「滑り方が誰それに似ている」とはスケーター間の会話でよくあることです。たとえば「アイツの手の動き、カーディエルっぽい。絶対意識してるっしょ〜!!」みたいな話。プラスの意味で何気なく使われたりするのですが、時に「●●●っぽい」と比喩されるのを快く思わないスケーターだっているようです。どういうことか。ミュージシャンやアーティストもこのように言われるのを好かない人が一定数いるようですが、つまりは「●●●っぽい」ってのはそれだけ個性に欠けることの裏返しともとれるわけです。もちろん、誰かから影響を受けてそれっぽいことしてみたり、単なる遊びや気ままに楽しむ分には大いに結構。しかしそれが本気のスケートになればなるほど誰かの真似や「●●●っぽい」というのは通用しなくなってきます。これはフルパートで繰り出すトリックではABD(そのスポットではもうすでに誰かがやっちゃってること)を避け、NBD(まだ誰もやってない/なし得ていない)を狙いにいくことに顕著に現れているようにも思えます。
このような視点で見ると、この世の中には「●●●っぽい」ものが実に多いことに気づきます。有名なラーメン店、二郎を例にとってみたいと思います。油ギッシュ、盛りに盛られた野菜、ニンニク、ゴツめなチャーシュー、そしてあの黄色い看板…ラーメン二郎の一般的なイメージはこんなところでしょう。そして街を歩けば似たようなスタイルのお店もよく見られます。やはり多くの場合、黄色い看板を出しており、ニンニクマシマシなのが店の売りであることが多い。それらは「二郎インスパイア系」とも総称されたりするのですが、「インスパイア」と言えば響きがいいですが「要はただのパクリじゃねーかっ!」って思ったりするのです。立ち食いステーキで一世を風靡したあのお店を佇まいから店名までいかにも真似た店もあったりと、「それっぽい店」というものはそこらじゅうにあったりするものです。もちろん消費者にとっては目で見てわかりやすく、それっぽいものが食べたくなればそれらしき店に入れば目的を満たすことができます。そしてそれっぽいなかでも店により少しずつ違いがあるわけで、それを楽しむ人もいることでしょう。でも自分の作るものに自信があり、それで商売するのならパクリに終始せず独自のカラーを打ち出してほしい…とも思うのです。現状、元祖なお店がオンリーワンでありナンバーワン。そこに切り込む刺客の存在を見てみたいものです。これってスケーターならではなのでしょうか…?
僕はラーメン二郎愛好家ではないのですが、かつて上京したてのときに友達に初めて連れて行かれた近所の二郎、それはなかなか印象に残るものでした。どこかしらの引用だったのかもしれませんが、その友達曰く「アレはラーメンじゃなくて二郎という食べ物だ」。これぞスタイルじゃないか。八王子の外れの方、野猿街道沿いにあるその店舗は通の間でも評判が高いようです。実は昔からメディアに度々登場する有名スケートスポットも多く点在するあのエリア。都心から離れているだけにキックアウトも少なく、車があればスポットtoスポットでかなり回れます。梅雨も明けたらスポット巡りto二郎outはいかが? ただし、逆(二郎が先)だと動けなくなるのでオススメしません。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)