
突然ですが8日間というスケジュールでアイルランドに行ってきました。「アイルランド…どこにあんだっけ??」とよく聞かれるのですが、それはイギリスの西側、海をちょっと渡った北海道ほどの面積の島国。日本からは直行便がないので乗り継ぎを経て20時間前後かかります。ギネスビールやジェムソンウイスキーといったお酒の産地、The PoguesやThe Cranberries、Enyaといった世界的ミュージシャンらの出身地といえばピンと来る方も多いかと。
Pinch of Snuffという高円寺を拠点にアイリッシュ音楽を奏でるバンドが存在します。「タイガーさん」と呼び親しまれるこのバンドのフロントマンとはかつて同じバンドでプレイしていました。その縁もあり、ライブで地方に行く時に運転手を任されたり、PV撮影を手伝ってみたりと、このバンドの活動を結成したての頃から近くで見ていました。とはいえズブズブでもなく、いい距離感で応援してきた感じかな。そんなタイガーさんがライブ中のMCなどでここしばらく発してきた言葉があります。「夢は必ず叶うぜ」。それが何を意味するのか、それまでの関係から自分はなんとなく予想してましたが、いざ現実に。そう、アイルランドの地で演奏することです。
なんでも彼らの音楽が今アイルランドで話題になっているらしく、とんとん拍子でアイルランド巡演が決まったそう。年始頃にそんな話を聞き、自分もいてもたってもいられず見に行ったのです。アイルランド民謡をパンクロックの勢いでやる彼ら。このテのバンドは世界各地に一定数存在するのですが、どういうわけか日本人がアイルランドの音楽にロックンロールの精神を持ち込み昇華させたことが、今アイルランド国内で衝撃を与えているとのこと。
「話題とは言っても、ねぇ…?」そう思っていた自分が大間違いでした。いざ行ってみて首都ダブリンのスケートスポットでたまたま一緒にスケートしてた若い兄ちゃんもスマホに彼らの曲が入ってるし、飲食店の店員ニキや別の街のBMXニキからも「今日本のバンドがこっちで話題だぜっ!」とわざわざ向こうから教えてくれるしで、そのバズり方はとんでもないレベルに達していると驚かされたのです。500人は入りそうなライブハウスでの公演は全て完売。路上でゲリラライブをやっても多くの見物客。オリジナルの楽曲も余すことなく披露し、アイルランドの人々が彼らの演奏に熱狂する様子は、世界の大舞台で勝負するここ最近の日本人スケーターの姿にも重なって見え、胸が熱くなるものがありました。高円寺の街角で警察にキックアウトされつつ路上ライブをやっている彼らが、海を越えてロックスターみたくなっちゃうんだから。
スケートボードがきっかけでFlogging Mollyというバンド初めて聴き、並々ならぬ高揚感を覚えた20年前。それでアイルランドに興味を持ち、「いつかは行ってみよう、そこでスケートもしよう!」と漠然と抱いていた自分の夢をも、Pinch of Snuffというバンドが叶えてくれました。
—Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)