートカルチャーがあると思う。独自の路線を歩んで、まったく別のものを生み出しているように感じる。可能であれば、Tacticsを通してそういうものをもっと強調できたらいいかな。

V: というわけで、いよいよ11月にTactics札幌店がオープンしますね。

D: このコミュニティの一員になりたいと願う誰もが歓迎されるような場を提供したい。インクルーシブでありたい。誰もがスケートボードやスノーボードを始められるようなスペースを作りたい。その方法としては、ローカルイベントや人との関わり、ショップビデオのような簡単なものでもいい。そういったことを続けていきたいと思う。なぜならそれこそスケーターの活動やスケートコミュニティを伝える手段だから。サイラスが『Easier Said Than Done』について言及したけど、そのビデオに出て注目されてオレゴン以外で初めて大舞台に立ったスケーターが何人かいた。もし我々がそのようなことができれば…つまり、スケートコミュニティの一員になりたいと思っている若者を受け入れて、彼らが来店し、カルチャーを体験し、スタッフと知り合いになり、やがてスタッフとなり、次のサイラスになれるような場所を提供することができれば…。札幌での時間を早送りして成功を定義するとしたら、それは収益や売上といった単一の指標ではないと思う。むしろ、それはコミュニティの向上であり、我々が札幌に来たときよりもいい状態でその場を去れるようにすることだ。

S: オレはもっと日本に行く機会が増えたらうれしいね。もしTacticsが日本でビデオプロジェクトを進めることができたら、コミュニティにとって素晴らしいことになると思う。ビデオプロジェクトはスケーターの質の向上に役立つと常々感じている。目的ができるからね。スケートパークを飛び出して、自分たちの街や能力を探求するんだ。札幌でのスケートビデオは素晴らしいものになると思う。ぜひとも札幌のストリートスケートを見たい。

 

Tactics @tacticsjapan

1999年にオレゴン州ユージーンで発足。以来、ポートランド、ベンド、シアトルとアメリカ北西部を中心に展開し、11月に初の海外進出として札幌店がオープン。

Dugan Baker @tactics

TacticsのCEO。Tacticsが誕生したユージーン出身のスケーター/スノーボーダー。Nike SBに20年従事し、その経験を活かしてTacticsのレガシーを引き継いでいる。

Silas Baxter-Neal @silasbaxterneal

Tacticsのチームライダー。Habitatやadidas Skateboardingに所属するオールラウンダー。日本のスケートシーンにも造詣が深い2008年度のSOTY。

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