遠く離れた地方から東京・羽田に降り立ち、都心へ向かうモノレールに乗るとスケーターならハッと気がつくことでしょう。ビル群が増え終点の浜松町駅も近づいてくる頃、東京を代表する有名ローカルスポットの目の前を横切ります。そうです、そこは港区芝浦4-20。通称「田町（TMC）」として知られる夕凪橋際遊び場でございます。
　終点でモノレールから山手線に乗り換えて田町駅で降りましょう。駅の階段を降りたら通りを海の方向へとプッシュ、鬼プッシュだと5分もかからないぐらいでしょうか。いやしかし、ちょーっと待ったぁ!!!　プッシュは我慢、はやる気持ちを抑えて歩きましょう。長年東京スケートの聖地であるこのスポットは「近くをプッシュするスケーターが多い」という苦情により、その存続が危ぶまれているというのが現状。去年まで21時まで開いていたのが、制限が厳しくなり今や18時クローズ。自分は田町に足繁く通っているわけでも、ましてやローカルであると言うつもりもないのですが、たまに行くとついつい熱くスケートしてしまいます…。そんな場所で滑ることができなくなってしまうことほど悲しいことはありません。
　この田町、もともと周囲のエリアは開発されておらず、スケーターが見つけて滑るようになった広場に行政の協力でコンクリート製ボックスが設置されたそうです。僕がスケートを始めた頃には田町のシーンはすでに確立され、そして今に至るまで各地のストリートスケーターがこの聖地でしのぎを削ってきました。岡田 晋や米坂淳之介といったトッププロの映像は海外ブランドのビデオにも収録され「日本にもヤバいシーンあり」と主張してくれました。その頃といえば僕はまだ地元の中高生だったのでリアルな田町の様相を知る由はないのですが、東京に滑りに行った先輩からは「田町はみんな相当ガツガツして道場みたいだったよ。あの中じゃ滑れない…」なんて聞いたりしました。それから時が経ち現在、時たま滑りに行く自分の目に映る田町は道場などではなく、スケート好きなヤツらのホットスポット。スケーターはもちろんバスケや他の利用者との交流の場として上手く共存しているように思います。
　がしかし、一部のスケーターのマナーの悪さで田町は窮地に陥っています。港区の担当者曰く「再三の注意にも関わらず、いまだに駅からプッシュしている人とパーク内で喫煙をしている人が絶えない」とのこと。毎日公園の管理局にクレームの電話が鳴りっぱなしだとか。パークの閉鎖もいよいよカウントダウンといったところだそうです。ではどうしたらいいのか？　至って単純です。パークまでノープッシュとパーク内で禁煙をするだけ。とても簡単です。これができない、またはFX&'Kマナーって人は田町へ行かなければいいだけのこと。実家の前で心置きなくスケートするなりプッシュするなり喫煙すればいいのです。首の皮一枚で存続しているパークのその皮が半分切れかかっています。先人たちのレガシーを自分たちの世代で壊してはいけません。田町が閉鎖に追い込まれたら田町難民なるスケーターが近隣のパークへ出没することになるでしょう。自分たちのローカルでマナーを守れなかった人たちが他所のパークでマナーを守るとは到底…。ということで、ここはみなさま何卒宜しくお願いします。
　ちなみに岡田 晋のDeca『2nd to None』パートでは、田町でケータイのカメラに映る自分を表現した映像が冒頭に出てきます。当時はケータイにカメラ機能が備わりたての頃で、これは世界でも日本が初だとか。「これ見たら外人もさらにビックリするっしょ！」ということをリリース後のインタビューで本人が語っていたのを、映像観るたびに思い出すんですよね。ケータイもスケートも当時の日本のハイテクノロジーに世界が震えたことでしょう。サイコ〜！

―Kazuaki Tamaki（きな粉棒選手）