少し年齢が離れている…たとえば5年という年齢差やスケート歴の違いでも、影響を受けたスケーターやスケートビデオって違ってくるものです。自分より上の世代が熱狂した時代のことを知らずに、目から鱗が落ちることは今でも常日頃。そして自分と同年代のスケーターでは共通認識である出来事を、少し下の世代の人らが知らなくて驚いてしまうのもまた常日頃であり、仕方のないこと。逆にひと回り以上年下のヤングから教わることも多いっす。知らないことがダメだと言うつもりもありませんが、知る者が知らざる者へと情報を伝えていく行為はとても大切なことかと。その時々で見聞きした情報を掘り下げ、インプットし、アウトプットするもしないも自分次第Yo!
先日突発的に起きた飲みの席にて。その場にいたのは多かれ少なかれシーンに刺激を与え、スケート歴もそれなりに長い、根っからスケーター気質の面々。積もるスケート談義は尽きることもありません。しかしそんな流れで驚いてしまったのは、2002年リリースの名作ビデオ『Chomp On This』を誰も知らなかったこと。その当時を代表し、語り継がれる名作といえばGirl『Yeah Right!』、Emerica『This is Skateboarding』、Flip『Sorry』あたりや411VM、On Videoといったビデオマガジン系が真っ先に思い浮かびます。個人的には『Chomp On This』もそれと同じぐらいスケーター界を騒がせた作品であったと認識しており、つい面食らった形。「あのパックマンがサンプリングされたジャケの…」が見事に通用しないとは(汗)。
そんな『Chomp On This』、どんな作品であったかというと、そのエンドロールにもありますが「仲間内で撮影、編集、監督、そして制作された」ビデオ。しかし、今では無数に存在するホーミービデオと侮ることなかれ。なんといってもこの作品でメインにフィーチャーされているのはフォトグラファーやフィルマーという、言わば裏方職のスケート。当時のスケート誌やビデオのフォトクレジットやエンドロールに記載されている「名前だけはなんとなく見たことあるけど…」なんて人が堂々とスケートを披露しておられます。スケートビデオでパートを残すのは本当にスケボーの上手な人だけだったのが当然だった当時。そんなスケーターと比較するとスキルはワンランクもツーランクも下、お世辞にも「ヤバい!」とも言えません。でも裏方の滑りが観れるってのがミソ。とは言え生ぬる〜いスケーターには到底真似の出来ないような映像の数々が記録され、「このオジサンたちもちゃんと滑れる人なんだねぇ」と偉そうに感心したガキの自分。かたやエリック・コストンにブランドン・ビーブル、ジェイミー・トーマスをはじめ、今なおシーンを牽引する多くのスケーターも出演しています。ふざけた映像、編集もてんこ盛り。スケートビデオがカンパニーのプロモーションとしての役割が大きく、ストイックなものが多かった時代、気が抜けたこの作品を見て「スケボーってこんな感じでイイんだーっ!」って思わされたものです。
「いいスケートビデオって観てると滑りたくなる」ってよく言われることだと思います。『Chomp On This』も僕にとって間違いなくそんな作品のひとつ。スケート映像も飽和状態となった現在、約1時間もある尺は観るのも億劫なこととなり、つい身構えがち。しかしこの1時間で、スケートボードに対する概念も変わっちゃうかもしれません。今すぐインスタグラムを閉じて『Chomp On This』を再生するんだ。ワンサゲン、情報を掘り下げ、インプットし、アウトプットするもしないも自分次第Yo!
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)