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NEW BALANCE NUMERICから自身初のシグネチャーモデル600が発売されたばかりのトム・ノックス。さらにKROOKED加入にDICKIESのアパレルコレクションのリリース。怒涛の2023年を振り返る。
──TOM KNOX / トム・ノックス

2023.11.02

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Photos courtesy of New Balance Numeric / Jake Darwen

すべてを無事にやり遂げることができて良かった

VHSMAG(以下V): 新しいボードスポンサー、Dickiesのシグネチャーコレクション、New Balance Numericのシグネチャーシューズ。今年は怒涛の1年だね。今の気分はどう?

トム・ノックス(以下T): すべてを無事にやり遂げることができて良かった。今年の初めはデザイン、撮影、ツアーとかやらなければならないことがたくさんあった。だからそれをすべてやり遂げ、なおかつ健康で、ハッピーで、今もスケートを楽しめていることを誇りに思うよ。

V: 今年初めにKrookedに加入したんだよね?

T: ああ、今年の2月だね。初めてSFに行ったよ。

V: 実はジェイク・ハリスがAtlantic Driftをボードブランドにする予定があったんだよね? それが実現していたら参加するつもりだった?

T: もちろん。ボードブランドにするつもりだったけど、当時はジェイクに大変なことが起きてね…。というのも新型コロナに罹ってかなり症状が長引いたんだ。ボードブランドに全力を注ぐべきタイミングじゃなかったってわけ。だから実現しなかったけど、Atlantic Driftは映像作品や洋服を作りながら継続している。でも結果的にそれで良かったと思う。あのときはかなり体調が悪かったし、本当に辛かったと思うから。実現していれば上手く行ったと思うけど、Krookedという新しいホームにも出会えたことだし。

V: ジェイクとの作品作りはどんな感じ?

T: 最高だよ。ヤツとは14歳の頃から一緒に撮影しているんだ。今でも新鮮でエキサイティングな関係を維持できていると思う。特にAtlantic Driftのツアーは最高だよ。あれ以上の旅はない。仲間だけの旅だから。かなりレアだと思う。スケートコミュニティを見渡してもそうそうないんじゃないかな。本当に純粋な仲間たちが、好きな場所へ旅して、映像を撮って。しかも全員が撮影することを望んでいる。みんな外に出て、いろんなものを撮影して、いろんな街を探検したいと思っているんだ。

V: ではAtlantic Driftシリーズの魅力は?

T: 編集そのものに関して言えば、ジェイクはかなりクリエイティブなタイプだし、いいアイデアをたくさん持っている。Atlantic Driftはヤツのアイデアをすべて吐き出す場だと思う。ユニークなスタイルを作り上げたと思うし、オレたち全員を上手く表現してくれている。ヤツがいてくれてオレたちはマジでラッキーだと思っているよ。

V: 個人的には“Saint Tom Knox”がお気に入り。あのパートは良かったね。

T: ありがとう。あの場所はオレにとって特別な場所なんだ。というのも14歳のときにそこで初めてジェイクに会ったから。毎週末、朝の11時にあそこで会っていたんだ。あの場所が集合場所。だからオレらはガキの頃から何年もあのスポットでスケートを楽しんできた。そしてパンデミックでロックダウンされたときに「ここで何か撮ろうぜ」ってことになったんだ。昔から上から下まであの場所全体を使ったラインを撮りたいと思っていた。現にこの20年間ずっとその話をしていたんだ。結局ずっとできていなかったけど、パンデミックのおかげで観光客がいなくなってね。「今しかない!」と思ったよ。それで「どうせなら、誰もいないうちにパートを撮ろう」ということになったんだ。上手く行って良かったよ。

 

V: Dickiesからシグネチャーコレクションもリリースされたね。

T: まあ、長いプロセスだった。コレクションが出る時期がわかっていたから、冬物に近いものを作ろうと思ったんだ。だからサーマル、ジャケット、フーディ、ロングスリーブというラインナップになった。特にロンドンやヨーロッパとか、寒くなる地域で天候に負けない強いものを作りたかった。そういうものを表現したかったんだ。それからDickiesにはない商品を作ろうと思った。Dickiesを代表するものでありながら、これまで彼らがやったことのないもの。たとえば今回作ったパンツはクラシックなDickiesのリラックスフィットなんだけど、腰にストレッチバンドをつけたんだ。本当に楽しい作業だったよ。

V: プロモビデオの撮影ためにパリに3週間滞在したんだよね。

T: そう。楽しかったよ。パリで初めてバンを用意したツアーだった。パリでバンがあるのは珍しいんだよ。だから郊外のスポットを回ることができた。雨が多かったから実際にスケートできたのは3週間もなかったけど、アイデアはたくさんあったから。参加したスケーターも少なかったから、路面が乾いたらすぐにスポットに行って撮影することができたし。最高だったね。

