SOTYのタイトル獲得を見据えた熾烈な攻防戦が今年も始まり、あの手この手で僕らを驚愕させるビデオパートが連日アップされております。師走というだけに慌ただしい日々も続き、それらひとつひとつをチェックするのですらいっぱいいっぱい。そして気温はグッと下がり、世間では再びウイルスの話題ばかり…「もうどーにかしてくれっ!」ってな日々が続きます。しかし今年もあと少し、なんだかんだ早いもんですな。
では僕らがつい驚愕してしまうような映像について考えてみたいと思います。どんなスケートボーディングを見て僕らは驚愕してしまうのか。一言で言ってしまえばそれは「スケートボードの可能性を広げる」もの。勝手にグラフ化しちゃうと、可能性をタテやヨコに伸ばすイメージ。僕の考えるそのタテとは数値化できるもの。たとえば「何段のステアやレールを飛んだ」「オーリーで何センチ飛んだ」「バーチカルで何回転した」といったスポーツ的要素の強い部分です。一方でヨコとは「ここもスポットになり得るんだ」「こんな回し方があったか」というようなスタイルの部分。困難なスポットや未知のスポットをイマジネーションで開拓する様を見て僕らはニヤリとさせられるのです。
しかしそんなタテやヨコにもきっと限界ってものがあるはずで。少しずつ滑りのスケールも大きくなっていますが、この先どう頑張っても100段ステアでのオーリーは不可能だろうしバートでの10回転は宇宙空間の話。スケートできる場所も無尽蔵ではないし回し系トリックもきっといつかは出尽くされることでしょう。それでも見えない自分の限界に向かって試行錯誤する過程が面白くてみんなスケートを続けているのですが。
ところで先日、ふとクルーザーについて調べたくなり森田貴宏のクルーザーに特化したショップFESN Laboratoryの発信する情報を見ていたわけです。そこに気になる意見がありました。「マイルス・デイビスが新たな奏法を編み出したように、スケートボードにも新たな走法が編み出されるのが必然」。走法...マイルスの生み出した奏法について僕はわからないのですが、この一文はハッとさせられるものでした。これは僕が平面でしか考えたことのなかった、タテやヨコに伸びていくスケートボーディングとはまた違ったものではないだろうか。タテ、ヨコ、さらには奥行きの概念を考えさせられてしまう。新たな走法、これを見つけるべく繰り返す試行錯誤により、スケートボードの世界はまた広がっていくに違いありません。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)