白人の警察官が黒人を殺したという海の向こうのニュース。たびたび繰り返されるその手の出来事に「こりゃまた抗議やデモが勃発するだろうな」くらいに思っていたのですが、想像していた以上の抗議活動が連日報じられています。抗議といえばまともに聞こえるのですが、暴徒と化した群衆による破壊行為も目立ちます。SupremeやHUFなどをはじめ、多くの路面店が襲撃され被害を受けているようです。原因となった警察官らの行為は常軌を逸していて許し難いものですが、怒りにまかせて暴動を起こし、またどさくさに紛れて略奪を働く暴徒らの行為にも首を傾げざるを得ません。
「人種差別はよくない!」とことあるごとに主張されるのを聞き、頭でもわかっているのですが、身体というか感覚ではイマイチ理解できていません。アメリカのようにさまざまな人種が入り混じる国とは違い、ここ日本はそもそも単一民族国家。日本全国どこへ行こうが基本的に同じ肌や目の色の人の集まりで成り立ってきた島国ですから、きっと彼らの持っているような人種やルーツに対する深い意識について、僕らはあまり意識することもなく過ごしてきたはずです。これまで人種差別をされたたことのない僕が人種差別反対を訴えても薄っぺらいもので、説得力などないに決まっている。なのですが、この事件がきっかけで今また顕在化した差別問題に考えを向けることとなったのもまた事実。悪しきことにはノーを訴え、世の中を良い方向へ変えるべく正当な形で抗議活動をする人も多くいるはずで、それには賛同したい。
幸いにも僕らの心の拠りどころであるスケートボードの世界は差別がないように感じます。世界規模で流通する一流ブランドに名を連ねるのは各国選りすぐりのライダー陣。日本からも海外ブランドの正規ライダーとして活躍する有望株がかなり増えました。国内においても、来日した外国人のスケーターを差別・排除することなく仲間として迎え入れる風土があったり、イケてるヤツが活躍できる環境も整っているはず。普段何気なく滑っていて深く考えることもあまりないのですが、これって僕らが胸を張って「最高だろ?」と言えることなんじゃないかなぁ? 同じ場所でセッションして終わったらコンビニ前で乾杯し、世界のあちこちからやってきたヤツと会話が盛り上がる。スケーターってそんな機会が圧倒的に多いはずで、自慢できることなのだと思います。
決してそう願いたくはないものの、世の中から差別や戦争をなくすことってもはや不可能なのかと。これがずっと繰り返されてきた歴史であり、今も世界の各地では紛争だらけ、差別だらけ、世間もビーフだらけ。そんな世界にあって、スケートシーンを傍観した人が「スケーターってなんだか平和よねw」って笑って見てくれるような状態が長く続くといいですね。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)