 

V: そしてNew Balance Numericから初のシグネチャーモデル600もリリースされたばかりだね。

T: そうだね。これまでより厚いカップソールのスポーツシューズを作ってほしいってずっとリクエストしていたんだ。そしてNumericのボスのセバスチャンがeBayで古いシューズを見つけてね。それが600になった。eBayで見つけたのはたしかi600ってモデル。アウトソールとかロゴから'90年代前半のモデルということらしい。というのも'90年代のモデルということはわかるけど、記録がなくて歴史についてはわからないみたいなんだ。とにかくそのシューズをベースにして、ルックスを継承しながらスケートできるものを作ろうとした。デザイナーのジェフがいい仕事をしてくれたよ。

V: ヒール部分に「INDOOR」とプリントされているよね。ベースとなったi600はインドアサッカーのシューズか何かだったの?

T: インドアのコートシューズなんだ。だからサッカーとかスカッシュ用だろうね。そういったシューズの歴史にちなんでホワイトのカラーウェイにだけ「INDOOR」の文字を入れたんだ。ブラックのカラーウェイには入れていない。オリジナルを忠実に再現するため、そしてストーリーを少しでも伝えるためにその文字を残したかったんだ。

V: 600のプロモビデオも公開されたね。Dickiesのプロモビデオもそうだったけど、かなり狭くてタイトなスポットを攻めてるよね。

T: 別に敢えて狭いスポットを探しているわけじゃないけど、たしかにあのビデオに出てくるスポットのいくつかは狭さがテーマになっているね。オレは誰も滑っていないようなスポットを見つけたり、違う方法で滑ってみたいだけなんだ。そうなると壁と壁の間をすり抜けたり、狭いレッジの上で何かをしたりすることになるってだけ。でもそういう攻め方は練習できないよね。スポットに順応しながらトライするしかないから。でもそれも楽しいんだ。スポットにはどこにだって狭いフラットみたいなものがあるだろ? 昔からよくAtlantic Driftクルーと一緒に狭い場所から外れることなくフラットトリックをして遊んでいたんだ。そのスキルが今になって役に立ったってわけだね(笑)。

V: あのポールをすり抜けるテールスライドのシャヴアウトはどれくらいかかったの?

T: 最初はかなり時間がかかると思っていたんだけどね。実際に行ったらすぐにメイクできた。意外にもスムースだったね。

V: ラストトリックの超絶狭いステアでのオーリーもヤバかった。あのステアはデッキよりも幅が狭いよね?

T: ああ、あのスポットで滑りたいって何年も前から思っていたんだ。それでキャンペーンの撮影をすることになったとき「とにかくトライしてみよう」と思ったんだ。いい写真になるとは思っていなかったんだけどね。でもフォトグラファーのジェイク・ダーウィンを連れて行ったら「全然イケる」って。それでかなりスケッチーな撮影になると覚悟して翌朝に行ったんだ。何度か飛び降りてみて、オーリーをトライ。そして2回ほど乗りゴケしてメイク。 顔もヒザもぶつけなくて済んだ。それからラインを撮ったんだけど、正しいアングルでオーリーの体勢に入るのがかなり難しかった。1インチ左に行けば顔が壁に近づきすぎるし、1インチ右に行けばケツが壁にぶつかる。だから完璧なラインを見つけることが必要なんだ。推測するしかない。メイクできて良かったよ。

 

V: その写真がThrasherの表紙になったんだよね。Thrasherの表紙を飾るのは2回目だよね。

T: その通り。信じられなかったよ。正直なところ一度も飾れないと思っていたから。だから2回も表紙をゲットできるなんてこの世のものとは思えない。驚きだよ。

V: トムのIGポストを見たんだけど、ジェイクがサプライズをしてくれたんだよね?

T: あの日はジェイクがオレをスケートに連れ出して、1日中ぶらぶらしながら過ごしたんだ。そして午後に「そうだ、あのオーリーのランアップを撮らなきゃ」って言い出して。それであのスポットに行って、ステアを上ったら家族と仲間がいて…。娘がThrasherの表紙を手にしていたんだ。かなりクールなサプライズだった。あのスポットでサプライズを仕掛けるなんて思ってもいなかった。親父と妻も娘たちと一緒にそこにいた。最高だったよ。
 

V: おめでとう。そういうわけで2023年は盛りだくさんだね。今後の予定は?

T: スケートし続けるだけだね。パートも撮りたいし。滑りまくって、楽しみ続けて、モチベーションを枯らさず進み続けたいね。

 

Tom Knox
@t0mkn0x

1991年生まれ、ロンドン出身。洗練されたスケートスタイルで知られるUKを代表するストリートスケーター。NB#から1stシグネチャー600、Dickiesからコレクションをリリースしたばかり。最近は狭いスポットを攻めがち。

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