オンライン上に溢れかえる膨大なストックの中から検索し、たとえばスケートビデオであれば過去から現在に至るまでさまざまな名作や迷作、小さなローカルコミュニティの発するビデオまで視聴することができます。やはり名作ともなれば再生回数も何十万、何百万という数字になります。それはオフィシャルのアカウントからアップロードされることもあれば、誰とも知らぬ個人がアンオフィシャルでアップロードしていることもしばしば。「再生数稼いで懐にポケットマネーが、ムフフ…」ってよりは、過去のものを現在や未来に伝えるための文化継承、スケーター的良心に基づいたものである場合がほとんどだと思いたい。
しかしながら忘れてはいけません、いまだオンライン上にアップロードされない作品が数多くあることも。特にDVDが普及する以前の主要媒体であるVHSでリリースされた作品なんか多くあるはずです。いかんせん現在と比べるとスケートコミュニティも断然小さかったこともあり、数えられるほどのコピーしか作られず手売りか地元のショップの片隅に並んでいたくらいの作品だって少なくありません。それらの多くは熱心なビデオコレクターの手元に保管されているか、リアルタイムで手に入れていた人も捨てきれない思い出として押し入れに何年も眠っている場合がほとんど。当然ながらオンライン上にアップロードされることも少なく、そんな作品の内容や裏話の多くは当時を駆け抜けていたパイセンらの話を聞いて想像してみるほか仕方がありません。
さて、いつものごとく「とりあえずYouTubeを開いて…」みると、ランダムに表示されたオススメのひとつは、まさかアップロードされているとは思いもしなかった地元の過去の名ビデオ。2001年リリース、那覇を拠点としていたFLOWというクルーの『Original Effect』という作品。世代としては自分よりもちょっとしーじゃー(方言、パイセンの意)たち。スケボー少年になりたての当時の自分の目にはかっこよすぎて近づくことすら恐れ多い、そんなしーじゃーたちも、今の年齢となった自分から見るとスケボー好きの若ぇ兄ちゃんたち。スケートの撮影をやっているのを見たのも彼らが初めて。それはもう衝撃だったのですが、何よりその後になってリリースされた作品に自分が出てた(背景に映り込んでただけ)のも嬉しかった思い出。久しぶりに見返してみると、街を流すスケーターの背後を行き交う車やバスは今やレトロなものばかり。変わってしまう前の街並みを見ても懐かしさがジワリ。あの頃の香りが蘇ってきます。
有名どころだと山城正隆や宮城 豪の若かりし頃のパートが収録された、貴重な映像作品。この作品にたびたび登場するスポット、某大学の中庭にはマニュアル台からステア、大理石のベンチなどが詰まっていて、まるでプラザのような作り。自分の実家から徒歩5分ほどにそんな極上スポットがあったもんだから、ローカル仲間と足繁く通ったものです。県内外から有名スケーターもたびたび訪れ、その記録はビデオや雑誌に登場してきたわけですが、知られざるヒミツのレコードホルダーはやっぱり僕の近所のスケーターだった具志堅(仮名)くん。中庭スポットでひとしきりスケートした後、併設されてた小さな購買でタバコをカートンで万●き、もちろんですがワンメイク。そのうちいくらかは学校の仲間に格安で売り捌いたんだっけ。これは20年以上昔の、もう時効のお話ということで…。アディオスアミーゴス。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)