このYo! Chuiの原稿を書くにあたり、毎度足りない脳みそを働かせてピックアップする動画を探さければなりません。それは最新の映像であることもあれば、今とはスタイルや板の形状も異なる30年以上も昔の映像であることもあります。ひと昔前であれば映像作品を出せるのはきちんとしたブランドや、強い結束と意志のもと制作されたローカルクルーのビデオくらい。誰もがスマホを持ち、SNSやYouTubeに映像を簡単にアップロード可能になった現在、オンライン上には動画が氾濫しており、世界の最前線を行くブランドやスケーターの動きですらすべてチェックするのは不可能。そして次から次へと情報が流れていく一方で、かつて毎日観ていたようなビデオの中のシーンも久しぶりに観ては「あれ…こんなんあったっけ?」と忘れてしまっていることも多いのが寂しく思うところ。
スケーターがストリートを主戦場にしてからも、毎年のように、今では毎日のように新たなスタイルが編み出されているわけです。当然街の使い方も少しずつ変わってきました。そして最近ふと思ったのは、「そーいや、小細工入れてる映像って減ったよな」ということ。「小細工」というのは、わざわざ引っ張り出してきたゴミ箱やカラーコーン、段ボールにバリケードなんかをラインの途中に回しで飛ぶとか、そういう類のもの。「ふつーそんなとこに置いてないっしょー!」って感じのそれらは障害物としてわざわざ運び込まれ、普段のスケートや撮影を少し華やかにする必須アイテムなのでありました。思い返すと地元にもいくらかありました、そんな小細工。実家の目と鼻の先にある某ステアには、どこからか持ち出され設置された鉄パイプ製のバリケードを即席のハンドレールに。それを攻める勇士らの姿はローカルビデオのみならずFESN『43-26』にも収録されてたりで震えました(ビビって突っ込むこともなくいつの間にか撤去)。またちょっとした階段なんかにみんなでベンチを運び、レッジとして使うって手もよく見られたもので、そうやって遊んできたスケーターも数多くいるに違いありません。
なぜそのような遊びが減ってきたのか、誰に頼まれるでもなく勝手な考察をしてみたいと思います。ひとつに、環境の整ったパークが増え、わざわざそうする必要も少なくなってきたから。もうひとつには、路上でのスケートは当時よりも厳しくなり、そんな遊びをする余裕がなくなってきたこと。当時はともかく、今や特に都会ではそんな遊びをする間もなく通報・キックアウトを喰らうってことも増えました。ゴミ箱やベンチを引っ張り出してとなるとさらに冷たい視線が…。そしていい意味では、わざわざそうしなくとも魅せられるようなスケーターが増えたり、そのような流れを良しとするのに変わってきたのだということ。昔といえばそれら即席の物体では繰り出すトリックが違うくらいで、映像で観るスケーターの街の使い方も似たり寄ったりな部分がありました。でもスタイルの幅や見せ方も広がった今、もっとスマートに街を使いこなす人が増えたように思います。
とは言え器用なのか不器用なのか、わざわざ小細工して滑るってのは僕は好きですね。そこにないものを作り出すDIYの精神と、スケーター特有の着眼点、そしてなんつっても「遊び」っぽいのがイイじゃないっすか〜(忘れるな 遊んだ後は お片付け)。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)