今年2度目の来日を果たしたタイショーン・ジョーンズ。HARDIESとKINGによる合同ツアーの合間に、まもなく設立2年目を迎えるKING SKATEBOARDSの展望について語る。
──TYSHAWN JONES / タイショーン・ジョーンズ
[ JAPANESE / ENGLISH ]
Photos_Kohei Hayashi
Special thanks_NORM SKATE DISTRIBUTION
VHSMAG(以下V): 5月にHardiesとVictor Victor Worldwideのコラボで東京に来ていたけど今回の来日の目的は?
タイショーン・ジョーンズ(以下T): 日本はずっとスケートしに行きたい場所のリストに入っていたんだ。実際に日本に行って何かを形にしたいと思っていた。これまでは短期間のビジネスツアーばかりだったから、今回が初めての本格的なスケートツアー。だからかなり楽しかった。
V: 東京でのストリートスケートの撮影はどうだった? ツアービデオみたいなものを作る予定なの?
T: そうだね。東京はマジでストリートが厳しいけど、いくつかいいクリップが撮れたから何かしらの形でまとめるつもり。
V: 品川のギャップでキックフリップをメイクしたんだよね。数年前の"Kingdom Come"でも似たようなギャップでトレフリップをやっていたけど、今回はどうだった?
T: いい感じだったよ。ちょっと違うタイプのギャップだったけど面白いスポットだと思う。キックアウトが早いから、ご想像のとおりすぐにメイクした感じ。これまで出たトリックがオーリーだけってことには驚いたけど。もっとやりたかったけど時間が足りなかった。でもまあ、キックフリップだけでも残せてよかったね。
V: オーリーをトライしているタイミングで警備員が出てきたって聞いたよ。
T: そう。オーリーの段階でキックアウトされたんだ。でもオレはトリックに執着するタイプだから。どうにか粘って2トライで仕留めることができた。
V: Kingを始めたのが2022年の12月。FAを離れて自分のブランドを立ち上げた理由は?
T: 人によっては10年という年月はそれほど長く感じないかもしれないけど、オレは10年という自分のキャリアの早い段階で多くのことを達成したと感じている。それはいいことではあるけど、逆にやる気を失ってしまう原因になることもある。だからもう一度新しい目標に向かって頑張りたかった。FAのチームメイトたちは他のことに興味を持ち始めていて、音楽とかスケート以外のことをしている連中も多かったんだ。オレはスケートに専念することが重要だと思っていたから、再び自分がエネルギーを注いで、全力でチャレンジできる新しい何かを求めていたってわけ。
V: Kingというブランドネームの由来は?
T: ただポジティブな意味を込めたかったんだ。Kingという言葉を「自分がキングだ」とかそんなふうに捉えているわけではない。そう言われることはあるけど、いつも聞き流している。女性もキングになれるし、誰でもキングになれる。そういう愛情を込めた言葉。要はスケートインダストリーに何か意味のあるポジティブなものを持ち込むためのいい方法だと思ったんだ。
V: チームには誰が在籍しているの?
T: オレとナケル(・スミス)で一緒に立ち上げたから、メンバーはオレ、ナケル、ザック(・サラシーノ)、ケイレブ(・ベネット)。ジュニアも頭角を現していてフロウライダーも数人いる。スローペースかつ自然な形で成長しているからうれしいね。急いで何かをするのではなく、時間をかけて強力なチームを築いている感じ。
V: ツアーに同行している池田大亮に関しては?
T: 一緒に動いていていい感じだね。大亮はクールだしスケートがヤバい。面白くて興味深いヤツだよ。何も気にせず突っ込むし。そういう姿勢が好きだね。
V: Kingを立ち上げて2年が経つけど、これまでに手掛けたプロジェクトで特に印象に残っているものは?
T: これまで裏でいろんなことを進めて強力な土台を築いてきた感じがする。今までで特に印象的だったのはザックのパートかな。反響も良かったから、これからもこんな感じでやっていきたいと思っている。今のどのブランドも尺の長いビデオ制作に苦しんでいると思うから、あんな感じのクイックでヤバいソロパートを作ることが大きなポイントになると思うね。
V: ザックはどうやってチームに加わったの? ICで起きた例の騒動と関係はあるの?
T: ザックとはLAでハングアウトしているときに知り合ったんだ。共通の仲間が多かったから。あまり話すことはなかったんだけど、ある日、P-Rodのパークで一緒にスケートする機会があったんだ。そのときにザックが「ICがもうデッキを作らなくなる」って話していて。オレはその数ヵ月後にFAを辞める予定で「これが新しいブランドのアイデア。こういう方向性にしたいからオマエをチームに迎えたい」と伝えたんだ。そしたら「やるよ」と言ってくれて。そんな感じでKingのライダーになったんだ。
V: 自分のスケートがKingの方向性やスタイルに影響を与えていると思う?
T: 特にオレ個人が求める方向性というわけではないね。Kingが世に送り出すものに関しては、チーム全体としてみんながワクワクしてくれることが大事だと思うから。チームがいいと思うものならみんなそのプロダクトを広めてくれる。自分が好きなものだけを作るわけにはいかないからね。自分のスタイルをみんなのスタイルに取り入れて、みんなが気に入ることをやるように心掛けているよ。
V: 数年後のKingのビジョンはどんな感じ?
T: チームのみんなでいいビデオを作りたい。みんなのフルパートでなくてもいいけど、チーム全員が登場する作品。最近はみんなそれぞれのプロジェクトで忙しいから、足並みを揃えるのが難しいんだ。でも、今のところはそれが目標のひとつ。ブランドをオーガニックに、できるだけ大きく成長させて、世界的に有名なブランドにしたい。まだ若いブランドで、少しずつ馴染んできているところ。この業界は新しいものを嫌う連中も多いけど、長く続くとわかれば、みんなもそのうち認めてくれると思う。だからKingが長く存在し続けることを示して、これからもやり続けていくことを伝えていきたい。
V: クリエイティブな面と実際のスケートのバランスをどう取っているの? タイショーンは酒も何もやらないのは有名だけど、抱えているものは多いはずだよね?
T: たしかに大変だけど、何かに取り組むって決めたらそれに正面から向き合わないといけないだろ? 「たくさん食べたいって頼んだら、料理が来ても文句は言えない」って感じ。今やっていることすべてにおいて、自分がその立場に立つことを選んだんだから、どんな大変なことでもそれに付随するものだとわかってやっている。そしてそれをひとつひとつ乗り越えていくようにしている。でもやっぱり人間だから、ストレスを感じる日もあるよね。
V: ボードセールス以外で、Kingにとっての成功とは?
T: チームのみんなが今いる場所に満足しているなら、それがブランドにいい影響を与えると思う。関わっている全員が今の状況にワクワクしているなら、その感情がブランドを強くしていく。だからオレにとって成功とは、他のブランドのように金を稼いで道を見失ったりして変わっていくようなことではない。自分たちの本質を守っていれば、金やその他の成功は後からついてくると思っている。最高のスケートで魅せて、クールなプロダクトを作るという使命に忠実でいれば、このブランドは止められないはず。だからそこに集中したいね。
Tyshawn Jones
@tyshawn
1998年生まれ。NY・ブロンクス出身。2度のSOTYに輝いたadidas Skateboardingの看板ライダーにして、HardiesやKingなど数々のブランドを手掛ける実業家。