スケート遠征で見知らぬ土地に出かけたり、ちょっと冒険して海外へ行ってみたり。そこで味わうことのできる非日常はいつでも新鮮で特別で、何にも代え難い気持ちにさせてくれるってもんです。そんな出先で訪れたスポットなんかを後にビデオで見かけるのもまたうれしく、映像だけでは見えてこない悪条件や雰囲気を「このスポット実はこんな感じで、けっこーヤバくて…」なんてトークを披露できるのも、そんな経験を積んだ者の特権です。そのスポットに行ったことのある人と思い出話をしてみたり、あーだこーだ話題に共感、共有できたりする仲間がいればもっとイイよねっ!
それと同じぐらいうれしく思うのが、家の近所や縁のあるスポットがビデオに登場…そんな瞬間です。ドメスティックの映像ももちろんですが、それが海外のビデオなんかだとまたうれし。「OMG!? この人たちここ来たんかーっ!!!」なんてのはちょっとスケボーやってる人なら誰でも経験しているはずです。と同時にその場にいなければ生で目撃するはずもなく、悔しかったりすることの方が圧倒的に多いのではありますが(笑)。
ドメスティックながら、海外ビデオかと目を疑う映像のオンパレード、Stumpboysのビデオが最近発表されました。衝撃映像の数々に脱糞しつつも1カットだけ、僕の実家すぐ近くの公園での映像があったのにうれション。なにせスケートを初めて間もない頃、その公園にあるステアの1段目で5050を練習したり、フラットを練習していた思い出のスタート地点なのだから。そこをジャックしたのは村井海斗。ステア脇の天然バンクにフリップインから、落差のあるグラスギャップをBsビッグスピン。うんちくを申し上げますと、12段分の急坂を高速で降りきってすぐ先にある柱をかわし、万全の準備もままならぬアプローチの中、かのカールスバッドみたいなグラスギャップを飛ばねばなりません。そしてメイク後は勢いでその先にある植え込みに突っ込む(これはこれで痛い)までがお決まりのパターンね。このスポットでの満点解答を見せつけられたような気がしてなりません。
せっかくなので誰得なうんちくをもうひとつ。その公園はローカルスケートシーンの盛り上がりや衰退と共にスケーターが集まってはボックスが設置されたり、人知れず撤去されたりといった歴史を残してきました。最もスケーターが多くいたのは僕が中学生の頃だったでしょうか。ひとしきり仲間たちとスケートを楽しみ公園を出たところ、その公園の真横にある民家の前にも見ず知らずのスケーターが数名いるではないか。そしてそこにもボックスが。そこでまたセッションが始まるのですが、実はその民家に住む者はひとりもおらず、そのボックスの持ち主も不明。つまりはどちら様かもわからない家にあったボックスを勝手に引っ張り出して、僕らはセッションしていたということ。それは今も謎なのであります。そこらへんの工事現場に侵入し、木材を拝借してボックスを作るってのが各地で当然のように行われていた、平和な時代のお話でした。おしまい。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)