新しいセットアップへの交換や日々摩耗していくギアのメンテナンスは工具抜きにして行うことはできません。大、中、小の3種類のナットに対応したレンチ、そしてプラスドライバー or 六角レンチ、最低限これだけあればトッププロのデッキだって組み上げが可能。いたってシンプルな装置なので経験者はともかく、ビギナーの方もギアいじりくらいはショップスタッフに丸投げするのではなく、自分の手で行いたいもの。なにせ自分で乗るスケートボード、まずはこれができてこそスケーターって自称できるものかと…ってのは何を隠そう、僕がビギナーだった頃、初めて訪れた那覇のスケートショップ、DANG DANKオーナーの言葉の受け売り。ですがなにひとつ間違いのないグッドアドバイスだったかと。今考えるとそれは僕にスケートツールを買わせるためのセールストークだったのかもしれません。今ではコンプリートを買うとオマケでツールをくれる優しいショップも少なくないですが、ショッピングセンターで買ってもらったパチモンのスケートボードから少しずつちゃんとしたギアに買い換えていく、その流れでショップで売っていたスケートツールを言われるがままゲットしたのです。
今ほど多種多様なスケートツールは存在しておらず、僕が手にしたのはFix Stixと刻印された金属製の無骨なヤツ。「ベアリングプレスもついてて便利だよ」とこれまたセールストークも購入への一押し。いつどこで、誰との会話だったか忘れてしまったけど、僕がそのツールを使っているのを見た人が言ってました。「あぁ、New Dealのヤツか」と。それは結果から言うと正解であり、不正解。不正解というのはそのツールにはどこにも「New Deal」の刻印はなく、言われた当時は僕も「???」であったこと。正解というのは、デッキカンパニーNew Dealのファウンダーのひとりであるシュミット博士ことポール・シュミットがNew Deal立ち上げ以前から運営しているデッキプレス工場、PS Stixからリリースされたものってところ。これでFix Stixというネーミングにも説明がつくわけだ。
そんなFix Stix、各種ナットを締める部分が使いすぎてユルユルになるまで、かなりの期間愛用しておりました。今や売っているのもめっきり見かけなくなりましたねぇ。キングナット、アクセルナット用のソケットから下に向かって細く長く伸びる背骨のような部分で、グリップテープを貼る際にガシガシ削る作業が好きでした。グラインドでトラックが削れていくのと同様、少しずつ削れていく感じ、そしてその無骨なフォルムが良かったんだよな〜。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)