僕の場合は、パンクロックが僕にスケートとの出会いを与えてくれました。10代半ばのころは大なり小なり誰にでもあることだろうと思いますが、とにかく人に決められたことに従うのが嫌でした。大人はそれを「反抗期」という言葉でパッケージしちゃいますが、とにかく自分がかっこいいと思うものやことしか信用できないし、そう思えないものを、ただみんなと同じように「がんばれ」とか言われてもぜんぜん興味が持てませんでした。そんな頃に感じていた世の中の不条理に対する対抗策がパンクロックにのめりこむことでした。中学生の頃、全員まだ童貞なのにVirgin Breaksという若気の至り全開の名前でバンドを結成し、それに一生懸命取り組みましたが、次第に友人たちのパンクロックに対する興味は薄れていき、僕は友人たちと想いを共有できなくなりました。そんな時に僕が信じるパンクという生き方を、バンドとは違い、個人という最小単位で実践しているのがスケートボーダーでした。その発見は衝撃でした。それからはスケート雑誌を読み漁り、スケートショップに足繁く通い、時間が許す限りスケートボードに向き合いました。
そんなスケートを始めた当初、実にさまざまなスケーターに影響を受けましたが、中でも決して忘れることのないひとりが当時SMA、Consolidatedで活躍していたコリー・クライスラーというスケーターでした。正直彼の目立った活躍は記憶していませんし、みなさんに紹介できる映像もさほど残されてはいません。ここ十数年はその名前を耳にすることもありませんでした。でも僕にとっては、彼ほどパンクとしての生き様をスケートで体現している人はいないように思えました。Ben Davisの上下の着こなしにヘアスタイルなど無縁の丸刈り頭、絶えることのない生傷、体中に散りばめられた纏まりのないタトゥー。二十数年前、当時の決して上質とはいえないスケートマガジンの紙面に彼のモノトーンの写真を見つけた瞬間から今に至るまでずっとファンです。
そんな彼との死別が先日突然訪れました。個人的には死別にそれほど悲観的な感情は持っていません。遅かれ早かれ死は誰にでも訪れる次のステージです。ただ、この世界からもう彼がいなくなったという現実を想うと、少しさびしい気持ちになります。
RIP Corey, and thank you.
--TH (Fat Bros)