スケートボードの上達には1にも2にも滑ること、これ以外にあり得ません。上手な人の動きにヒントを得ながら微調整し、ちょっと成長している自分に気がつく…その繰り返し。いくらかスキルアップしてくると、パート制作やメディア露出というチャンスに恵まれたりもします。そうとなるとよりさまざまなスケーターの滑りをインプットし、自身のスケートにアウトプットするという作業が必要になるわけです。あとは日々の積み重ねとセンス次第。その両者を兼ね備えた持ち主のスケートってやっぱり映像でも写真でも生でも見ていて気持ちが良く、イイ歳の大人が10歳そこらのキッズを見ても時にブチ喰らったりしてしまうんす。
他のスケーターからインスパイアされて、よりベターな方向を目指していくのが大前提としてありますが、スケートボードとはまた違うものからインスパイアされるってのもいいスパイスになるのかなと。最近自分が喰らったのは、とあるテニスプレーヤー。テニスなんてまるで門外漢な自分がたまたま知り得たにすぎないんですが、それはテニスのイメージをガラッと変えてくれるもの。マンスール・バーラミという人なのですが、イラン出身で現在67歳、フランスに移住しプロの選手として活躍していたらしい…とだけ聞くとインパクトに欠けるのですが、注目すべきは彼のエンターテインメント性。奇妙な打ち方やフェイント、時に奇声をあげたり、コートの脇にある椅子に座ってプレーを始めたり。ふざけ半分にも見えるプレーのオンパレードに観客も審判も笑いを隠せません。大きな大会というステージでこれだから肝の据わり方もハンパなし。スケートで例えるとSLSやTampaでのランにコフィンとか組み込んでいるようなもの。よく言われるのが、「スポーツと違い、ルールなんてないのがスケートボードの良さ」。それがどうだろう、我々スケーターって時に、いや少なからず見えない何かに縛られたスケートをしてしまいがち。スケートボードとは違いさまざまなルールが存在するであろうテニスの世界で、そのルールに則りながらも斬新なプレーを見せてくれている気がしてなりません。そんな姿になんだか刺激を貰ったというワケさ。
67歳という年齢を考えると、その技術や身体のコンディションはシーンの先端で活躍する若いプレーヤーには敵わないはず。しかしそれはともかく、やっている本人が一番楽しそう。そしてプレーひとつで試合会場をコメディショーのように変えてしまう。そうだ、あわよくば僕もスケートボードひとつで人を笑わせることができる…そんなスケーターになってみたいものであります。もしなれなくても、いずれスキルや体力が落ちても、面白いと思えるものをインプットできるアンテナは常時フル勃起、面白くアウトプットしては人をニヤリとさせるようなスケーターでいたいって思うんすよね。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)