コロナもひと段落し、もはや過去のものとなりつつある昨今。各地で毎週末にイベントが開催され、その勢いはコロナ以前にも増しているかのようにも感じます。ひとえにスケートイベントといってもグローバル規模のコンテスト系、各種ブランドがデモやフリーセッションの場を設けてくれるもの、ローカルショップやクルーによる草大会まで実にさまざまな形がありますね。そんなスケートイベントの一部に、スケートスクールが盛り込まれているのが近年とても多いように思います。イベントに足を運んでみて毎度驚かされるのは、そんなスクールの参加者の多さ。キッズを中心に初めてスケートボードを体験する人や、プッシュやチックタック、オーリーなど初歩の動きをマスターしようという人らが詰めかけ、予約を募ってももすぐに満員御礼になることも多々あるようです。
今では「スクール参加がきっかけで…」というスケーターも当たり前なのですが、これは日本国内のスケート史で見ると比較的新しいことなのかな。少なくとも僕みたいなスケボー20年以上のベテラン勢がキッズだった頃ってのはスクールなんて聞いたことありませんでした。恐る恐る各地に繰り出し、上手に滑る人やビデオ・雑誌の中の人を観察し、技を盗むしか上達の術がなかったというわけです。何かの間違いでスケートボードを始めてしまった人らが、まだ小さなコミュニティの、さらに小さな各ローカルで「あーでもない、こーでもない」とトライ&エラーを繰り返して上達していくのは、それはそれで楽しいものでした。スクールが徐々に広まっていき、人がスケートボードに触れられる機会が増え、上達へのサポートが得られる今はとても恵まれていますね。
そんなスクールも時代と共に進化しています。ビギナー向けのスクールで「トレフリップ教えてくれ!」「ハードフリップ教えてくれ!」なんて需要もあるみたい。もはやビギナーとは…。お世話になっている人やショップが開催するスクールで、日々の少しばかりの恩返しにとヘルプでスクールの先生をしたことがあるのですが、トレフリップもハードフリップも、叩き直してくれる先生が自分も欲しいくらい(涙目)。さらにはコンテストで上位を狙うスケーティングに特化したスクールもあったりするわけで、「ウン十点獲得するトリックを覚えたい!」みたいな需要もよく聞きます。ここまでいくと大抵の先生はお手上げなはず。「どれそれのトリックやったからって何点とかってねーよ」って老害の嘆きが聞こえてきそうです(さーせん)。んなこたぁほっといて、どこのスクールに参加し、どう学んでもいいわけですが、せっかく自由が最大限尊重されているスケートボードたるもの、その楽しみ方を理解していくのがスクール参加の最大の意義ではないでしょうか。そこで学んだトリックは上手な人を見て、またスケートビデオを見て、自分なりに落とし込んで武器になる。これだけです。
きっとこの週末も、この先も、各地で何かしらのイベントでスクールが開かれているはず。そこにはスケートボードに乗り始めたキッズがたくさん集まり、スケーターが爆発的に増殖していくことでしょう。そういや少し前ですが、コンテストシーンをメインに写真を撮っているフォトグラファーの方とお話する機会がありました。カリフォルニア出身・現日本在住のその方が言うには、「今のこの日本の様子は'80年代後半のカリフォルニアに似ているね」と。当時のカリフォルニアはスケーターはまだアウトロー的な存在で、ヘイトの対象だったと。「じゃ、アメリカみたく広くスケートボードが支持されるのも、日本だとあと30年ぐらいかかるんかな…?」って質問したんです。その答えが「いや、あと5年後にはか・な・り変わっているはずだyo(👍)」と。5年か…。今日明日のスケートスクールで初めてスケボーに乗ったキッズの何人かは、5年もあればトップシーンで活躍していてもなんらおかしくはない話。恐るべし、でもやっぱり、たのしみぃ。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)