決してスケボーが下手になったわけじゃなく、むしろ30代も半ばにしてまだまだ上達しているというか、自分のテッペンを知りたいぐらいなのですが、それでも過去に置き去ったままのトリックや、歳を重ねるごとに何故か下手になっていくトリックがいくつかあります。自分にとってのそれがFsフリップ。10代の頃の磨きの甲斐もありフラットではもちろん、ステアにアールにとある程度のテラインで対応できるスキルはゲットしていたのですが、どうもここ数年の具合たるや悲惨なもので、人様にお見せできるものではございません。得意意識にかまけて磨きを怠ってきたことも否定できませんが…。
なぜあの頃、必死にFsフリップを磨いたのか。それはこのトリックを武器として活躍していた憧れのスケーターのようになりたかったからに他なりません。ジェフ・ロウリーにアンドリュー・レイノルズ、ダスティン・ドリン、TNT、ジョン・アリー。地元で自分は一部から「かっちゃん」と呼ばれていたのですが、少し年上のかっちゃん(長嶺克洋)や三世といったスケーターによるFsフリップにもただただ圧倒されていたのを今も鮮明に覚えています。なにせ出で立ちからビデオパートに使われるBGMまでパンク色が濃く、そんな彼らから繰り出されるFsフリップはパンクなトリックとして脳裏にインプットされるのでした。それはスラッピーやトランジションでのボンレスみたくヘッシュで無骨なパンク・トリックともまた違った、回し系にしてパンクなイメージをももたらしてくれる、特別なトリックのひとつとして輝いて見えたということです。
もちろん「どのトリックがパンクっぽい」なんてのは個人の価値観でしかありませんし、Fsフリップの上手な使い手は今も昔も多くいるわけです。そうそう、先述した年上の「かっちゃん」ですが、確か地元を離れて住んでいた東海地方のローカルビデオでパートを持っていたんだっけ。「ジン、ジン、ジンギスカ〜ン♪」のあの曲をBGMに使ったパートはちょっとした話題になりました。まだDVDもそこまで普及していない、VHSテープ時代の話ということもあり、そんな記憶もだいぶ薄れてしまいました。あ、ちなみに僕が働いておりますスケートショップPagerTokyoではVHSテープの映像作品を観ることが可能です(VHSMAG運営だけに)。なので「持ってるよ、別に観せてやってもイイよ」ってな紳士淑女なみなさまがいらっしゃいましたらご来店、よろしくお願い致します〜(ペコリ)
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)